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2004/11/21

「一松」 の蕎麦礼賛

山形県は 「そば街道」 なんてものがあるので、うまいそば屋がさぞかし多かろうと思われているが、正直なところ、本当にお薦めのそば屋はそれほど多くはない。

私が帰郷する際に立ち寄るのは、村山の 「あらきそば」、西川町の 「一松」、酒田の 「弥右衛門」 ぐらいのものである。

今回は、国道 112号線沿いに月山街道を越えたので、西川町の 「一松」 に立ち寄った。午後 4時前だったので、店はがらんと空いていて、ご主人が一人で新聞を読んでおられた。

こうなると、ここのご主人はお話好きである。蕎麦談義に花が咲いた。このご主人、「一松」 の二代目で、先代は東京の浅草で修行をされたのだそうだ。道理で、この家のつゆは江戸前である。もっとも、このあたりでは蕎麦つゆのことを 「タレ」 というのが一般的なのだが。

ここの 「タレ」 は独特で、出汁をまったく感じさせないくせにコクがある。それは先代からの口伝のようで、「どんなダシを使ってるかわからないほど生臭さがなくて、蕎麦湯がスルッと飲める」 ものを理想としているという。確かに、その通りのものが供される。もっとも、以前の 「タレ」 はもっと辛かったそうだが。

ちなみに、この店のそばは、二八と、蕎麦粉十割の 「別製そば」 がある。このところ、ずっと 「別製」 にありついていたのだが、今回は時間が遅かったこともあって、売り切れていた。仕方なく 、二八そばをたぐる。二八は二八で、モチモチ感があってうまい。

そうしていると、「別製は一人前の量はないんですが、よかったら食べてください」 と言って、半人前ぐらいの量を盛って出してくれた。これはうれしいもてなしである。やはり、別製はすすった途端に口の中に広がる蕎麦の風味のレベルが違う。

こちらの蕎麦は、つゆが江戸前で、蕎麦は江戸前の上品なものと、田舎のぶっといものとのほぼ中間といった風情。別製はやや平たいのが特徴だ。ちょっとやんちゃな感覚を残しつつ、口に入れると本格的な味わいが広がる。私はあまり上品な蕎麦より、こういうのが好きである。

今回知ったのだが、ここの二代目は、本格的な板前修業をした経験があって、天ぷらを始めとする日本料理も本格的に作れるのだそうだ。だから、天ざるがお薦めという。

道理で、妻はここではいつも天ざるを食べるのだが、私にほんのちょっとの 「おすそ分け」 も寄こさない。ほかで天ぷらを食べると、自分では食べきれないので、「ちょっと食べて」 と言って、少しはこちらにもくれるのに、この店の天ぷらだけは、一人でさっさと食べてしまう。

「・・・ そういうことだったのか」
「今まで食べたどんな天婦羅屋さんのよりおいしいわよ。いつの間にか、全部食べちゃう」

何でそれを早く言ってくれないのだ。よし、次は私も天ざるを頼もう。

それから、ここに立ち寄るときはいつも車の運転をしているので、酒を飲めないのが残念なのだが、ここの酒はいいのが置いてあるようだ。ここのご主人は、お酒は飲めないそうだが、それだけに、味はわかるという。


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