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2004/10/10

殺人事件と治安

1983年にニューヨークに出張し、ホテルのロビーで人が撃ち殺される現場に遭遇したが、翌日の新聞には載らなかった。別段珍しくもない事件だったということか。

最近の日本もやたら殺人事件が多い。似たような事件も多く、個別の殺人事件としての区別すら付けにくくなった。

ピストルの音はテレビドラマのように 「バキューン!」 なんていうものではないと、よく言われる。確かにその通りだった。一昨年のこの欄にも書いたことがあるが、「パン、パン!」 という、あまり緊迫感の感じられない乾いた音だった。

音のした方を振り返ると、頭部から一筋の血を流した男が、目を開けたままひっくり返っていた。周囲の人間たちは、別に悲鳴を上げるでもなく、驚くほど冷静に対処した。皆、足早に現場を離れ、ある者はロビーから街に逃れ、ある者はエレベーターで自分の部屋に戻った。

私も、とても冷静に自室に戻った。冷静でいられたのは、何だか現実感が伴わなかったからでもある。しばらくして警察の車の到着する音が聞こえ、ようやく、あれは現実だったのだと思った。しかし、誰もその殺人事件に必要以上の関心を払うこともなく、ホテルロビーはすぐに日常の風景に戻った。

翌日の新聞にも載らなかったし、私は今でも、あの時何が起こったのか、まったく理解していない。わかっているのは、一人の男が撃たれて死んだ (のだろう) ということだけである。あるいは、あれは夢だったのかと思うほどだ。

最近の日本でも、幼児虐待による殺人、強盗殺人、一家皆殺しなどなど、毎日のように殺人事件が報じられる。正直言って、どれがどの事件の話なのだか、私には明確な区別がつかなくなってしまった。

あの時のニューヨークとは違い、ニュースで報じられるだけ、夢ではないようだが、多すぎて印象が錯綜してしまっている。それだけ切実な感覚が薄れているということだ。

アメリカで起こったことは、10年後、20年後に日本でも起きると言われていたが、治安の悪化も例外ではないとは、当時は思わなかった。しかし、程度の差こそあれ、確実にニューヨークの後追いをしている。私は今、東京の街を歩くときは、少なくとも 「ひったくり」 に遭わない程度には身構えている。

ニューヨークは今、20年前と比べると信じられないほど安全な街になった。これは一つには経済的な成長が寄与しているだろう。日本が安全性を取り戻すにも、やはり経済の回復が必要なのかもしれない。


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