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2006/09/04

本音と建前の使い方

私はこれまで何度か、「本音と建前」 というのが日本独特のもので、それを使い分けるのを 「日本的因習」 とみるのは、単純素朴な誤解だということを書いている。(参照

そう、本音と建前を使い分けるのは、何も日本人だけじゃない。むしろ、日本人はその使い分けが下手すぎるぐらいのものだ。

例えば、仕事で米国に行き、何か当たり障りのないプレゼンテーションをさせられたとする。プレゼンを終えて評価を仰ぎたくなり、手近な人に 「どうでしたか?」 なんて聞いても、普通は相手がインテリであればあるほど、お世辞みたいなことしか言ってもらえない。

米国人が非常に率直だなんていうのは、嘘っぱちである。初対面の人間に率直なことを言ってくれる人はごく少ない。大抵は、歯の浮くようなお世辞でごまかされてしまうだけだ。初対面の米国人に褒められても、あまり真に受けない方がいい。

確かに、英語には 「本音」 と 「建前」 に正確に相当する単語がない。だから、米国に本音と建前がないと言ってしまったら、それは全然国際理解にならない。

確かに、英語には 「本音」 という名詞はないかもしれないが、"frankly speaking, ......" という言い方がある。「率直に言えば……」 ということだが、初対面の人間が 「フランクな」 言い方をしてくれることは、あまりない。

Goo 辞書では 「他人の本音に迫る」 の英訳として "crawl into the hide of another" という言い方が挙げられている (参照)。直訳すれば 「他人の隠れ家に忍び込む」 といことだ。つまり、「本音」 というのは、隠しておくもので、表にさらしておくものではないのである。

それでは、「建前」 に当たる言い方は何になるのかというと、多分、複数あるのではないかという気がする。

一つは、"polite" ということだ。「丁寧な、上品な、礼儀正しい」 というような意味である。米国では、本音を隠れ家に隠しておいて、当たり障りのないことを言ってその場を繕うのが、「丁寧で、上品で、礼儀正しい」 ということなのである。

また、"compliment" とか "flattery" とかいうものがある。これらは、英和辞書的には 「お世辞」 と訳される。しかし、"compliment" は 「社交辞令」 的なニュアンスが強いが、"flattery" は、「おべっか」 である。お世辞も一筋縄ではない。

さらに、"negotiation" というものがある。「交渉」 である。交渉では、初めから本音を言うことは決してない。建前論から入り、押したり引いたりしながら、少しでも自分に有利な結論に持って行こうとする。

欧米文化圏では、このように 「本音と建前」 が非常に意識的に使い分けられている。日本でこれができるのは、京都人ぐらいのものかもしれない。単に 「因習」 として、どちらかというと否定的に見る単純な日本人では、国際的交渉で勝てるわけがないのである。

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