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2009/09/19

『唯一郎句集』 レビュー #62

あっという間にまた週末。恒例の 『唯一郎句集』 のレビューである。前回は早春の句だったのに、もう初夏の句になってしまった。

『海紅』 という雑誌に載った句を集めた章なのだが、この頃、唯一郎は寡作になっていたのだろうか。それとも、多く作っていてもそれほど雑誌に投稿しなかったのだろうか。

何しろ、句帳を持たずに俳句は作り捨てみたいな人だったらしいので、後世に残るのはこの 『唯一郎句集』 に載せられた作品しかない。だから、順を追ってレビューしていくしかないのである。

とりあえず、今日は 3句。

あはれ鮎釣りの股間へ朝の川霧が吹きあげて來る

風流なようで、ちょっと滑稽味を感じさせるような句である。唯一郎は時々こんなような味わいの句を作る。

滑稽味はあるけれど、やはり風流である。情景描写的でいて、身体的実感もある。不思議な句である。

夏山の霧に祈る隠行の男まなこきたなし

不思議な句といえば、これもまたずいぶん不思議である。

庄内は山岳信仰の本場で、羽黒山などは山伏の本拠地みたいなところだ。で、こう言ってはなんだが、山伏の中にもずいぶん怪しげなのはいたのである。

夏山の霧の中でひっそりと行をしている男の、眼差しが妙に生臭かったりもするのである。前の句よりもさらに身体性が重い句である。

谷川の一つ岩しぶきにぬれてせきれいを翔ばし

前の 2句とは対照的に、きれいに風流が決まっている。谷川の中の一つ岩に激しいしぶきがかかり、そこに止まっていたセキレイが急に飛び立つ。

セキレイの飛ぶのが見えるのは、ほんの一瞬である。飛び去った後は、しぶきに濡れる一つ岩が残るのみ。

本日はこれぎり。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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