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2009/05/26

「人車鉄道」 って知ってた?

今朝の TBS ラジオで詩人の荒川洋二さんが、新潮社刊の 『日本鉄道旅行地図帳』 を紹介しておられた。

日本の鉄道の全線、全駅、全廃線を正確に記した全 12巻の地図帳で、販売累計が 135万部突破という、一大ベストセラーになっているのだそうだ。

荒川洋二さんは、毎月発行される鉄道の時刻表を 「読む」 という程の鉄道好きでいらっしゃるようで、この 『日本鉄道旅行地図帳』 も大喜びで紹介されている。さらにこの地図帳には 「増結版」 (「増刊」 ではない) として、『乗りつぶしノート』 というのまであるらしい。自分の乗った路線を記録する白地図である。誠に念の入ったことである。

ところで、今回私がこの地図帳を紹介したのは、全国の鉄道を乗りつぶして、『乗りつぶしノート』 を埋めていこうと呼びかけるためではない。私は別に鉄道マニアでも何でもないので。

私がこの地図帳の存在を心に止めたのは、荒川さんが 「この地図帳には、『廃線』 として 『○○人車鉄道』 とか 『××人車軌道』 とかいうのがかなり多く載ってるんですよね」 とおっしゃったからだ。「人車」 って、一体何だ?

荒川さんが調べたところによると、その昔、客車や貨車を人間が押して通行する鉄道というのが、1900年から 1920年の間には、多く存在していたようなのである。Wikipedia で調べたら、こんなように書いてあった。(参照

動力の機械化に逆行する人力交通機関であったが、建設コストを含めた初期投資の少なさ、動力としての人件費の安さとその維持の容易さ、鉄道運行の簡便さ、等が特長で、基幹交通機関(幹線鉄道、河川交通)との接続を目的とした小規模な地域密着の路面交通機関 (軌道) であった。しかしながら人力による輸送力の小ささ、運輸効率の悪さ、旅客輸送においては速度の遅さがモータリゼーションの波に打ち勝てず、1959年に島田軌道が廃止されたのを最後に姿を消した。

人間が押す鉄道というのがあったというのも驚きだが、それが 1959年まで存在したというのも意外である。私が小学校に入学した年に、まだそんなものがあったというのである。子どもが絵本で蒸気機関車を眺めて、胸を躍らせていた年に。

はまだより」 というサイトに、「豆相人車鉄道」 というものを紹介したページがあり、とても興味深い。「豆相」 という名称は、伊豆と相模を結ぶ鉄道だからだろう。

掲載されている写真をみると、客車は本当に小さいものだ。もっともこのくらい小さくないと、人力で押すのは無理だろう。上り坂になると、乗客が降りて押すのを手伝っていたらしい。最後まで乗っていられたのは一等車の客だけのようだ。

「はまだより」 のページには、次のような記述がある。

余談になるが, 明治時代の作家が何人か この豆相人車を作品中で取り上げている。
たとえば 国木田独歩の『湯河原ゆき』には 「人車には一驚を喫した。実に乙なもの 変てこなもの」 とあり,また 坪内逍遥の『熱海と五十名家』には 「私達夫婦は人車鉄道という無鉄砲なものに前後六回ほど乗った。・・・時には脱線して大怪我をしたという噂を屡々聞いた」と書かれている。

さしもの明治の文豪も 「変てこなもの」 とか 「無鉄砲なもの」 と言っている。やっぱり、いくらなんでもエキセントリックに感じられたのだろう。とはいえ、これは日本人ならではのアイデアなのではなかろうか。

西洋ならきっと馬車仕立てにすることを思いついただろう。人が押すなんていうのは、東海道を駕籠 (かご) に乗って旅したという伝統からの延長線上でしか発想できないんじゃあるまいか。

日本人って、やっぱり 「どこか変」 なところがあるのかもしれないと、「人車鉄道」 なるものを知って、改めてしみじみと感じてしまったのであった。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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コメント


>西洋ならきっと馬車仕立てにすることを思いついただろう。

馬車鉄道
英国で19世紀に実用化されています
日本にもありました


投稿: alex99 | 2009/05/26 17:29

alex さん:

>馬車鉄道
>英国で19世紀に実用化されています
>日本にもありました

Wikipedia で調べたら、本当だ、ありました。
豆相人車鉄道は、山道が多くて馬が通れなかったからのようですね。

それにしても、人が押すというのは、まさに無鉄砲なお話で。

投稿: tak | 2009/05/26 18:12

乗り心地はともかく一度乗ってみたい気がしますね。
上りで降りて押すのとか楽しそうです。
下りはちょっと恐そうですが…。

グーグルで人車鉄道を検索してみたらトップにものすごいサイトが出てきました(゚゚

投稿: ぐすたふ | 2009/05/26 18:39


本当にありましたというより (笑) もともと英国では、石炭の運搬用に運河が掘られ、馬車鉄道が敷設されていたのです
その馬を蒸気機関の発明の後に、レールや車両はそのままにして、蒸気機関車に置き換えただけです
当初は鉄道馬車と蒸気機関車の競走などがありました

投稿: alex99 | 2009/05/26 22:23

ぐすたふ さん:

>乗り心地はともかく一度乗ってみたい気がしますね。

図体のでかい私は、せまいところに押し込まれるのが苦手なので、遠慮しときます。

上りで降りて押すのとか楽しそうです。

この方がまだいいです ^^;)

投稿: tak | 2009/05/27 09:02

alex さん:

>本当にありましたというより (笑) もともと英国では、石炭の運搬用に運河が掘られ、馬車鉄道が敷設されていたのです
>その馬を蒸気機関の発明の後に、レールや車両はそのままにして、蒸気機関車に置き換えただけです

なるほど、英国ではそれが自然でしょうね。
ただ、私が 「本当だ!」 と感動したのは、日本にもあったということについてでして ^^;)

投稿: tak | 2009/05/27 09:05

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