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2004/09/12

そば清

蕎麦のうまい季節がだんだん近づいてきた。この頃になると、雑誌は蕎麦の特集をし、家は蕎麦ネタの噺をする。

落語で蕎麦といえば 「時蕎麦」 が有名だが、これはどちらかといえば前座向けで、私のオススメはは 「そば清 (そばせい)」 という噺である。

これは 「蕎麦っ食いの清さん」 が主人公のお話で、なにしろ見事に蕎麦を食うのである。

「見ねェ、見事な食いっぷりだね。ありゃ、清さんが蕎麦を食うんじゃねぇ。蕎麦の方から清さんに食われるんだ」 というほどのものである。

その清さんは、蕎麦を何枚食えるかの賭けをして、いつも 40枚ほどの盛りそばを食って勝ち逃げするのだが、それ以上食うのは、さすがに骨だ。ある時、信州を旅すると、道中、ウワバミが人間を食ってしまうのを目撃する。

そのウワバミは、さすがに人一人食うと腹が一杯で苦しそうなのだが、傍らに生えていた赤い草をぺろぺろっと舐めると、あっという間に消化してしまい、さっさと藪の中に消えてしまう。

清さん、「これはしめた」 とその草を摘んで江戸に帰り、蕎麦食いの賭をする。途中で苦しくなったので、席を外し、次の間でその草をぺろぺろっと舐めるのだが・・・。

いつまでも戻ってこない清さんを探しにきた連中が目にしたのは、蕎麦が羽織を着て座っている姿だった。

これは典型的な 「考えオチ」で、実はあの草は、消化剤ではなく、人間の体を溶かしてしまうものだったのだ。

江戸っ子の蕎麦っ食いは、蕎麦を喉ごしで食って噛まないため、蕎麦がそのまま羽織を着ているというのが、ちょっとすごいところだ。

この噺は、一昨年死んだ小さんが得意にしていたようだ。柳家の芸は写実を強調するから、小さんの蕎麦をすするところなんぞは、「これぞ落語」 という感じだった。

「そば清」 は、実は上方の落語 「蛇含草」 というのが元ネタで、オリジナルは蕎麦ではなく餅を食うというものらしいが、私はそっちの方はまだ聞いたことがない。なるほど、餅も噛まずにどんどん飲み込むのが 「通」 らしい。

 

tak-shonai の本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」 へもどうぞ

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