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2006/02/17

「気配」 のニュアンス

よく 「春の気配を感じる」 などと言うが、「気配」 というのは当て字なのだそうだ。本来は、「気延ひ (けはひ)」 という、なかなか雅やかで繊細なニュアンスの和語である。

日本人は 「けはひ」 を大切にしていて、お化粧のことも 「けはい」 と言った。鎌倉の 「化粧坂」 は、現代表記で 「けわいざか」 と読む。

本来、「よはひ (齢)」 が 「ヨワイ」 に音便化したように、「ケワイ」 に変化しやすい言葉だったのだが、「気配」 と当て字されてしまったために、漢語みたいに意識されて、「支配」 と同様に、「ケハイ」 と発音されているものらしい。

しかし、鎌倉の 「化粧坂」 だけは、前述の通り 「けわいざか」 になっている。おもしろいものである。歌舞伎の曽我物では、「化粧坂の少将」 という花魁が登場する。「化粧」 と 「気配」 がリンクしていたなんて、最近まで知らなかった。

手元にある三省堂の 『例解古語辞典』 によると、「けはひ」 は次のような意味合いを持つ。

  1. かもしだされた雰囲気。なんとなく感じられる様子。風情。
  2. (それと確認できない対象から、闇や物越しに伝わってくる) 香り・話し声・物音など
  3. (手で触れたり、物音を聞いたりして、それとわかる) ようす。感触。
  4. (外面的な立ち居ふるまいなどから感じられる) 人柄・品格
  5. (死んだり離れたりして、実態のなくなった後も、そこにいるように感じられる) 面影、なごり。
  6. (雰囲気を生み出す) お化粧

なるほど。すべて 「目には見えないもの」 なのである。恩師である郡司正勝先生は、いつも 「一番大切なのは、目に見えないことなんだよ」 と言っていた。日本文化の根元には、「目に見えないもの」 がある。

「目に見えないこと」 というと、肉眼では見えないが顕微鏡や望遠鏡でなら見える 「微少なもの」 とか 「遙か遠くのもの」 というように誤解する者があるが、そんな単純なものじゃないんである。第六感以上の 「直観」 で理解するしかないようなものなのだ。

私は昨今の皇室典範論議にも、この 「目に見えないもの」 への関わり方の違いを強く感じてしまうのだ。何しろ、「目に見えないもの」 だから、法制化するのが難しい。このあたりが 「純粋論理」 の致命的弱点である。

Goo の和英辞書で 「気配」 を引いてみたら、 "a sign;  an indication." と出てきた。どちらも 「徴候」 的な意味合いである。ここに、"nuance" (ニュアンス) という言葉も加えてみたい気がする。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」 へもどうぞ

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