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2008/11/25

私は伝統的保守派なんだけど

産経新聞だけは執念で追うのだが、他紙は全然興味を示さないというネタを 「産経ネタ」 というのだそうだ。

産経新聞の福島香織記者によると、"「国籍法」 や 「対馬問題」 は各社から 「産経ネタ」 とよばれ" ているらしい (参照)。ふぅむ、よくわからん話である。

確かに、「国籍法」 と 「対馬問題」 に関するニュースは、産経新聞以外ではあまり目にしない。つまり、かなりのレベルでスルーされちゃってる。

しかし、これってそんなに軽視していいネタなんだろうか ?  例えば 「国籍法」 に関して、私は 「国籍法改正 (彼らは 「改悪」 と言っているのだが) 絶対反対」 という人もあまりよく理解できないが、それ以上に理解できないのは、それをちゃっかりとスルーしちゃうマスメディアだ。

巷で、あるいは 2ch 界隈で、これだけ論議を呼んでいるのだから、もう少しまともに解説するということがあってもいいだろうにと思う。

今、マスメディアの主流派の中で言われているのは、「お父さんが日本人なのに、その子を産んだお母さんと結婚していないからというだけの理由で、日本人として暮らせない子どもがいるのは、かわいそう」 という人情論系の 「法の下に平等であるべし」 という論調である。

それに対して、産経的論調は、現行の国籍法を変えることは国家の根幹に関わることであるとともに、「認知を金で買う」 という好ましからざるビジネスが横行することにもつながり、それによって、「好ましからざる日本人」 が増加するおそれがあると警鐘を鳴らしている。

かなり乱暴な譬えで申し訳ないが、私は、大相撲の世界で 「強けりゃどこの国の出身者だって横綱になっていいじゃないの」 という理屈が、あの曙が横綱に昇進するまでは、なかなか通らなかったことを思い出す。

そして、横綱が外国人ばかりになってしまった今、「品格問題」 などが取りざたされて、「やっぱり外国人横綱ではダメだ」 という論調が根強く残っているといったような事情も、きちんと考慮されなければならないと思う。

最も日本的な世界と思われていた大相撲の世界で、今、外国人力士の比率が高まっている。表面的にはそれで大きな問題はないようにも見える。ところが、時々大麻を吸っていただの、横綱としての品格に欠けるだの、ゴチャゴチャした問題が発生する。

国籍法改正という問題においても、これと似た構図が発生するだろう。今どき、血統とか 「純血」 とかにこだわるのはどうかと思う。しかし、安易に日本人 (日本国籍をもつ人) を増やしすぎたら、やはりいろいろな問題は増えるだろう。

私自身の立場を言えば、自分では伝統的保守派だと思っている。とくに文化的にはその傾向が強い。私の 「和歌ログ」 を見てもらえば、歴史仮名遣いによる文語の歌を詠んでいるほどだから、その看板に偽りはないとわかってもらえると思う。

しかし、私は一方ではアバンギャルド派でもある。歴史仮名遣いの文語の和歌の中に、突如カタカナを多用し、あまつさえ英語のスペルをそのまま持ち込んだりもする。

葉を落とし只立ちて在り銀杏 (いちやう) の木 naked (ネイキッド)てふ潔さもて

なんていう歌 (平成 15年 師走 7日の歌) を平気で読んでしまうという、括弧付きの 「伝統的保守派」 でもあるのだ。

とまあ、こんな男である私は今回の国籍法改正に関しては、諸手を上げて賛成というわけじゃない。しかし、あえて首相官邸に FAX をじゃんじゃん入れて反対の意思を表明するというほどには、熱狂的な反対者というわけでもない。

外国人の母親から生まれた日本人が増えて、日本の伝統文化がスポイルされると嘆くのならば、日本人同士の父と母から生まれた子供だって、今や 「伝統的日本人」 としての資格をほとんど喪失していることをどう見ればいいのか。

私は血筋がどうだろうが、歌舞伎を、文楽を、落語を、和歌を、神社仏閣を理解する人がこの国に増えてくれれば、それで嬉しい。ただそれは難しい話だろうとも思うので、私は今回の国籍法問題においては、態度を保留している。最近の私は、政治的には 「保留」 ばっかりで、まったく潔さというものがない。

私は、「愛国者」 を自称し、たまたま九段辺りに用があると、ついでに靖国神社を参拝したりする 「伝統的保守派」 である割には、政治的にはややリベラルであったりもする。こんなのは、国際的な目で見ればごくフツーだったりすると思うのだが、日本という国では、なかなか居心地のいい席が見当たらない。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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コメント

一年ほど前から読ませていただいています。

私は血筋がどうだろうが、歌舞伎を、文楽を、落語を、和歌を、神社仏閣を理解する人がこの国に増えてくれれば、それで嬉しい。ただそれは難しい話だろうとも思うので、私は今回の国籍法問題においては、態度を保留している。最近の私は、政治的には 「保留」ばっかりで、まったく潔さというものがない。

このたび、この文章とそのあとのセンテンスに、ものすごく共感(いままでも共感ばかり)したので、思わずこんな行為に。わりと常識人です。

投稿: 森本 忍 | 2008/11/25 23:58

ごめんなさい。
ダブりました。私は、ほぼ貴兄と同世代の男です。貴兄の語りはとてもいいと思います。
思想的にも語り口にも、個性が私にはマッチしています。
私も立場上、普通の生活的に他者に語る場面があるので、ネットを参照しつつ「何かないかな」と語り草を探しておるんですが、貴兄の話は半減するぐらいで一般の方に語ると「ちょうどころあいかげん」です。ありがたいです。もう書けん!

投稿: 森本 忍 | 2008/11/26 00:14

森本 忍 さん:

コメントありがとうございます。
(ダブり分は削除させて頂きました)

>思想的にも語り口にも、個性が私にはマッチしています。

はい、私は、思想は語り口に出ると思ってますので、文体というか、レトリックには気を遣いたいと思ってる方だと思います。

ただし忙しい時なんかは、ついいい加減な書き方をして、「ちょっとテキトー過ぎて、やばかったかな」 なんて思ったりしてしまいますけどね。

投稿: tak | 2008/11/26 00:38


この改正案では、DNA 鑑定も不要だから生物学的な親子関係を確認できない
要件は父親の認知だけでしょう?
いくらでも偽装できる
亡命も事実上許さない日本にしては、実に奇妙な法案です

これは外国人参政権を狙う公明党の策動だと言う意見がネットに多い
私もそう思います

投稿: alex99 | 2008/11/26 01:22

>日本人同士の父と母から生まれた子供だって、今や 「伝統的日本人」 としての資格をほとんど喪失していることをどう見ればいいのか。

私はここに一番共鳴します。
どう解決するのか?
米国で帰化する際には、米国の文化、歴史、法制度に関するテストを受けると聞きます。こうしたものを導入の上、帰化や永住権、選挙権の枠を大幅に拡大すれば、人口減少問題を緩和するのみならず、「伝統的日本人濃度」を引き上げることにならないですかね?一番日本人的でない日本人は「日本人」ばかり、なんていう事態になったりして。

投稿: きっしー | 2008/11/26 10:32

alex さん:

>これは外国人参政権を狙う公明党の策動だと言う意見がネットに多い
>私もそう思います

公明党の戦略の一環に合致しているというのは、間違いないと私も思います。

困ったもんです。

投稿: tak | 2008/11/26 11:30

きっしー さん:

>米国で帰化する際には、米国の文化、歴史、法制度に関するテストを受けると聞きます。こうしたものを導入の上、帰化や永住権、選挙権の枠を大幅に拡大すれば、人口減少問題を緩和するのみならず、「伝統的日本人濃度」を引き上げることにならないですかね?一番日本人的でない日本人は「日本人」ばかり、なんていう事態になったりして。

私としてはいい方法だと思いますが、ハードライナーたちは納得しないでしょうね ^^;)

投稿: tak | 2008/11/26 11:34

ちょっと出遅れ。。。
私も国籍法改正は大反対です。
本当に日本人以上に日本を愛されている外国人の方もいらっしゃいますが、そうではない人に
国籍は与えられないとおもいます。

だいたい、保守派を標榜する中川大臣などは閣議で何をしていたのでしょうか?
閣議でサインを拒否して免職されるぐらいの勢いがほしかったですね。(笑)

それと、国民自体ももっと日本の文化や、郷土の文化に愛着を持つことも必要だと思います。
今の若い人って、日本の歴史・文化や郷土のことについて、あまりに知らなすぎだと思います。
受験勉強も良いけど、もう少しそういうことも学んでほしいですよね。
そうしたら、もっと政治家も本気になると思うのですが。

投稿: 雪山男 | 2008/11/26 12:22

雪山男 さん:

>私も国籍法改正は大反対です。

私もはっきり言ってしまえば、主旨はともかく、「認知さえすれば自動的に」 みたいなシステムは問題ありすぎと思います。

バグ満載で出荷される Windows みたいなものです。
法律は決まってしまったら、必要に応じてバージョンアップなんて難しいですからね。

>今の若い人って、日本の歴史・文化や郷土のことについて、あまりに知らなすぎだと思います。

私は政治的な愛国心よりも文化的な愛国心を重視したいと思ってます。
政治的な愛国者が、日本文化の素養全然ないってことも時々見聞きします。

投稿: tak | 2008/11/26 12:35

さらに追加ですが。。。
靖国神社には一度参拝したいんですがね、あそこは戊辰戦争の招魂社なんで、会津人としては、ちょっと引っかかりがあ
るんですよね。
ということで、千鳥ヶ淵には行っているんですが、靖国には行ったことがありません。

投稿: 雪山男 | 2008/11/26 16:43

雪山男 さん:

>靖国神社には一度参拝したいんですがね、あそこは戊辰戦争の招魂社なんで、会津人としては、ちょっと引っかかりがあるんですよね。

なるほど。
でも、なかなかいいとこですよ。

神社の形式としてもちょっと特殊な興味深いところがあって、ずっと奥まで入っての、「昇殿参拝」 っていうのがあるんですよね。
フツーの神社の拝殿からの参拝というのと違うんです。

投稿: tak | 2008/11/26 23:00

はじめまして、たきがわと申します。
以前、小耳に挟んだのですが、役所の見解としては、

1.血のつながりがなくても(愛人の子でも)認知が可能。
2.男性は100人でも1000人でも認知が可能。

とのことでした。
とんでもないなぁ。

投稿: たきがわ けいご | 2008/11/26 23:30

takさん


>今や 「伝統的日本人」 としての資格をほとんど喪失している

全員「小泉八雲化」させるに限りましょうか。
乱暴ですが・・・(笑)

さて、大相撲つながりで。
この度大関昇進の安馬改め日馬富士はモンゴル出身ですが、断片的なエピソードを伺う限りでは充分「日本人らしさ」を感じる事が出来ますね。
心臓病医療の支援を続けてきた中で「(心臓病で)苦しむのは、子供が多いからね」というコメントを残していると伺いました。
余程、何処かの誰か(不特定多数)より立派な事は間違いないでしょう。
こういう方が増えてくれるのなら、大相撲の外国への門戸開放も日本国籍の増大も何の問題も無いのですがネ。

投稿: 貿易風 | 2008/11/27 02:24

たきがわ けいご さん:

>1.血のつながりがなくても(愛人の子でも)認知が可能。

えぇと、愛人に生ませた子というなら、血のつながりがありますから、愛人の連れ子とか、愛人が浮気して (変な言い方ですが) 生まれた子でも、認知できるということですね。

現行法の場合は、その愛人が外国人だと、認知しても子どもは日本国籍を得られないってわけですね。

>2.男性は100人でも1000人でも認知が可能。

一人の男性が、子どもを何人でも認知できるんですね?
それなら、論理的には問題ありませんね。倫理的にはどうかと思いますが。
でもまあ、産ませちゃったんなら、認知する方が倫理にかなうとみることもできるし。

まさか、一人の子どもを複数の男性が認知できるっていうことじゃありませんよね。

投稿: tak | 2008/11/27 08:56

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