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2010/04/06

盗むほどの名文って?

先週金曜日、カーラジオで TBS ラジオを聞いていると、「あなたがこれまで盗んだ名文を教えてください」 という企画があった。「盗んだ」 という穏やかならぬ動詞が使ってあるのは、この番組に登場する竹内政明氏 (読売新聞のコラム 「編集手帳」 執筆者) が 『名文どろぼう』 というタイトルの本を出されたことを受けている。

この中で、串田孫一氏のエッセイ 「感傷組曲」 にあるという言葉が紹介された。「人は屋上にあがると、ほとんどの人が下を見る。なぜ空をみあげないのだろうか。限りなく広い空が目の前に広がっているのに」 (上記ページからの孫引き) という文である。

私は串田孫一氏の本は好きだが、これにはちょっと違和感を覚えた。「屋上に上がったら、普通、まず下を見るだろ」 と思ったのである。

空は地上から見ようが屋上から見ようが、距離感に違いはない。屋上から見上げたところで、新鮮な視点が得られるわけではない。しかし、屋上から下を見ると、いつもとは違った光景が見える。新鮮なのだ。だったら、普通、下を見るだろ。

まあ、確かに屋上から空を見ると、ビルで切り取られた狭い空ではなく、どこまでも広がった空が見える。しかし、地上でも周りに高い建物のないところで見上げれば同じような空が見える。別に屋上である必要はない。

高いところに昇るのは、いつもとは違った視点から世間を眺めると新鮮だからということがある。せっかく高いところに昇ったんだから、下を見るのが人情というものだろうと思うのである。串田先生には悪いけど。

屋上、とくに高層ビルの屋上から下を見ると、世間がちっぽけに見える。そして人生の大抵のことは些細なことのように思われる。「限りなく広い空」 を見上げた時と同じぐらい豊かな気持ちになれないこともない。

ただ、屋上でゆったりと寝っ転がって空を見上げたら、とてもいい気持ちになれるだろう。そのまま眠ってしまいたいほどだ。だから、「屋上から空を見たい」 という気持ちも、わからないではない。だけど、やっぱり下も見ないと意味ないよね。

ところで、讀賣新聞 「編集手帳」 のキャッチフレーズは、「五百字で世相を斬る」 というんだそうだが、私は文章で何かを 「斬る」 というのはあまり好きじゃない。時々、腹に据えかねて 「斬る」 調の文章を書いてしまうこともあるが、後ですかっとすることはあまりない。

かなり前にあるところで、このブログが 「世の矛盾を爽快に斬りまくるブログ」 なんて紹介されたことがあって、私としては戸惑ってしまった。そんな風に思われているとしたら、私の至らなさ故である。この辺の思いに関しては、3年近く前に "そりゃ、「斬る」 方が楽さ" というタイトルで書いたことがある。

話は元に戻るが、うぅん、文って 「盗む」 ものなんだろうか? 「斬る」 よりも違和感なんだが。

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コメント

ネット時代の今、「名文」なんて高雅なコンセプトは,消えたものと思っていました(笑)

"そりゃ、「斬る」 方が楽さ" を読ませていただいた「ケツの穴が小さい」(笑)alex99です

私はどうしてもtak-shonai さんの様な境地には至れないようです
俗人の世界と、宗教的な世界は分けて考えてもいいのではないでしょうか?
俗人の世界で,禅の境地を云々しても、霞を食って生きていけるわけでもありません
それに例え政治的に無力な個人が,個人的な悟りの境地に至っても,それは最大多数の最大の幸福と言う社会的な命題には、ほとんどなんのインパクトもないでしょう

ジャーナリズム・マスメディアの存在意義も体制・権力に対するアンチテーゼ・批判にあるはずです
確かに私も自分のブログで、質の低い内容ながら、「斬る」ことで自己満足を得ている部分はありますが、斬ることを否定されては、ブログを閉じなければ(笑)

私としては、 "そりゃ、「斬らない」 方が楽さ",と申し上げたい

むやみに斬りかかって,申し訳ありません(笑)

投稿: alex99 | 2010/04/06 20:47

alex さん:

>確かに私も自分のブログで、質の低い内容ながら、「斬る」ことで自己満足を得ている部分はありますが、斬ることを否定されては、ブログを閉じなければ(笑)

alex さんは、自分の身も斬りつつというところがあるので (一方的に斬りまくるわけじゃない)、誠実でいらっしゃると思っております。

投稿: tak | 2010/04/06 22:30

その方は、地域でよほどの高層ビルに上がられたようで。
自分とこの会社では、周りのビルに、そこはかとなく視界を遮られてます。

やっぱ、見下ろして(見下して?)…。
「愚民ども」なんて、ポソッと。

投稿: 乙痴庵 | 2010/04/07 01:41

乙痴庵 さん:

>その方は、地域でよほどの高層ビルに上がられたようで。

まあ、昔の随筆ですからね。
高層ビルなんて、あまりなかったんでしょう (^o^)

投稿: tak | 2010/04/07 10:22

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