« 『唯一郎句集』 レビュー #109 | トップページ | 転ばぬ先の杖 »

2010/03/07

『唯一郎句集』 レビュー #110

今日レビューするのは 「露明氏を迎えて 四句」 と題された四句。ところが、この露明氏というのはどういう人なのだかわからない。多分俳句の同人だと思うが、句の中に露明氏はまったく登場しない。

そのあたりが唯一郎の句の唯一郎らしいところなのだろう。ということで、レビューである。

  露明氏を迎えて 四句

ものの芽萌えいづるけさ畑中の風

畑の土の中から、そして畑の周囲の木の枝から、いろいろな芽が萌えいづる季節。

畑に吹く風もさわやかである。「萌えいづる」 という言葉がある割に、句自体はクールである。唯一郎らしいところである。

蓬伸びひかりあまねきくらき

ヨモギの伸びている辺り、「ひかりあまねき」 に 「くらき」 と、連体形を 2度重ねていて、そして目的格の名詞が来ないというのが、なかなか変則的だ。唯一郎は、連体形の投げっぱなしという手法を時々使う。

「ひかりあまねき」 というのは、阿弥陀の無礙光を連想させることばだが、その直後に 「くらき」 という対照的な形容詞が続く。そして何が暗いのかは示されていない。

ちょっと屈折した思いの感じられる句だ。

児をよばん六月松風の音きこゆるに

前の句とは対照的に、良き家庭人としての唯一郎の屈託のない心から出てきた句だ。

唯一郎は子どもに対すると、本当に控えめだが真っ直ぐな愛情を表出する。

春の鰯を焼くしづかなる母のよろこびよろし

子どもに対するほどではないが、母に対しても唯一郎はまっすぐな愛情を表現する人である。妻に対してはどこか距離を置いているのと対照的だ。

春の鰯を焼く母の素朴にも嬉しそうな表情が思い浮かぶ。

本字はこれまで。

|

« 『唯一郎句集』 レビュー #109 | トップページ | 転ばぬ先の杖 »

唯一郎句集 レビュー」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/42004/47749133

この記事へのトラックバック一覧です: 『唯一郎句集』 レビュー #110:

« 『唯一郎句集』 レビュー #109 | トップページ | 転ばぬ先の杖 »