« ATOK はとても使いやすいんだけど | トップページ | なんで 「新東京タワー」 じゃいけないの? »

2008/03/21

チベット騒乱はなかなか難しい

チベット騒乱を、我々はどう捉えたらいいのかわからないでいる。ロイターは、「西側諸国が中国政府の対応を声高に非難する姿勢はさほど見られない」 と伝えている (参照)。

「中国経済の影響力の大きさが暗に示される形になった」 というのだが、これは、我々が中国共産党と同じ穴のムジナという意味だ。

西側社会は原則的に経済的アドバンテージを追う。経済大国となった中国との関係を悪化させたくはない。しかし、そうした姿勢でいる限り、我々は根本的に中国共産党と大差ない地平でのらりくらりしていることになる。

我々は経済的に豊かな暮らしをしたいと思っている。経済的に豊かならば、神や仏は二の次ということだ。それに対して、チベット人は自らの文化であるチベット仏教を守りたいとして、経済発展の方を二の次だと考えている。

とまあ、こう書けばちょっとした美談になりかねないが、現実はそういう話ばかりではないだろう。

騒乱を起こした者の中には、自らの固有の文化を尊重したいというセクターもあるだろうが、その尻馬に乗って漢民族系の商店の打ち壊しに走った群衆には、単に経済格差による欲求不満のはけ口を求めた者も多いだろう。

ダライ・ラマの指摘するように、中国共産党はチベットの貴重な文化 - それは多くの部分をチベット仏教という基盤の上に存在するのだが - を破壊しようとしており、チベット人はそれに対して強い反感を示している。

それは確かだ。どんな民族でも、自分たちの文化をないがしろにされれば、怒りの炎を燃やす。しかし、そうした文化破壊への怒りだけでは、大規模な騒乱にはなりにくい。人々が破壊行動に出るのは、経済的な不満爆発によることの方が圧倒的に多いものだ。

文化破壊は目に見えにくいが、経済格差は一目瞭然だ。人間は嫉妬によって突き動かされる。

世界に 「親中派」 と呼ばれるセクターは多いが、彼らは要するに、近い将来に世界最大の経済大国となることが確実な中国と、いい関係を築いておこうというだけのことである。中国共産党の非民主的な姿勢を支持しているわけじゃない。それだけに、こうした経済最優先の姿勢には、ある種自己嫌悪の情がつきものだ。

ダライ・ラマの高邁な仏教思想は、掛け値なしに尊敬に値する。彼を守るためなら、国際世論も動くだろう。しかし、チベットで騒乱を起こしているすべての人々が、ダライ・ラマの理想主義を仰いでいるという保障はない。

世界の精神主義を掲げるセクターとしても、固有の文化を守りたいんだか、経済格差に腹を立てているんだかわからないチベット人とは、100パーセント安心して手を組めないというところもある。それほどのリスクを負うほどには、思い切りがない。

図式的に言えばチベットと最も近い立場にいるのはイスラム社会なのだろうが、チベット仏教は彼らが唯一絶対の信仰対象とするアッラーではない生き仏を信仰対象とする。この一点だけで、彼らの管轄範囲ではなくなり、共闘できない。

というわけで、チベット問題は、世界がなかなかストレートな行動に出にくい特殊なファクターを、あまりにも多く含んでいる。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

|

« ATOK はとても使いやすいんだけど | トップページ | なんで 「新東京タワー」 じゃいけないの? »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

なるほどなるほど、そういう事であったわけなのですね。

世論が傍観の姿勢を取っているのに、釈然としない所があったのですが、すっきりしました。

しかしながら、精神的豊かさと物理的豊かさのあり方については、考えさせられるものですね。

精神的な豊かさについてですが、
よく背に腹はかえられないとは言いますが、他を顧みるのは決して余裕の表れだけでもないと思うのです。視野の狭い人を批判したいわけではなく、色々と思いを巡らせている人は単に好奇心に従って考えている面もあるんじゃないかな、と。

そうした一方で、物事を知らなくて済む気楽さというのもあると思います。便利なモノやシステムを生み出していく経済の中核には、そうした気楽さの追求もあると思います。

両者が、サービスする側とされる側といったように、うまくかみ合っていければ、いいのですけれどもね。

話が飛びますが具体的には、中国全体へのチベット文化(この場合は慣習としての文化というより、知恵としての文化)の普及とその対価としての経済性(文化保護)といった感じになるといいんですが。

チベット文化とその経済が世界とうまくかみ合っていけるようになるといいですね。

投稿: 夜の指揮者 | 2008/03/21 22:53

夜の指揮者 さん:

「衣食足りて」なんとやらというように、いくら高い精神文化でも、腹がへるとあぶなくなったりします。

満ち足りすぎてもアホに近くなるけど、このあたりはなかなかやっかいな問題だと思います。

投稿: tak | 2008/03/22 00:33

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/42004/40579423

この記事へのトラックバック一覧です: チベット騒乱はなかなか難しい:

« ATOK はとても使いやすいんだけど | トップページ | なんで 「新東京タワー」 じゃいけないの? »