« 死刑で罪は償えるのか | トップページ | 養老先生の煙草論 »

2007/09/24

総裁選のねじれ現象

後継総裁は福田さんになったが、福田さんとしてみれば、ここまで派閥横断的な支持を取り付けたのだから、もっと圧倒的な票差で勝ちたかったところだろう。

ところがそうはならなかったところに、今回の総裁選の意味があるだろう。得票率が 63%対 37%というのは、とても微妙な数字だ。

本当はそんな単純な話ではとても割り切れないのだが、そこを敢えて無理矢理に図式化した言い方をしてしまうと、今回の自民党総裁選は、「日本が大事か、自民党が大事か」 という選択において、多くの自民党員が 「自民党が大事」 という意思表示をしたということになる。

別の言い方をすると、「リスクを取るか、無難を取るか」 という選択で、「無難を取る」 という方向に傾いたことでもある。しかし、これが果たして本当に自民党のためになる無難な選択であったかどうかというのは、今後の推移を見ないと結論づけられない。

なにしろ、福田、麻生の両氏、お互い、総論と各論にねじれ現象がありすぎなのだ。

参議院選挙で自民党惨敗という結果が出た直後の 7月 30日、私は "近頃 「いい目」 を見てなかった保守王国" というエントリーを書いている。地方の一人区で、軒並み自民党候補者が落選したのは、従来 「保守王国」 と言われた地方が、近頃の自民党政治でいい目をみた経験を、ちっともしていないことが原因だと指摘した。

で、今回は 2人とも 「地域間格差是正」 みたいなことを強調し、要するに 「保守王国に少しはいい目をみてもらわなきゃ」 というような政策を導入することを匂わせた。だが、この問題をより強調していたのは、どちらかといえば麻生さんの方だという印象がある。

私は、件のエントリーで 「改革推進」 と 「地方にいい目を見せる」 という 2つの政策は相容れないということを、ちょっと遠回しに書いた。この視点からすると、麻生さんの政策では 「改革推進」 は減速する。まあ、元々 「脱小泉」 を標榜しているのだから、それはあり得る。

ところが不思議なことに、今回は、口先だけでも 「小泉、安倍改革路線継承」 を謳う福田さんが、自民党内では圧倒的な支持を得た。ふーん。よくわからん。自民党、いつからそんなに全党的に改革路線になったんだ? それに、福田さんのどこが 「改革路線継承」 なんだ?

要するに、自民党内では 「改革」 というスローガンが既に錆び付いて口先だけの御しやすいものに成り下がってしまったのか?

世間の空気をみると、「親中派」 どころか 「媚中派」 とまで言われる福田さんを派閥横断で支持した自民党より、秋葉原で麻生さんに圧倒的声援を送った若者の方が、ずっと 「右寄り」 に見える。前世紀後半では、少なからぬ若者が自民党より右なんてことは、あり得なかった。

こうなったのは、福田さんよりも麻生さんの方がずっと 「改革的」 に見えるからだ。前世紀後半では、「改革的 = 左寄り」 だったが、今ではそれが逆転してしまったかのようにみえる。麻生さん自身も 「キャラが立ちすぎて古い自民党に受けが悪い」 なんてことを言って、イメージ・プロモーションしようとしているし。

で、具体的には何がなんだかわからないが、イメージ的に言ってしまえば、今回の総裁選の推移と結果をみる限り、自民党は国民の 「ニーズ」 に即してないということになる。ねじれにねじれすぎている。

あんまりねじれていると嫌になるから、小泉さんにしろ、麻生さんにしろ、国民は 「ねじれの少ないわかりやすい」 政治家を歓迎したがる。「方向性よりもわかりやすさ」 なのだ。わかりにくい政治を戦後ずっと続けすぎたために、日本という国は、こんな風にとても不思議な選択をする国になってしまった。

空気を読める福田さんは、今回の結果でその辺のことをしっかりと感じただろうから、いきなり解散総選挙ということにはならない。やったら負けちゃうし。

福田さんの手法的には、麻生さんもしっかりと手厚く処遇して、挙党一致内閣というポーズを取りたいところだろうが、麻生さん、果たしてそれを受けるだろうか。安易に受けたら、自身の 「わかりやすさ」 が色あせちゃう。

福田さんは安倍さんと距離をしっかり取って、今回の 「いい目」 をみたのだけれど、今度は麻生さんがその手に出る番になったのかもしれない。

ああ、政治って面倒くさい。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

|

« 死刑で罪は償えるのか | トップページ | 養老先生の煙草論 »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

はじめまして。
前の記事にTB送った者です。
自民党本部前に麻生応援団が出ていましたね。
彼らにとっては麻生氏が新しさの象徴であり、福田氏が古い自民党の代表ということなのでしょう。
その意味では麻生氏のほうが小泉流の後継者であると見えているということですね。
ところが、麻生氏は小泉が自民党をぶっ壊したなんてことを平気で言っているわけで、これも面白いところです。まあ、小泉内閣で官房長官を務めた福田氏としてはそこまでは言えないし、表立っては「小泉改革」を否定できないというところでしょうね。

投稿: かつ | 2007/09/24 02:43

かつ さん:

>その意味では麻生氏のほうが小泉流の後継者であると見えているということですね。

小泉さんがやったのは、「党内調整型ちまちま政治」 から 「独断的だけどあっけらかんとわかりやすい政治」 への転換という仕事でした。

その意味では、確かに福田さんは古くて、麻生さんは新しいと言ってもいいんだと思います。方向性は全然違っても、手法が新しいと。

日本では、イデオロギー的な理念よりも、手法の方が一人歩きして 「理念」 たり得るんですね。珍しい国です。

投稿: tak | 2007/09/24 08:47

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/42004/16550263

この記事へのトラックバック一覧です: 総裁選のねじれ現象:

« 死刑で罪は償えるのか | トップページ | 養老先生の煙草論 »