« 「スルー力」 の頃合いは難しい | トップページ | ニフティさんの、とんだ上場祝い »

2006/12/07

「年俸」 の正しい読み方

大リーグに行くことになった松坂選手の年俸が話題になっているが、ラジオを聞いていると、これを 「ねんぼう (nembo)」 と発音するレポーターが多いのがとても気になる。

年ごとの俸給 (ほうきゅう) だから、正しくは、「ねんぽう (nempo)」 である。プロ野球関係のレポーターは、きちんと読んでもらいたい。

憲法が 「けんぽう」、漢方が 「かんぽう」、年報が 「ねんぽう」、連邦が 「れんぽう」、 文法が 「ぶんぽう」、になるのと同じ理屈で、「はひふへほ」 の直前の音が 「ん」 だと、口を閉じた 「M 音」 になり、それに引きずられる形で、次の音が 「P 音」 に変化する場合が多い。

音韻学的にいえば、「はひふへほ」 には、本来濁音が存在しない。「B 音」 は、「P 音」 の濁音であって、「H 音」 の濁音ではない。では、なぜ日本語では 「はひふへほ」 がこんなにも自然に P 音や B 音に変化してしまうのか。

それは、日本語の 「はにふへほ」 は、元々は [PA PI PU PE PO] と発音されていたからだというのが、定説になっている。

古い謎々に、「母には二度会って、父には一度も会えないものは何か?」 というのがあり、答えが 「唇」 であるということはわかっていたのだが、その理由が長い間わからなかった。

音韻学研究によって、上代においては、「母」 は [papa] と発音されていたということがわかり、なるほど、この発音をすれば、唇が二度閉じられるから、「二度会う」 のだということになった。

「月報」 や 「日報」 など、促音の後の H 音が P 音になるのはまだ自然としても、「ん」 の後までそうなる必然性はないように思われるが、実際には、とても自然な無意識の先祖返りで、そうなってしまうのだ。

ちなみに、「父」 の古い読みは [chichi] ではなく、[titi] (てぃてぃ) である。だから今でも、伝統芸能などでは 「父親」 が 「てておや」 なんて読まれたりする。

話は戻るが、「年俸」 を 「ねんぼう」 と読んでしまう人は、漢字の方も 「年棒」 か何かだと、間違えて覚えてしまっているのではなかろうか。そういえば、野球は中国語で「棒球」 と言うらしいが。

【平成 20年 1月 9日 追記】

半ば冗談で "漢字の方も 「年棒」 か何かだと、間違えて覚えてしまっているのではなかろうか" なんて書いたのだが、冗談じゃなかったようだ。

ふと思いついて 「年棒」 でググって見たら、391,000件もヒットした。トップの 2件は 「年棒」 が誤字であることを指摘したものだが、それ以下のほとんどは、マジに 「年棒」 だと信じて書かれている。

中には 「残業あれこれ【-7-】年棒制の場合の残業」 なんていう解説をしている社会保険労務士までいらっしゃる。この人、 「労働基準法の解説 年棒制について」 なんて別のページも書いているから、本当に正しい表記をしらないみたいなのだ。こんなんで大丈夫なのかなあ。

あ、それから、元プロ野球選手の解説者が 「ここは 『送りバンド』 の場面でしょう」 (正しくは、もちろん 「バント: bunt」) なんていうのも、かなり恥ずかしいなあ。朝日新聞まで、自ら主催する甲子園野球関連の記事見出しに 「バンド対策に集中」 なんて書いちゃったりしてるし。

これ、そのうち消えちゃったらもったいないので、スクリーンショットにしてとっておくことにする。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

|

« 「スルー力」 の頃合いは難しい | トップページ | ニフティさんの、とんだ上場祝い »

言葉」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/42004/12965188

この記事へのトラックバック一覧です: 「年俸」 の正しい読み方:

« 「スルー力」 の頃合いは難しい | トップページ | ニフティさんの、とんだ上場祝い »