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2005/01/11

日本では受けない 「世界一おもしろいジョーク」

Rtmr さんのサイトで、「世界一おもしろいジョーク」 というのが紹介されていた。2チャンネルのだいぶ古いログから探されたようだが、ちょっと興味を引いた。

英国科学振興協会がどんないきさつからか、ほぼ 4年前に実施したオンライン投票で、トップに輝いたジョークである。

どんなジョークかというと、こんなのである。できれば、原文のまま読んで笑ってもらいたい。登場人物は、シャーロック・ホームズとワトソン君。"deduce" というのが、「推理する、推論する」 という意味であることさえわかれば、それほど難しい英文ではない。

Sherlock Holmes and Dr Watson are going camping. They pitch their tent under the stars and go to sleep. Sometime in the middle of the night Holmes waked Watson up.

"Watson, look up at the stars, and tell me what you deduce."

Watson says, "I see millions of stars, and if there are millions of stars, and if even a few of those have planets, it’s quite likely there are some planets like Earth, and if there are a few planets like Earth out there, there might also be life."

Holmes replied: "Watson, you idiot, somebody stole our tent!"

念のため、私の訳を載せておく。

名探偵シャーロック・ホームズと助手のワトソンがキャンプをしていた。彼らは星空の元でテントを張り、眠りに落ちたが、夜中にホームズがワトソン君を起こした。

「ワトソン君、見たまえ。綺麗な星空だ。この星空からどんな推理ができるかね?」

ワトソンは答えた。「とても多くの星が見えます。もしとても多くの恒星があり、もしそのうちのほんの僅かでも惑星をもつとしたら、多分、地球に似た惑星もあることでしょうし、もし地球に似た惑星があるとしたら、生命が存在するかもしれませんね」

ホームズは言った。「ワトソン君、わかってないね。我々のテントが盗まれたんだよ」

件の 2チャンネルのスレッドでは、このジョークがなんでおもしろいのかわからないという反応が圧倒的多数である。もっとも、このスレッドに載せられた訳はちょっとお粗末で、これでは笑えないのも無理はない。

とはいえ、私の訳なら笑えるかというと、それもちょっと難しいかもしれない。やっぱり、英語の言い回しがあって初めて面白さが際立つ。

ジョークの面白さを 「どうして面白いかというとね・・・」 と説明するのは、無粋もいいところだが、敢えてその無粋をやらせてもらおう。

ホームズが、ワトソンに "tell me what you deduce" (君の推理を聞かせてくれたまえ) というのは、いわば、シャーロック・ホームズ物の 「お約束」 である。それに対して、ワトソン君は必死に考えた推論を述べるのだが、ことごとく見当外れというのも、やはり 「お約束」 である。

まず、この前提を踏まえておかなければならない。そして、このオンライン投票が 「英国科学推進協会」 というお堅い団体の主催ということも、前提の一つである。英国のジョークは、極めて論理的に構築される。

ワトソン君は、投票主催者におもねたわけでもあるまいが、必死に宇宙科学的な推論を述べようとする。下手な断定をして論難されるのを避けようと慎重になるあまり、妙ちくりんでまわりくどい仮定法を 2回半も駆使している。二流の科学論文にありがちな陳腐さである。

このあたり、オンライン投票に応じた科学者たちの、心の琴線に触れるものがあったろう。「こんな苦し紛れの論理展開と、ありきたりの結論。俺も学生時代のレポートでやったことがあったっけ」 なんてね。

そしてお約束通り、ホームズにぴしゃりとやられるわけだが、壮大な宇宙的推論と現実のギャップ、そして当のホームズにしても、寝ている間にテントを盗まれるのに気付かなかったというのが、ミソだろう。

こうして書いてみると、西欧のジョークはなんで面白いのかを、とても論理的に説明できる (実際には説明しないからいいのだが)。一方、最近の日本のギャグは 「単に奇異で滑稽であること」 によって笑わそうとするものが多い。「考えオチ」 というのは流行らないようだ。

Rtmr さんも、「川柳には乾いた笑いがある。また古典文学に散見される言葉遊びも十分機知に富んでいる。日本の文化にもウイットの下地はあるのだが一般受けしないようだ」 と書かれている。確かに日本の文化はちょっと衰弱しつつあるかもしれない。

参照: 世界一おもしろいジョーク

tak-shonai の本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」 へもどうぞ

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コメント

 こんばんは。
 原文では意味はわかりませんでしたが、日本語訳を読んで「そういうことか」と理解できました。
 母国語のジョークと外国語のジョークでは、次のような関係があると私は思っていますがいかがでしょうか。
 「母国語で一番面白いパターンのジョークは外国語では一番理解しにくい。外国語で一番面白いパターンのジョークは母国語では一番面白くない」
 要は「考え落ち」なら外国語のジョークでも何とか笑えるが、「地口落ち」はその言葉がわからないと何が面白いのかよくわからない、ってことですが...
 

投稿: いんべひろし | 2005/01/30 21:00

いんべひろしさん、コメントありがとうございます。

>母国語で一番面白いパターンのジョークは外国語では一番理解しにくい。外国語で一番面白いパターンのジョークは母国語では一番面白くない

うーん、どうでしょうか。

「母国語」を「日本語」に、「外国語」を「ヨーロッパ系言語」と置き換えて、特定してしまえば、言えると思いますが、少なくともヨーロッパ言語圏では、面白さは案外共通しているという気がしますが。

>要は「考え落ち」なら外国語のジョークでも何とか笑えるが、「地口落ち」はその言葉がわからないと何が面白いのかよくわからない、ってことですが...

それは言えますね。洒落の笑いを翻訳するのは大変でしょうね。

落語の「やぶいり」のオチの、「忠(チュー:ネズミにかけてある)を大切にな」なんて、どうにもなりませんね。

投稿: tak | 2005/02/02 18:11

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