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2006/06/06

日本は、敗者も勝者も出にくい社会がお好き

村上ファンドの村上世彰代表が、インサイダー取引疑惑をあっさりと認めた。Goo ニュース (Asahi.com) によると、「(LD 側から) 聞いちゃったかと言われれば聞いちゃった」 ということで、なかなか潔いことである。

「インテリほど落としやすい」 というが、これはそのスーパー典型例かもしれない。

秋田の小学生殺害事件で逮捕された畠山鈴香容疑者が、死体遺棄は認めながら殺人は否認するという、よくわからん粘り方をしているのとは、好対照である。その意味では、ホリエモンの粘り方も少々駄々っ子じみていて、ある意味インテリっぽくない。

村上氏は、これを機に投資ファンドの世界から身を引く構えのようだが、そうだとすると、私が一昨日のエントリーに付けたタイトル 「歴史的使命を果たし終えた村上ファンド」 が文字通りに当たってしまって、我ながらびっくりである。

Asahi.com の記事で面白いと思ったのは、次の点である。

同年11月8日には堀江、宮内両被告らが村上氏のもとを訪れ、「ニッポン放送はいいですね。経営権が取得できたらいいですね。僕らもお金を準備するから」 と言ったといい、村上氏は実現の可能性を疑いながら 「へえー、全部欲しいんだ」 と頭にとどめたという。

ホリエモンは、ニッポン放送の経営権、ひいてはフジテレビまで手中に収めたいと本気で思っていたのに対し、村上氏は、そんなことにはまったく興味をもっていなかったということがわかる。

ライブドアは、ちょっとだけ独り相撲を取ってしまったようだ。村上氏と対比させると、さんざん 「虚業」 呼ばわりされたライブドアが 「実業」 っぽく見えてしまう。ホリエモン、あれでも少しはファンタジストなのかもしれない。

一昨日のエントリーで書いたとおり、村上ファンドの目的は、実態に反して安すぎる株を買って、高値で売り抜けることに集約されていて、実際に経営に当たるなんていうやっかいなことは眼中にないのである。

しかし、それが悪いかといわれれば、「別に悪いことでも何でもない」 のだ。株取引なんて、元々がそんなものである。彼は彼で、ファースト・プライオリティは自らへの出資者 (これがクセモノだが) に利益を還元することにあるのだから、当然といえば当然のことだ。

村上氏は東証での記者会見の席上、興味深いコメントを残しているようだ。(私自身はニュースを見ただけで、この部分は聞いていないので、以下、信頼する 「流れるものと残るもの」 のエントリーから引用)

印象に残ったのは、おそらく記者が 「シンガポールに逃げたんでしょ」 みたいなことを聞いたからなんでしょう、「じゃあなんで今私はここにいるんですか?」 と問い返した後、
・ シンガポールに移ったのは別に逃げたわけじゃない。
・ けれど、正直言って、日本が少しイヤになってきたかな、と。日本という国が。
・ おかしいでしょ、今の日本。能力のある人、成功した人、税金をたくさん納め人をたたえない。
と言っていた部分。

このブログで、管理人のつきっつさんは、「世の中なんてそんなもの、かもしれませんが、今の日本は他人の成功に対する嫉妬心が強い国だな」 と、感慨を述べておいでだ。

なるほど、そうかもしれない。私自身、村上氏と楽しくお酒が飲めるとは思わないけれど、世間での嫌われ方は、ちょっと異常だとも思う。何も、あそこまで嫌われなくてもいいような気がする。

この関連でいえば、内田樹氏が、自身のブログで次のように述べておられるのが興味深い (参照)。

日本型民主主義というのは、合意形成の結果がもたらす「パフォーマンス」の良否よりも、合意形成プロセスにおける手続き上の「フェアネス」を重視する。
この「フェアネス」ということばを多くの人は誤解しているようだが、日本社会における「フェアネス」とは、成員が同一の規範の前での平等の恩恵に与るということではない。そうではなくて、「全員が平等の不平を分かち合う」ことである。

ちなみに、内田氏はこのコンセプトから、9月の自民党総裁選は阿倍氏ではなく、福田氏の勝利と読んでおられる。確かに、昨今の風向きはそんな方向が強まっている気もする。日本は、敗者が出にくい代わりに勝者も出にくい社会が好きなのだ。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」 へもどうぞ

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コメント

こんばんは、お久しぶりです。
取り上げてくださって、ありがとうございます。
この件、まだ何か書き足りない気がしてムズムズしています。目立つ者叩きとか、モラルで責めるとかいうあたり(自分でもハッキリしないんですが)。

そもそも検察が捜査に入ったのも村上ファンドが目立ちすぎたからですよね。
インサイダー取引は犯罪だ、というのはわかるのですが、金額はずっと少ないけれどはるかに悪質な取引(ばかりか詐欺のようなものまで)がしょっちゅう行われている現状に検察が斬り込むのかというと全然、なわけで...

ま、私も村上さんは好きじゃないですけど^^

投稿: つきっつ | 2006/06/06 01:09

つきっつ さん:

今回の村上氏の記者会見は、
「おぉ、言いたいこと言ったな」ってな感じですね。
検察はムッとしてるでしょうが、
案外痛快な感じがしました。

この国の法律適用は、かなり恣意的です。

10km オーバーのスピード違反は
何度やっても絶対に捕まらないけど、
40km オーバーだとすぐに捕まるし、
20km オーバーだと、泳がせといて、すぐには捕まえないけど、
状況次第でいつでも捕まえられる。

投稿: tak | 2006/06/06 07:12

いつも、楽しませていただいてます。
インサイダーっていかにも悪役の呼び名だって、中3の子どもがいってます。ショッカーでも出てきそうな感じ・・。

ところで、「村上氏は、一般投資家に対しての謝意がない」云々のようなことをTVのバラエティーだかなんだか区別のつかないような番組でいってましたが、投資って合法的な「ばくち」じゃないのかな?投資家のみなさんは、「ハッタ、ハッタ!」ってやってるんじゃないのかな?そのドウモトが、謝意は、表さないと思います。

投稿: ねこ | 2006/06/07 18:56

ねこさん、ようこそ。

>インサイダーっていかにも悪役の呼び名だって、中3の子どもがいってます。ショッカーでも出てきそうな感じ・・。

わはは (^o^)
「インベイダー取引」 なんてね。

>投資家のみなさんは、「ハッタ、ハッタ!」ってやってるんじゃないのかな?そのドウモトが、謝意は、表さないと思います。

それもそうですね。
村上さんが謝るとすれば、もし損失を出したときには出資者に対して謝るだろうということでしょうね。

お金出してくれてるわけでもない人に、謝る義理はないというのは、もっともなお話です。

それに、株ってのは、大損するリスクもあると、承知で手を出すもんでしょうからね。

投稿: tak | 2006/06/07 23:17

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