« 桃の葉ローションを使わずにすんだ | トップページ | なしくずしのネット選挙解禁? »

2009/09/09

バスタオルを巡る冒険

昭和 27年に、当時は陸の孤島みたいなものだった山形県庄内地方で生まれた私は、戦後の日本のライフスタイルが急速に変わっていく様をリアルタイムで見てきたと思う。

多分それは、都会生まれの 3~4歳上の世代よりもずっと急激な変化だったと思う。なにしろ、田舎のタイムラグはすごいから。

例えば私は、輸送機関が馬車とか牛車だったころの光景を鮮明に記憶している。酒田の街の目抜き通りでも、いつも道の真ん中に馬糞や牛糞がぼたぼた落ちていたものだ。だから私は、馬糞と牛糞の違いは一目でわかる。コロコロしているのが馬糞で、ベトベトなのが牛糞だ。

恐ろしいもので 4歳違いの妹は、街中が馬糞と牛糞で埋められていた光景は全然記憶にないという。そうすると、妹が物心つき始めた頃には輸送手段がオート三輪や自動車に変わっていたのだろう。私はぎりぎりで戦後の貴重な 4年間を目撃することができたのである。

さらに恐ろしいことに、私は小学校 4年頃まで、学校で定期的に DDT を振りかけられていた。いくら何でも、ダニやシラミのたかっている子なんていなかったのに、終戦直後の措置が廃止されずにずっと継続していたもののようだ。

月に 1度ぐらいの割で、白衣を着た保健所の職員が学校に来て、全校児童に DDT 散布をするのである。まず噴霧器の先を首筋に入れてプシュプシュとやる。子どもたちは無邪気なモノで 「ひゃあ、気持ちいい!」 なんて喜んだりする。さらに、ロジンバッグのお化けみたいなもので頭にバホバホとふられる。髪の毛が真っ白になる。

今そんなことをしたら、大問題になるが、当時は呑気なものだった。これも 4歳下の妹が小学校に入る頃にはようやく廃止になったので、彼女はこんな野蛮な風習を知らない。

さらに恐ろしいもので、東京生まれの人間は私より 3~4歳年上でも街中が馬糞と牛糞だらけという光景なんて見たことがないし、DDT をふられた記憶もないという。となると、当時の東京と酒田のタイムラグは 4年以上あったのだろう。だから私は感覚的には、ちょっと年上の都会育ちよりもずっと 「古い人間」 みたいなところがあると自覚している。

前置きがずいぶん長くなってしまったが、今日のテーマはバスタオルである。最近見つけた 「よそいきの妄想」 というブログに、バスタオルをめぐる攻防 という記事がある。以下にちょっとだけ引用する。

結婚して間もない夫婦が揉める最大最強の原因として、バスタオルをめぐる対立がある。即ち、バスタオルは毎日新しいものを使いたいという人と、バスタオルを洗うのは2-3日に1回でいいという人の対立である。

これは思いの外に大きな問題らしい。バスタオルを毎日洗って欲しい夫と、「2~3日に一度で十分じゃん」 と思っている妻の組み合わせだと、夫の方がことさらに 「だらしない妻」 という不満を抱いてしまいかねないようなのだ。

で、このバスタオルなのだが、まさに私が物心つく頃に、日本で、あるいは私の郷里で急速に普及し始めたように記憶している。小学校に入る頃までは、そんなもの使ったことがなかったのだが、急に生活に入り込んできて、あっという間にごく普通のものになってしまった。

ところが、東京の大学に入って一人暮らしを始めると、当時は銭湯である。私はあっという間にバスタオルを使うという習慣を捨ててしまった。元々、バスタオルって、後から入ってきた新参者みたいな気がしていたので、捨てるのには全然抵抗がなかった。日本男児は本来、手ぬぐい一本あれば風呂に入って、体を洗って、拭くことができるのだ。

というわけで、結婚してからしばらく、妻が当然のごとく私にバスタオルを押しつけてきたので、風呂上がりはなんとなくそれで体を拭いていたが、面倒なのでいつの間にか使わなくなった。だから現在、我が家では妻と娘たちだけがバスタオルを使っている。そして、2日に一度ぐらいの割で洗っているようだ。

私としては、今使ったばかりのフェイスタオルをもう一度よく洗って、体を拭く方がずっと清潔な気がしているので、今後もバスタオルを使おうという気にはなれないでいる。

ちなみにバスタオルを洗う頻度というのは、前にも書いたことがあるので、こちら を参照して頂きたいのだが、本家本元の西洋では、1週間に 1度ぐらい洗うというのが当たり前のようなのである。多分湿度が低いので、雑菌も繁殖しにくいのだと思うが。

それに、西洋人はお風呂の中ではタオルなんて使わないようなのだ。日本人はバスタブの外で洗うので、フェイスタオルを使ったりしているが、あれは本来、そういう目的のものではない。日本は古来より使い続けた手ぬぐい代わりに、それを使い始めたもののようなのだ。

タオルは本来、乾いた状態で濡れた手や顔や体を拭くためのもののようなのだ。だから、おしぼりというのも、西洋には本来ない。そして私はそうした文化とは別に、日本人は手ぬぐい一本あれば風呂に入ってから出るまで、全部まかなえると思っている。

ところが近頃は、手ぬぐいというのがどちらかというと 「趣味のモノ」 になってしまったので、しかたなくその代替としてフェイスタオルを使っているだけのことなのである。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

|

« 桃の葉ローションを使わずにすんだ | トップページ | なしくずしのネット選挙解禁? »

比較文化・フォークロア」カテゴリの記事

コメント


直接関係の無い話なのですが

森鴎外が独逸に留学していた頃
下宿した部屋には蛇口のある手洗いがあるのみでバスタブなどありませんから入浴はかないません
そのため鴎外は毎日、そこで手ぬぐい(多分持参した日本手ぬぐい?)をよく湿し身体を洗い入浴の代わりとし、洗顔し、最後に手ぬぐいをよく絞って身体を拭いたそうです
まあ、これが、昔の日本人の感覚でしょう

これに較べれば、バスタオルって、気持ちはいいが、贅沢すぎますよね


投稿: alex99 | 2009/09/10 03:20

男女でバスタオルへの考え方は違うでしょうね。私は大判のバスタオル派です。贅沢とも思えますが、今日のような晴天にお洗濯するなら洗剤は少量で済みますし、感覚的な幸福感も大切です。
気がつくと連れ合いはフェイスタオル派のようです。今我が家の洗濯機ではバスタオルがグルグル回っています。sun

投稿: keicoco | 2009/09/10 09:19

alex さん:

お久しぶりです。
(「お帰りなさい」 の方が適切かもしれませんが ^^;)

>そのため鴎外は毎日、そこで手ぬぐい(多分持参した日本手ぬぐい?)をよく湿し身体を洗い入浴の代わりとし、洗顔し、最後に手ぬぐいをよく絞って身体を拭いたそうです
>まあ、これが、昔の日本人の感覚でしょう

そうですね。
日本人が夏以外でも毎日風呂に入るようになったのは、いつ頃からでしょうね。

投稿: tak | 2009/09/10 09:51

keicoco さん:

>男女でバスタオルへの考え方は違うでしょうね。私は大判のバスタオル派です。贅沢とも思えますが、今日のような晴天にお洗濯するなら洗剤は少量で済みますし、感覚的な幸福感も大切です。

この 「感覚的な幸福感」 というのがくせ者ですね。

「その程度のことで、バスタオルなんて面倒なモノを導入しなくても」 とみるか、
「バスタオル程度で、こんなに幸福な気持ちになれるのなら」 とみるか。

うちの妻と娘たちは断然後者のようで、keicoco さんと同じスタンスですね。

投稿: tak | 2009/09/10 09:55


 私はtakさんよりも随分と若い筈なんですが(昭和41年生まれ)バスタオルが我が家に導入されたのは小学校の高学年ぐらいになってからでしたね。
 県営の集合住宅に住んでおりましたが、当時は浴室はないのが普通でしたのでもっぱら銭湯利用。洗面器に石鹸とタオルだけを入れて風呂敷で包んで通っていました。

 当時、夏場などは大きな金だらいを使って行水なんかもしてましたね。

投稿: きんめ | 2009/09/10 11:29

バスタオルですか。あまり気にしなかったのですが、濡れた体を拭くというより、腰に巻いて冷蔵庫の前に直行、そして、グビッと最近では発泡酒のほうがおいしく感じるようになった喉を潤しつつ・・・。

子供が小さい頃、ズタボロのバスタオル(生まれてまもなく使い始めたやつ)が無いとグズッて寝れない状態があったのを思い出した。なんでか、そのバスタオルが無いと寝れなかったようです。

バスタオル、洗濯は3日スパンすぐらいで良いと思ってます。

投稿: やっ | 2009/09/10 21:31

きんめ さん:

>私はtakさんよりも随分と若い筈なんですが(昭和41年生まれ)バスタオルが我が家に導入されたのは小学校の高学年ぐらいになってからでしたね。

父が会社の風呂 (大浴場のある会社で、私もたまに恩恵にあずかってました) に入ってくる人だったので、我家の風呂文化は母の絶対的影響下にあり、その母が割と新しもの好きだったため、私もバスタオルを早くから押しつけられていました。

投稿: tak | 2009/09/10 22:46

やっ さん:

>濡れた体を拭くというより、腰に巻いて冷蔵庫の前に直行、そして、グビッと最近では発泡酒のほうがおいしく感じるようになった喉を潤しつつ・・・。

そういう用途の方が大きいかもしれませんね ^^;)

>子供が小さい頃、ズタボロのバスタオル(生まれてまもなく使い始めたやつ)が無いとグズッて寝れない状態があったのを思い出した。なんでか、そのバスタオルが無いと寝れなかったようです。

ウチの娘たちにも、そういうアイテムがありました。確かに。
あの感触って、根元的安心感をもたらすんでしょうね。

投稿: tak | 2009/09/10 22:49

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

投稿: 履歴書のフォーマット | 2012/05/27 12:07

履歴書のフォーマット さん:

別に来なくていいです。

あなたの商売用サイトへのリンクは削除しときましたので、よろしく。

投稿: tak | 2012/05/27 15:40

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/42004/46162880

この記事へのトラックバック一覧です: バスタオルを巡る冒険:

« 桃の葉ローションを使わずにすんだ | トップページ | なしくずしのネット選挙解禁? »