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2008/10/22

「疲 (つか) らす」 だなんてねぇ

文化庁文化審議会国語分科会の漢字小委員会というところが、常用漢字の見直し原案をまとめたそうだ (参照)。お疲れ様である。

「私」 の読みに 「わたし」 を追加するほか、「委 (ゆだ) ねる」 「育 (はぐく) む」 「応 (こた) える」 なども追加し、「疲 (つか) らす」 は削除するのだという。

わたしは自分のサイトで、「私」 を一人称として採用しており、暗黙のうちに 「わたし」 と読んでもらえるものと期待していて、多分実際にそう読んでもらえていると思っている。「わたくし」 と読んでもらっても、別にいいけど。

小学生の頃に読んでいた 「毎日小学生新聞」 の漢字学習のコーナーに、「私」 の訓読みは 「わたくし」 しかなくて、「わたし」 とは読まないと書いてあった。子供心に 「そんなアホな」 と思った記憶があるが、そのアホな話がさらに今まで 40年以上も生きていたとは知らなかった。

それだけでなく、「委 (ゆだ) ねる」 「育 (はぐく) む」 「応 (こた) える」 なども認められていないということも知らなかったし、そうかと思うと、「疲 (つか) らす」 なんて、文法的に明らかに間違った読みをこれまで認定していたなんてのも、初めて知った。一体どういう神経していたんだろう。

「疲らす」 は、明治頃の擬古文調の文章なんかには慣用的と思われる用例が (「文豪」 とか 「大家」 と称せられる人の文章にも) なくもない (注) が、正しくは古語の 「疲る」 も下二段活用だから、「つからす」 にはならない。それに、現代語ではほとんど使われない。

これ一つ取ってみても、常用漢字表というのは、あんまりまともに信頼しすぎるとあぶないものだとわかる。何しろ、文化審議会国語分科会というのは、「さわり」 の本当の意味も知らないところなんだし。(それについては過去に 2度書いているので、こちらこちら を参照)

常用漢字なんて、元々 「目安」 ということで作られたもので、罰則なんてないんだから、我々としてはこれまで通り、フツーに使い続ければあまり問題はない。こんなのにこだわりすぎると、日本語がおかしくなる。

A-TOK を信頼する方が、ずっとまともな文章がかける。試しに 「つからす」 と入力して、いくら変換キーを叩いても 「疲らす」 になんて変換されなかった。

注 「疲らす」 と文豪、大家

こちらこちら を参照の上、「疲らす」 でページ内検索していただきたい。

常用漢字の読みとして認められてきたのは、制定当時の文化審議会の偉い先生が、「漱石や露伴も使ってるんだから」 と、ごり押しして認めさせたんだろうと想像される。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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言葉」カテゴリの記事

コメント

>常用漢字なんて、元々 「目安」 ということで作られたもので、罰則なんてないんだから、我々としてはこれまで通り、フツーに使い続ければあまり問題はない。こんなのにこだわりすぎると、日本語がおかしくなる。

 (罰則があったら)『夜露死苦』とか、『沙武舞輪』とか、『那衣人女亜』など、徒党を組んで活動しておられる若者の特権が、脅かされるところだった。
 子どもの名前で、「まりん、まろん」ちゃんなどはかわいい方で、イタリアの都市の名前(ろおま、みらの、とりの…、でもベネチアはなさそうだなぁ)を配したおしゃれさんもいます。罰則があったらたいへんだ!…あ、人名ならいいのか。
 (…、おばあちゃんになったとき、『ろおまばあちゃん』と呼ばれたら…、カッチョエーのか?飲み屋のネーちゃんか!)

 ちなみに、「疲らす(つからす)」は、『IMEスタンダード』なる変換装置において、変換候補に出現しました。

投稿: オッチャン | 2008/10/22 12:56


 確かに小学生の頃は”私”を”わたくし”と習ったような気もします。でも私も”わたし”のつもりでいつも使っていますね。

 確かに、以前に”私”と書いた場合に”わたし”か”わたくし”かを判断する事は出来ないよなぁと思ったこともありますが、”わたしく”なんていう人はどっかのお嬢様ぐらいのもんだろうと勝手に解釈してそれからは”わたし”として使っていますね。
 今更認めるも認めないもなかろうという感じはします(笑)

 常用という事ですから周知一般化されてから出来上がるものなんだとすれば、いつでもすでに時代遅れの論議が交わされる場なんでしょうね。

 なんだか、少し不毛な感じもしますが。

投稿: きんめ | 2008/10/22 13:12

オッチャン:

>(罰則があったら)『夜露死苦』とか、『沙武舞輪』とか、『那衣人女亜』など、徒党を組んで活動しておられる若者の特権が、脅かされるところだった。

う~~~ん、『沙武舞輪』 が読めない! ^^;)

>ちなみに、「疲らす(つからす)」は、『IMEスタンダード』なる変換装置において、変換候補に出現しました。

ほ、ほんとだ! ^^;)

だから、MS-IME は使いにくいんです。

投稿: tak | 2008/10/22 14:28

きんめ さん:

「私」 を 「わたし」 と読むのを認めるのに反対する意見もあるんですけど、世の大勢は 「わたし」 と読んじゃってますからね。

「私する」 とかいう場合は、「わたくしする」 と常識で読むし。

「わたくし」 とことさら読ませたい場合は、カタカナで表記する方が雰囲気だったりして ^^;)

「ワタクシ、生まれも育ちも葛飾柴又です」とか
「あーら、ワタクシじゃなくってよ」 とか。

>常用という事ですから周知一般化されてから出来上がるものなんだとすれば、いつでもすでに時代遅れの論議が交わされる場なんでしょうね。

「さっさと認めろ!派」 と、「いや、そこは慎重に 派」 が、せめぎ合ってるんでしょうね ^^;)

投稿: tak | 2008/10/22 14:32

オッチャン:

追伸レスです。

『那衣人女亜』は 「ナイトメア」 なんでしょうけど、個人的には、「衣」 は 「い」 じゃなくて 「え」 と読ませる使い方をしてもらいたいなあと、常々思ってます。

「え」 というひらがな自体、「衣」 の崩し字からできたわけですんで。
(「衣紋かけ」 「作務衣」 とかの 「え」 です)

投稿: tak | 2008/10/22 14:42

「沙武舞輪」何とか読んでみた。
サブマリン、ではなかろうかと。

ナイトメアも難しかった・・・。
ないじんじょあ?(笑)

投稿: 風花 | 2008/10/22 16:59

もういっちょ横道、失礼します。

 『夜露死苦』は有名どころですが、高架下等のコンクリ落書きから(記憶の限り…)拝借しました。
 ですから、これらの団体名(?)は正確な記述ではないかもしれません…。(スミマセン)

 地元の、国道をくぐる通路にあった記述…。
 「Dengaras Boys」
 多分、“でんじゃらすぼーいず”と書きたかったんでしょうが…。
 10年ほど前のことでしたが、地元なだけに、…がっくし。orz

投稿: オッチャン(乙血暗) | 2008/10/22 18:46

風花 さん:

>「沙武舞輪」何とか読んでみた。
>サブマリン、ではなかろうかと。

なるほど、そうか。
初めは 「シャブ」 がらみかと思いました ^^;)

投稿: tak | 2008/10/22 23:12

乙血暗 さん

「乙致庵」 とかだと、ちょっといい感じの雅号になりそうですけどね。

「Dengaras Boys」

「でがらし・ボーイズ」 かと思った ^^;)

投稿: tak | 2008/10/22 23:16

takさん

遅ればせですが・・・

「私(わたくし)」の語源は「渡隠(わたかくし)」という説がありますね。
世を渡る者が互いに非を隠すことを意味しているとのことです。

であれば、わたくしが正統でわたしが異端であるのかといえば、そのように主張される方もいらっしゃるのでしょうが、自分などはふーんと思うくらいですね。

スラブ語研究で著名な黒田龍之助先生も、言語は変化していくもので止められるものではないと仰せですし、われわれにしても実体験で言葉(とその用法)の変化に直面しているものもございますし。そのあたりはtakさんよくご存知かと。

だからといって、何でもやたら短縮して頭文字だけ繋いだり、記号化すればいいわけでもないでしょうが、と強く感じます。
「全然」には否定形だけがつながるべきと考える自分も、今時の若者からすれば旧人の類なのでしょうね。(苦笑)

投稿: 貿易風 | 2008/10/25 00:17

貿易風 さん:

>「私(わたくし)」の語源は「渡隠(わたかくし)」という説がありますね。
>世を渡る者が互いに非を隠すことを意味しているとのことです。

初耳です。
私も、「ふーん」 と思う程度ですね。

>「全然」には否定形だけがつながるべきと考える自分も、今時の若者からすれば旧人の類なのでしょうね。(苦笑)

そのもっと旧人は、「全然」 の次は否定形という公式にはこだわっていませんね。明治の小説には、今でいう 「断然」 という意味合いでの用例が結構みられますから。

投稿: tak | 2008/10/25 08:54

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