« 顧客も有権者も、常に正しい (か?) | トップページ | 女子高生のスカート丈 »

2009/07/28

身近な犯罪への 「抵抗力」

このほど公表された 2009年版 『警察白書』 に関するニュースで、時事ドットコムの "「抵抗力」 高める必要=犯罪発生しにくい社会へ" という見出しが気になった (参照)。

「気付かないうちに巻き込まれる身近な犯罪」 を防止するために、国民の 「抵抗力」 を高めなければならないというのである。

「気付かないうちに巻き込まれる身近な犯罪」 の例としては、「親族らへの情愛に付け込む振り込め詐欺▽「元金保証で絶対もうかる」 と資金を詐取する利殖商法▽食品の産地・成分の偽装▽健康や美容をうたった医学的根拠の不明な医薬食品販売」 などが挙げられている。なるほど、確かに最近話題になっているものばかりだ。

このように、最近話題になっている犯罪であるにも係わらず、だまされる人はだまされる。産経ニュースによると、振り込め詐欺被害者に こうした犯罪の手口の認知度を尋ねたところ、「(振り込め詐欺の)名称を知っていた程度」 と 「全く知らなかった」 との回答が 28.4%に上ったという (参照)。

一般国民の回答が 10%にとどまったことと比べても、振り込め詐欺の被害者は 4人に 1人以上が振り込め詐欺に関しての認識が薄すぎ、日頃の意識が無防備過ぎるということができる。いや、私から見れば、一般国民でも 10人に 1人は認識が薄いというのも驚きなのだけれど。

さらに驚きなのは、産経ニュースの次の部分だ。

(振り込め詐欺の) 被害者の5.5%が犯人からの電話を 「振り込め詐欺と考えた」 と回答。「少し考えた」 の24.6%と合わせて 30.1%が、詐欺を疑いながらも送金していた。

つまり、振り込め詐欺の被害者の 4人に 1人以上が、この犯罪についての認識が極めて薄く、しかも、認識があったとしても、3人に 1人弱は 「もしかして、振り込め詐欺かも」 と思いつつも、結果的にはしっかりと犯人に送金してしまっていたわけだ。「すごいなあ」 と、半ば感心してしまう。

しかもますます感心してしまうのは、こうした人たちが、自分で ATM を駆使して犯人の口座に振込をしてしまっていることだ。私の父なんか、頭はとてもはっきりしているけれど機械モノの操作が大の苦手だから、いつも銀行の案内係に頼んで操作してもらっているらしいのに。

自分で ATM を操作できる人でも、振り込め詐欺に関する認識がかくも薄く、しかも、薄々勘づきながらも結果としてだまされてしまうというのは、本当に 「抵抗力不足」 としか考えられないのである。

私は今回の千葉花見川団地での殺人・次女連れ去り事件を思い出した。連れ去られた次女が逃げ出しもせず、犯人と行動を共にしたのは、異常な状況下で被害者が犯人に依存心を起こしてしまう 「ストックホルム症候群」 が芽生えたからではないかと指摘されている。

私は詐欺を疑いつつもつい送金してしまうメンタリティの根っこの部分にも、これと共通したものがあるかもしれないと感じる。人間の心理というのは、一筋縄では行かないものである。

以前、都心の事務所で一人だけで残業している時、値上がり確実の中国株の購入を勧める、ちょっと見た目麗しいおねえさんが訪問してきた。このおねえさんは、この株を買わないのはいかにばかげたことであるかを、なかなか言葉巧みに説くのである。(このことに関しては、以前 こちら に書いている)

ここで告白するが、この話を聞いた最初の 2~3分は、私の心も全く動かないわけではなかったのである。「そんなに有望な株なら、買っちゃってもいいかも」 ぐらいには思いかけた。しかし、すぐに 「こりゃ、イカサマだな」 と気付いた。それは、いくら何でも話がうますぎるからである。判断材料としては、それだけで十分だった。

うますぎる話にろくなものはない。これさえ知っておけば、怪しげな利殖商法にだまされることはない。こうした話にうっかり乗ってしまうのは、結局のところは、自分の欲の皮の突っ張り加減に負けたのである。

楽して儲けたり痩せたり綺麗になったりすることなど、できない相談だし、いくら息子が不始末をしでかしたとしても、一刻を争って何百万もの金を都合しなければならないなんてことはあり得ない。それさえしっかり知っておけば、犯罪に対するかなりの 「抵抗力」 を身に付けたことになる。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

|

« 顧客も有権者も、常に正しい (か?) | トップページ | 女子高生のスカート丈 »

ニュース」カテゴリの記事

コメント

正論だけど、これを読んで「うん、そのとおりだな」と思う人には、そもそも読む必要のない話なのかもしれないですね(涙)

投稿: 山辺響 | 2009/07/28 14:44

When it seems too good to be true, it usually is と誰かが映画の中で言ってたなあ。けだし名言。

振り込め詐欺がこれだけ隆盛を誇る背景の一つには、お金の力でコトを穏便に済まそうとする風潮もあると思います。息子が不始末をしでかしたのなら、本人がしっかり責任を取るべきという考えが欠落しているわけです。
そういう倫理的な弱さには目をつむっておいて、「親子の情につけこんで」と犯人を難じてみせる論調には、抵抗を感じます。葛藤無く「親子の情」と肯定してしまう考え方自体がこの犯罪を醸成しているんじゃないのか、と。
無論、どんな立派な人でもこうした葛藤自体はは生じるでしょうし、昔からさまざまなドラマの主題にもなっているわけです。が、この種の事件の報道を見ていると葛藤がなさ過ぎる気がして。

投稿: きっしー | 2009/07/28 15:07

山辺響 さん:

>正論だけど、これを読んで「うん、そのとおりだな」と思う人には、そもそも読む必要のない話なのかもしれないですね(涙)

まさに。(涙ぼろぼろ)

ただ、私が興味を覚えたのは、「振り込め詐欺かも」 と思いつつも、「もし本当だったら、後から悔やんでも悔やみきれない」 なんて、自分を正当化して振り込んでしまうというメンタリティです。

疑いをもってしっかりと確認したりすると、せっかく助けを求めてきた息子や孫を傷つけてしまうなんて思ったりもするんでしょうね。

本当に、人間の心理というのは面倒なものだと思います。

投稿: tak | 2009/07/28 15:51

きっしー さん:

>When it seems too good to be true, it usually is と誰かが映画の中で言ってたなあ。けだし名言。

まゆつばな話のことを、"too good to be true story" なんて言いますね。うまい言い方だなあ。

>葛藤無く「親子の情」と肯定してしまう考え方自体がこの犯罪を醸成しているんじゃないのか、と。

フツーは、たとえやばいことになったとしても、親に余計な心配かけたくないから、内緒で処理しますよね ^^;)

投稿: tak | 2009/07/28 16:02

疑いながらも送金してしまうというのは本当に不思議ですよね。何かシステム的に防ぐ方法があればベストなんでしょうけど、あればとっくにやられてますね…。「声かけ」なんかは地味に成果が上がっているみたいですが…

うちは例の床下商法が社会問題になる前に引っかかった口です(^^; 家が元々ボロいということもあってまんまと騙されて換気扇をいくつか付けてしまいましたが、付き合いのある地元の建築業者さんに「あまり意味ないよ」とか言われてしまいました(笑)。あの手の商売の人は、人が不安に思っている部分を巧みに引き出して説得するのがうまいですね。後、当然ながら人当たりもいいです。自分はいい社会勉強になりましたが、中には社会勉強ではすまされないような被害を受けている方もいるみたいですし、困ったものですね。

うますぎる話にろくなものはない、というのはまったく同感です。年率で2桁を超えるような儲け話はその時点で怪しいと思います。何にせよ、ちゃんと労働して得たお金で生活するのが一番ですね(これもばかばかしいくらいの正論ですが…)。

投稿: ぐすたふ | 2009/07/28 18:51

誤解のある書き方なので自分でツッコミを入れますが、年率で…は「10%とかそれ以上」という意味です(-.-。

投稿: ぐすたふ | 2009/07/28 19:19

又聞きの〜…、なので恐縮ですが、電話口で「バカヤロー!今すぐ取りに来い!」と息子さんを叱責した(つもりの)かたは、被害に遭わなかったそうです。

投稿: 乙痴庵 | 2009/07/28 19:33

以前、うわさの東京マガジンで、詐欺の被害にあった人の隠し撮りビデオを見ましたが、相手を信用させる手口の巧妙さに思わず“うまいなあ”と思いました。
契約を結ぶための二回目の訪問時に開口一番“いやぁぁ、昨日は下の子の運動会で…”、つまり僕は少なくとも二人の子の父親で、運動会に行ってあげるいいお父さんしてますよ~っと相手に訴えてるわけですね。そんないいお父さんが人を騙すわけないじゃないですかとね。 

あの人たちは詐欺商法の業界を渡り歩いてるので人の警戒心を解くノウハウをたっぷり身に着けてます。素人ではなかなか太刀打ちできないでしょうね。

対抗するにはひたすら、訪問販売には応じない、世の中うまい話は絶対に無い、と呪文をとなえることだと思います。

投稿: 偽浜っ子 | 2009/07/29 03:10

ぐすたふ さん:

>疑いながらも送金してしまうというのは本当に不思議ですよね。何かシステム的に防ぐ方法があればベストなんでしょうけど、あればとっくにやられてますね…。「声かけ」なんかは地味に成果が上がっているみたいですが…

ちょっと前に、銀行員が 「怪しいから送金するな、ちゃんと確認しろ」 と必死に説得したにもかかわらず、聞き入れずに振り込みをしちゃって、振り込め詐欺の被害者になっちゃったというニュースがありましたね。

これなんか、もう、頭の中で度し難いストーリーが構築されちゃって、崩せないものになってしまっているわけです。

「こんなにまで自分を頼るしかないまでに追い込まれたかわいそうな息子」 の不幸を改めて確認するなんて、そんな不人情なことをしたら、せっかく頼ってもらった自分の存在意義を否定することになるという気がするのでしょう。

きっと、初めて生まれた自覚的な 「信頼関係」 なんでしょうね。
そのことに舞い上がってしまって、それを崩したくなかったんだろうと思います。

「これがもし振り込め詐欺だったとしても、息子の信頼に応えた自分の優しさは残る」 とばかりに舞い上がる。
実際に残ったのは、客観的にみれば 「優しさ」 よりも 「愚かさ」 なんですが、主観的にはそうじゃないんでしょう。

>あの手の商売の人は、人が不安に思っている部分を巧みに引き出して説得するのがうまいですね。

ロールプレイイングなんかで、しっかり練習してるみたいですよ ^^;)

投稿: tak | 2009/07/29 04:58

乙痴庵 さん:

>又聞きの〜…、なので恐縮ですが、電話口で「バカヤロー!今すぐ取りに来い!」と息子さんを叱責した(つもりの)かたは、被害に遭わなかったそうです。

わはは (^o^)

仕事でも、振り込みが嫌いで 「請求書持って集金に来い」 と言う人がいます。

こちらとしては、手間はかかるし、領収書に収入印紙貼らなきゃいけないし、うっとうしい話なんですが、そういう人は少なくとも振り込め詐欺にあいませんね。

投稿: tak | 2009/07/29 05:03

偽浜っ子 さん:

>以前、うわさの東京マガジンで、詐欺の被害にあった人の隠し撮りビデオを見ましたが、相手を信用させる手口の巧妙さに思わず“うまいなあ”と思いました。

隠し撮りしたということは、詐欺の被害にはあわずに済んだんでしょうかね。

>対抗するにはひたすら、訪問販売には応じない、世の中うまい話は絶対に無い、と呪文をとなえることだと思います。

訪問販売すべてが悪質というわけではありません。
そのエリアを長年にわたって廻っている地元密着型のセールスのおっちゃん、おばちゃんなら、まあ、大丈夫のことが多いようです。

いきなり訪問されて、信用しろと言われても、フツーは無理ですが、そのあたりをうま~く持っていくのが、詐欺の腕前なんでしょうね。

投稿: tak | 2009/07/29 05:35

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/42004/45764334

この記事へのトラックバック一覧です: 身近な犯罪への 「抵抗力」:

« 顧客も有権者も、常に正しい (か?) | トップページ | 女子高生のスカート丈 »