« 「その程度でいいの?」 という疑問 | トップページ | シルバーカーで競走するばあさん »

2009/06/24

SWOT 分析は何にでも効くわけじゃない

企業などの戦略計画立案ツールの中で最もよく知られたものの一つに、「SWOT 分析」 がある。

ハーバード・ビジネススクールで 1920年代から開発されてきたもので、ある意味、古典的なツールなのだが、今でもあちこちで、ずいぶんありがたがられて使われている。

これがどんなものかを知るには、上記のリンクを辿って Wikipedeia の説明をご覧いただければいいのだが、ざっと言えば、企業や個人のビジネス戦略を立案するにあたり、まず、以下の 4つのポイントを明確にするところから始めるのが特徴だ。

  • 強み (Strengths) :目標達成に貢献する組織 (個人) の特質
  • 弱み (Weaknesses) :目標達成の障害となる組織 (個人) の特質
  • 機会 (Oppotunities) :目標達成に貢献する外部の特質
  • 脅威 (Threats) :目標達成の障害となる外部の特質

以上の 4つのポイントの頭文字をとって 「SWOT 分析 (SWOT analysis)」 というわけだ。実際の作業では、紙の上に田の字のマス目を書き、左上に強み、右上に弱み、左下に機会、右下に驚異となるポイントを、それぞれ書き連ねることから始まる。

                       
強み (Strengths) 弱み (Weaknesses)
機会 (Oppotunities)脅威 (Threats)

上段が内部要因、下段が外部要因、左側がアドバンテージ、右側がディスアドバンテージとして、視覚的にも整理されるから、戦略立案の出発点としてわかりやすい。企業の戦略会議などで既にお馴染みの方も多いかもしれない。

私も 30代の頃、勤務先の団体が資金的に危機に陥った時に、盛んに会議が招集され、この手法を用いて運営改革の議論が行われた。そして結論から言えば、この会議では、いくらこの SWOT 分析を用いて頭をひねっても、全然役に立たなかったのだ。

私個人は、この会議では完全にしらけていた。私はマーケティングやマネジメントを専門に学んだわけではないが、SWOT 分析というのは、経営危機に陥った組織が 「どうすれば持ち直せるか」 という包括的な議論を行う際に役に立つものではないということを、漠然と感じていた。

SWOT 分析というのは、明確な目標を設定した特定のプロジェクトを開始する時には非常に有効なツールだが、「今までみたいにうまくいかなくなっちゃったから、どうしようか?」 というときに効果を発揮するものではないのだ。そんな時には、むしろ徹底した現状分析からやり直さなければならない。

要するに、経営危機に瀕してそこからの脱却を図ろうという時に有効とはいえない SWOT 分析というツールに、馬鹿の一つ覚えみたいに頼るしかなかったというのが、その組織の限界だった。というわけで、その団体は今ではなくなってしまった。

今でも、マーケティング・コンサルタントか何かで、エラソーに SWOT 分析を振りかざす人が少なくないわけだが、有効なケースで持ち出しているわけでは、必ずしもないように思われる。

それから、たとえ有効なケースであったとしても、その組織の 「強み」 「弱み」 として挙げられる要素が、必ずしも客観的に妥当なものではなく、単に当事者の 「思いこみ」 にすぎなかったりすることもある。というか、それがかなり多い。

過去のあるプロジェクトには十分に 「強み」 として作用していたが、新規プロジェクトにおいては、かえって邪魔になるみたいな要素を、単なる流れで 「強み」 として挙げたがる傾向がある。「強み/弱み」 なんて、相対的なものということをわかっていない人が多いのだ。

私が経験から学んだ教訓は、「SWOT 分析は何にでも効くわけじゃない」 という、当たり前のテーゼである。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

|

« 「その程度でいいの?」 という疑問 | トップページ | シルバーカーで競走するばあさん »

マーケティング・仕事」カテゴリの記事

コメント

昨年12月の研修を思い出しました。
 SWOT分析とか、ツリー図とか、いろいろ書かされました。
 現在の業務では、それはもー、せっかく習った戦略的思考のツールですから…、まったく使ってませんなぁ…。orz
 うふふ、会社の人にはナイショ。

投稿: 乙痴庵 | 2009/06/24 13:06

戦略立案の上手な人は、SWOT分析をさらっとプレゼンテーションに織り交ぜて使っていますね。
たぶん、最大の効用は、(1)自社の「だいたい」のポジションを把握することと、(2)そういうツールを一通り習得していることを示して安心感を持ってもらうとか提案のクレディビリティを高める、という2点ではないかと思います。
いずれにせよ、プロジェクトの成功にはもっと深い分析と画期的なアイデアがないと、ですね。

投稿: きっしー | 2009/06/24 13:52

乙痴庵 さん:

>現在の業務では、それはもー、せっかく習った戦略的思考のツールですから…、まったく使ってませんなぁ…。orz

使わなくても済むのが一番 (^o^)
多分、使っても、やることは一緒だったりして。

投稿: tak | 2009/06/24 21:31

きっしー さん:

>戦略立案の上手な人は、SWOT分析をさらっとプレゼンテーションに織り交ぜて使っていますね。
>たぶん、最大の効用は、(1)自社の「だいたい」のポジションを把握することと、(2)そういうツールを一通り習得していることを示して安心感を持ってもらうとか提案のクレディビリティを高める、という2点ではないかと思います。

言えてる、言えてる。
ちょっとしたポーズを作るには最適のツールです。

投稿: tak | 2009/06/24 21:33

去年、企画室と財務部の部長たちと自社分析のひとつとしてSWOT分析を実施したのですが、自社の「強み」が3つしか出てこなかったのに、「弱み」は18こも出てきて、みんなで苦笑しました。
SWOT分析が難しいのか、それともわが社がダメなのか(笑)
主観的な「強み」って、なかなか評価が難しいのかもしれませんね。

投稿: naruo | 2009/06/26 00:49

naruo さん:

>去年、企画室と財務部の部長たちと自社分析のひとつとしてSWOT分析を実施したのですが、自社の「強み」が3つしか出てこなかったのに、「弱み」は18こも出てきて、みんなで苦笑しました。

あの福田さんみたいに(?)、自社を客観的にみることができているのか、あるいは、「わかっちゃいるけど……」 なのか、ビミョーですね ^^;)

>主観的な「強み」って、なかなか評価が難しいのかもしれませんね。

強みと弱みは、あるひとつの資質をどちらからみるかということによるので、なかなか難しいと思います。

例えば 「国際的」 というのは、国際ビジネスには有利ですが、ベタベタ・ドメスティックなお仕事では邪魔だったりしますしね。

投稿: tak | 2009/06/26 13:09

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/42004/45437684

この記事へのトラックバック一覧です: SWOT 分析は何にでも効くわけじゃない:

« 「その程度でいいの?」 という疑問 | トップページ | シルバーカーで競走するばあさん »