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2006/09/09

「慶事」 の内訳

乙武洋匡オフィシャルサイト」 が大炎上している。「紀子さま出産」 というエントリーなのだが、ウチの読者は、よもや尻馬に乗るような真似はされないことと信じて、リンクしている。

乙武氏はその日のうちに 「深くお詫びします」 というエントリーで弁明しているのだが、そのことについて、私なりに考えてみたい。

乙武氏は、この日 2度目のエントリーで、次のように述べておられる。

むしろ、僕は親王のご誕生を「おめでたいこと」「よろこばしいこと」だと思っています。それは、性別の如何を問わず、ひとつの命が誕生したことを「よろこばしい」と思っているのです。

ところが、ご誕生を受けてのマスコミ報道や世論には、少なからず「男の子でよかった」という風潮が感じられました。そのことに、僕は抵抗を感じてしまったのです。

男であろうが、女であろうが、皇室であろうが、民間人であろうが、命の重さは等しく、尊ばれるもの。そう思っていた僕には、内親王がご誕生した時よりもはるかに舞い上がった今回の慶事ムードに違和感を覚えてしまったのです。

彼の 「男であろうが、女であろうが、皇室であろうが、民間人であろうが、命の重さは等しく、尊ばれるもの」 という主張は、とても正しい。誰も異論を差し挟めないほど正しい。

しかし、私は 「誰も異論を差し挟めないほど正しい」 と見える主張には、つい警戒感をもってしまうという、悲しい習性が身に付いている。それは、ユダヤ人の 「全員一致は無効」 という考え方と似ているかもしれない。

というわけで、"「紀子様、男児ご出産」 で、ことさらに喜んで、何がいけないのか" と、敢えて言ってしまおうと思う。

一つの生命が誕生することの重要さ、厳粛さは、どんな生命でも平等である。この点においては、皇族だから、男児だからといって、他の場合よりも尊いなどということはない。これは当然の前提としておこう。

ただ、今回の場合は 「喜ぶ内訳」 が違うのである。多くの国民は、生命そのものを差別して喜んだわけではない。「生命の誕生」 を喜んだのはもちろんだが、そのほかに、もう一つの要素があった。言うまでもなく、「皇室の伝統継続」 という視点からである。

「生命誕生」 プラス 「伝統継続」 という二重の慶事なのだから、これまでの 「内親王ご誕生」 の時を、「伝統継続」 の分だけ上回る喜びを示したところで、何ら訝しがられることはないだろうと思う。長らく待ち望まれた男児のご誕生なのだし。

ただ、女性天皇、女系天皇が認められる制度であれば、今回のことでことさらに喜ぶという根拠は消滅する。しかし、現状ではそうではないのである。皇室制度に関する問題点は、継続して真剣に討議すべきだと思うが、ここでは敢えて触れないでおく。

私自身は、もう一つのサイト 「和歌ログ」 の長月六日のエントリーに、さりげなくお祝いの言葉を書いただけで、アクセス数が断然多いこっちのサイトでは、それらしいことは敢えて何も書かなかった。

だから、今回の乙武氏のブログ炎上問題がなければ、「ことさらに喜んで、何がいけない」 なんて、自分のブログに書くことはなかっただろうと思う。個人的趣味としては、静かにお祝いするにとどめたいが、大喜びする人がいても、それはそれでいいじゃないか。

そして、それはそれとして、ちょっと別の視点からコメントする乙武氏のような人がいることも、社会として健全なことだと思っている。彼の最初のエントリーは、確かに言葉足らずだったかもしれないが。

ただ、今回の問題で、多くの目を覆いたくなるような言葉で彼のブログのコメント欄が汚されたというのは、いただけない。そうした行為は、いかにも無自覚に、御稜威まで汚すことにつながると気付くべきだ。

というわけで、ますます 「全員一致は無効」 という考え方を忘れたくないと思うのである。

【注記】

ユダヤ人が 「全員一致は無効」 としているのは、事実ではないという主張もある (参照) が、以前見たアメリカ映画 (何の映画か忘れたのが残念だが) で、ハッピーエンド直前になって、善玉の登場人物のうち 1人だけが、急にそれに異を唱えるという場面があった。

周囲に訝しがられた彼は 「全員一致は無効だからな」 と言ってにやりと笑い、それで本当のハッピーエンドになるという、ちょっと洒落た結末だった。

これを見ても、「全員一致は無効」 という考え方は、旧約聖書に書いてなくても、ちゃんとあるのだとわかる。

【同日朝 追記】

影でごそごそ言うのはイヤなので、一応、乙武さんのエントリーに夜中から何度もトラバ送ってるんだけど、朝になっても入らないんだよなあ。どうしたんだろう。

【さらに追記】

あ、入った入った。しかも、2つも入ってる。乙武君、ごめんね (私は大学の先輩なんで、この程度の謝り方にしとくぞ)。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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