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2005/08/06

ヤバヤバ弁証法

先月末、かの有名な 「言戯」 というブログの 「ヤバイは案外楽しいかも」 という記事にコメントを付けたのを思い出した。

最近、「ヤバイ」 の新用法として 「素晴らしい」 とか 「メチャクチャおいしい」 とかの意味で用いられることが、とくに若い連中の間で目立っている。このことに関する考察だ。

私はこの記事に対し、「この用法、十分に 『あり』 だと思います」 とコメントした。その根拠を、ここでより詳しく書いておこう。

「ヤバイ」 の新用法に関連して、私は、他人に物を贈る際の 「つまらないものですが・・・」 という言い方を想起する。

多くの外国人及び単純外国かぶれの日本人は、「世の中に 『つまらないもの』 をもらって喜ぶ者などあるだろうか。日本人は謙遜にもほどがある」 などと、極めて短絡的なことをいう。

しかし、新渡戸稲造の 『武士道』 にも書かれてあるように、本来これは、「あなたのような立派な方には、どんな高価な物もふさわしくない。だから、この品物の価値ではなく、私の心のしるしとして受け取って頂きたい」 という言外の意味をもつ。日本人は、"モノ" より  "人" の方を尊ぶのである。

「やばい」 は、このシチュエーションとは逆で、「俺みたいな者には釣り合わない。危険なほど素晴らしすぎるぜ!」 という意味合いになると考えられる。この 「均衡/不均衡感覚」 は、ある意味、日本語の伝統的なコンセプトではなかろうか。

上記のコメントには書きそびれたが、もうひとつ、名古屋弁の 「いかんわ」 という言い回しも連想された。

名古屋弁では、「とても美味しい」 という場合、「どえりゃー うみゃーて いかんわ」 などと言ったりする。これを極めると 「でら みゃーてかんわ」 になるらしいのだが。

上田君の名古屋分析」 というページには、次のように説明されている。

「でら、おもしろくていかんわ」

「でら」=「非常に」
「いかんわ」: 本当にダメなわけではない。とてもいいとゆうこと。訳すと、「ものごっつおもしろい」 となる。

この 「いかんわ」 という言葉のニュアンスは、「ヤバイ」 の新用法と共通する点がある。もともとは否定的な意味を持ちながら、それを逆転させて、とても肯定的なニュアンスで用いているのである。

これも、ある種の 「不均衡」 感覚から発せられる言葉だと考えられる。通り一遍のレベルを越えた非日常的なまでの素晴らしさは、それまでの日常的な均衡を破り、一時的な不均衡感覚をもたらす。それ故に、「ヤバイ」  「いかんわ」 と感じられるのだ。

ちなみに、「言戯」 管理人、寿(とし) さんの相方 (彼女) さんは、かなり強い名古屋弁の影響下にあるらしい (参照)。それゆえに、「ヤバイ」  「いかんわ」 感覚は、既にかなり身近なものとなっているのではあるまいか。

「やばさ」 を乗り越えてこそ、人は成長し、新しい均衡を得るのだろう。いい意味にしろ悪い意味にしろ、「ヤバイ」 経験を豊富に積んだ人には、奥行きというものがある。

私はこれを 「ヤバヤバ弁証法」 と名付けたいと思うのである。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」 へもどうぞ

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