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2008/01/24

漢字の読みをめぐる冒険

実は…間違えて音読していたコトバランキング」 というのが話題になっていて、自慢じゃないが、私は全部正しく読めた。

その上で、「なんでここで、『音読』 と言わなきゃいけないの?」 と、何となくしっくりこないのである。音読するときと黙読するときで、読み方が変わっちゃうわけじゃあるまいしね。

もしかしたら、「音読み」 というつもりだったのかなあと思ったが、ざっと見たところ、「徒となる」 「異にする」 「あり得る」 「祝詞」 「月極」 と、30のうち 5つも訓読みがあるから、それも違うだろうし。

まあ、細かいことはさておいて、ここに挙げられたうちのトップ・ツー、「依存心」 と 「間髪を入れず」 は、本来の読み方を知ってはいるけれど、実際に使うときは、大勢に迎合して、「いぞんしん」 「かんぱつをいれず」 と言ってしまったりする。そうでないと、通じない場合もあるので。

また 「祝詞」 については、「のりと」 という由緒正しい読みの他に、「しゅくじ」 という読みも別に間違いというわけじゃない。ただ、その場合は 「祝辞」 という表記の方が一般的だが。

そして、「女王」 と 「一段落」 については、私も過去に触れたことがある ("「女王」 は 「じょおう」 か 「じょうおう」 か" "「ひと段落」 をめぐる冒険") ので、興味がある方は参照されたい。

さらに、もうちょっと突っ込みたいのは、ここに挙げられた程度の読みは、寿司でいえば、せいぜい 「玉子焼き」 か 「しめ鯖」 ぐらいのレベルで、世の中には、もっと度肝を抜くようなのがいくらでもある。

例えば、「独壇場」 は 「どくだんじょう」 じゃなく 「どくせんじょう」 だということになっている。これだと、寿司でいったら、「はまち」 程度かもしれない。「どくだんば」 なんていう人もいるが、そんなのは論外ね。

ただ、これには少し複雑な事情があって、本来は 「独擅場」 と表記していたものらしいのだ。それが 「独壇場」 と誤表記してしまった ("へん" の違いに注目) のが一般的になってしまい、読みもそれに引かれて 「どくだんじょう」 でいいということになっている。

さらに今をときめく 「捏造」 である。これ、今どきは誰でも 「ねつぞう」 と読むが、本来は 「でつぞう」 なんだそうだ (決して鼻が詰まってるわけじゃない)。こうなると、「大トロ」 クラスかもしれない。ただ、「ねつぞう」 もちゃんと慣用読みとして認知されているから、あまり気にする必要もない。

これ、ATOK だと、ちゃんと 「でつぞう」 で 「捏造」 に変換してくれるが、MS-IME だと、少なくとも 2003バージョンでは 「出つ増」 になってしまう。MS って、やっぱり根はアメリカ人だからなあ。

それから 「洗滌」 が 「せんじょう」 じゃなくて 「せんでき」 だというのは、医療業界なんかでは常識らしい。 これはさすがに MS でも変換できたので、「中トロ」 程度か。これも慣用読みで 「せんじょう」 も認知されていて、さらに 「洗浄」 という表記の方が一般的だし、あまり気にしなくてもいいだろう。

ああ、日本語って本当に難しい。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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言葉」カテゴリの記事

コメント

「依存心(いぞんしん)」「間髪(かんぱつ)を入れず」「野に(のに)下る」「諸刃の剣(けん)」を誤答しました(カッコ内は私の読み)。

「独擅場」は知ってましたが、「捏造」と「洗滌」はびっくりです。これが4月1日のエントリーだったら信じなかったかも(笑)

投稿: 山辺響 | 2008/01/24 09:15

山辺響 さん:

>「独擅場」は知ってましたが、「捏造」と「洗滌」はびっくりです。これが4月1日のエントリーだったら信じなかったかも(笑)

むむ・・・、鋭い!

実は、最初にこうした意外な読みを挙げて、だんだんデタラメをちりばめていく手を、エイプリルフール・ネタにしようかとも思ったんですが、ちょっとインパクトに欠けるような気がして、マジなところだけで、早めに放出しました。

投稿: tak | 2008/01/24 10:55

ううむ…。

 『ご来迎』という言葉なんぞ、使ったためしがないぞよ。

 茨城県も茨木市も『いばらき』であることは、小学校の社会科(地理)で、すっかり叩き込まれましたし。

 『重複』も、どっちで読んでも良い時代となりました。

 「洗滌」なんて、存在を知りませんでした。


 また深くつっこむと、やぶへびになるから…。

 以上です。

投稿: オッチャン | 2008/01/24 12:42

オッチャン:

>『ご来迎』という言葉なんぞ、使ったためしがないぞよ。

元々は仏教用語ですからね。「二十五菩薩来迎図」 なんて国宝の絵を、どっかでみたことないですか?

http://www.chion-in.or.jp/bunkazai/hobutsu/01.html

>茨城県も茨木市も『いばらき』であることは、小学校の社会科(地理)で、すっかり叩き込まれましたし。

"そうだっぺよー。「茨城」 は 「いばらぎ」 じゃなくって、「イバラギ」 だっぺよー"

と、茨城指数の高い茨城人はいいます。(~_~)

>『重複』も、どっちで読んでも良い時代となりました。

私としては、「重複」 は 「ちょうふく」 と言いたいなあ。
それから、「代替」 も 「だいたい」 と言いたいです。

>「洗滌」なんて、存在を知りませんでした。

厳しい婦長さんは 「せんでき」 にこだわっていて、新米のナースがうっかり 「せんじょう」 なんて言うと、厳しく叱責されるなんて聞いたことがありますけど、もしかしたら都市伝説の類かなあ。

(この場合、「類」 を 「たぐい」 と読んでくれるのは、何割ぐらいだろう?)

あ、 それから、「婦長さん」 は、最近は何て言うんだろう? 看護師長さんかなあ?

投稿: tak | 2008/01/24 13:20

なるほど!

いや、「明鏡国語辞典」をひいてみたんですが、「でつぞう」では見出しがなく、「ねつぞう」のところに「でつぞうの慣用読み」とありました。

「でっちあげる(表記は捏ち上げる)」の「で」なんですね!

投稿: 山辺響 | 2008/01/24 19:07

山辺響 さん:

>「でっちあげる(表記は捏ち上げる)」の「で」なんですね!

そのようなんですね。
「でっちあげる」って、意外に乱暴な日本語じゃなかったんですね。

投稿: tak | 2008/01/24 22:03


独擅場
知りませんでした
私の脳内では、独壇場の方の独壇場でした

捏造・洗浄も
洗浄にはどうしても、ある種の連想がつきまといます

投稿: alex99 | 2008/01/25 01:00

医学用語には、妙な読み方をするものが多いですね。
口腔と書いて「コウクウ」と読ませるとか。
一種の業界用語のように思います。

投稿: かつ | 2008/01/25 03:39

alex さん:

>私の脳内では、独壇場の方の独壇場でした

これ、結構インテリでも、「どくだんば」 なんていう人がいるんで、どう反応したらいいか戸惑うことがありませんか?

「修羅場」(しゅらば)とか 「愁嘆場」 (しゅうたんば) とか、芝居の用語とは違うんですけどね。
(フツーは重箱読みは避けるのに)

>洗浄にはどうしても、ある種の連想がつきまといます

??? むむむ・・・ 下ネタ方面かな ^^;)

私は耳鼻科で、鼻の穴の中にブワーっとぬるま湯を噴射されて、「鼻腔洗滌」 をされたことが何度かあります。

「あ~~~~~~~~」 と常に言い続けてないと、むせて大変なことになるらしいので、我ながらバカみたいです。
(「みたい?」 というツッコミはなしということで ^^;)

投稿: tak | 2008/01/25 10:30

かつ さん:

>医学用語には、妙な読み方をするものが多いですね。
>口腔と書いて「コウクウ」と読ませるとか。
>一種の業界用語のように思います。

でも、つくりの 「空」 は 「クウ」 ですから、知らない人はそう読んじゃうかもしれませんね。

こんなページもありました。

http://www1.linkclub.or.jp/~yosihide/kuu-1

投稿: tak | 2008/01/25 10:40

http://www1.linkclub.or.jp/~yosihide/kuu-1

おお、これはこれは
失礼しました。

投稿: かつ | 2008/01/25 18:19

いやはや、色々な言葉があるものですね。

>医学用語には、妙な読み方をするものが多いですね。
>口腔と書いて「コウクウ」と読ませるとか。
>一種の業界用語のように思います。

そういえば、軍事の分野でも
現場の軍人さん達は滑腔砲を(かっくうほう)と
呼び習わしているそうで。

やはり、医者にしろ軍人にしろ、
直接、命の遣り取りに触れるシビアな環境では
言葉の本義である伝達性が重視される…という事なんでしょうか。

とても興味深いと共に、
件のサイトにある医学会での経緯を知って
少し感動してしまいました。


…あ、多分関係無いとは思うんですけども
もしかして、減殺(げんさい)とか相殺(そうさい)も
軍事用語だったりするんですかねぇ。
この二つ、昔からどうにもしっくり来ないのです。

投稿: m2 | 2008/01/25 19:49

m2 さん:

>直接、命の遣り取りに触れるシビアな環境では
>言葉の本義である伝達性が重視される…という事なんでしょうか。

鉄道関係では 「出発」 を 「でっぱつ」 と言いますよね。
あれも、何か他の言葉と紛らわしくならないためかなあ。

>もしかして、減殺(げんさい)とか相殺(そうさい)も
>軍事用語だったりするんですかねぇ。

恥ずかしながら 「減殺」 という言葉は知りませんでした。
「相殺」 は、どちらかというと、お金のやり取り関係だと思ってましたが。
どうなんだろう?

投稿: tak | 2008/01/26 08:38

“茶道”は“さどう”でなくて“ちゃどう”が正しいのですが(NHKではちゃどうと読んでいたし)、私は人前でちゃどうと読む勇気がまだありません。TAKさんはどうですか。

投稿: 偽浜っ子 | 2008/02/02 11:45

偽浜っ子 さん:

茶道の専門家は 「ちゃどう」 って言うようですね。
私は、専門家じゃないのでちょっと… ^^;)

投稿: tak | 2008/02/02 19:46

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