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2011/10/15

ウォール・ストリートで今起こっていること

ニューヨークで続いている "Occupy Wall Street" (ウォール・ストリートを占拠せよ) というムーブメントは、多分、先月頃から始まったんじゃないかという気がする。初めは 「アメリカ人がなんかやってるなあ」 と思っていたが、ここまで影響力が広がると見過ごしてはいられない。

ウォール・ストリートの公園に集結している 1,500人 (といわれている) の連中は、なかなかしぶとい。いろいろな支援の元に、食べ物や医療、エンタテインメントの提供まで整ってきているようで、今やちょっとしたコミュニティにまでなっている。ああ、私がニューヨークに住んでいたら、すぐにでも行ってみるんだがなあ。

これは日本では無粋にも 「ニューヨークの格差反対デモ」 なんて言われているようだが、本当にネーミング・センスがないなあ。そもそも 「格差反対」 という日本語は、英語に直訳しようがない。「格差」 を和英辞書で引くと、"difference" とか "class" とかいう訳語が出てくる。

このうち "difference" (差異) には反対しようがない。世界はみんな違っているからおもしろいのだ。Occupy Wall Street に参加している連中だって、多分そう思っているだろう。そう思われていない閉鎖的な社会では、「いじめ」 や 「差別」 が発生する。日本では時として、差異を 「悪」 とみる人がいるから、うっとうしいのである。

もう一つの訳語の  "class" (階級) にしても、今回のムーブメントがそれに正面切って反対しているというような気はしない。一部では 「階級の固定化によって、アメリカン・ドリームが実現されない社会になっていることが問題」 などとしたり顔で言う人もいるが、彼らが現在の硬直した階級を飛び越えて億万長者になりたがっているようにも見えない。

みんなが単純に薔薇色の夢を描いていた頃には、億万長者の生活も薔薇色に見えたんだろうが、今や、大金持ちも楽じゃないということを誰もが知ってしまった。

「あんたも、その 1%の富裕層の仲間入りをしたいのかい」 と聞いたら、ほとんどは 「いや、そんな境遇になって心の安まらない日々を送るのはごめんだね」 と答えるに違いない。「ごく普通の暮らしがしたいんだけど、それがままならないから不満なんだ」 と。

私としては、米国人の多くも、そろそろ 「市場原理」 に沿ってあくせくすることに疲れてきているんだと思う。「行きすぎた市場原理」 に反対しているのではなく、「それって、もういい加減にしないかい? だって、それによって本当に幸せになったやつなんて、見たことないもん」 ということなんじゃないかと思うのだ。

ミヒャエル・エンデは 「パン屋でパンを買う購入代金としてのお金と、株式取引所で扱われる資本としてのお金は、まったく異なった種類のお金である」 と言った。

ごくフツーの経済学では、どちらもお金に代わりはないのだが、今や、エンデの言葉は人々に実感として迫ってきている。ウォール・ストリートに集結している人々も、「パンを買う金と、株を買う金は違う」 という思いを持っているのだと思う。

「それは経済学的に間違っている」 というなら、その経済学に限界があるのだ。

世界はそろそろ、お金の性格の違いをきちんと問い直し、新たな社会に脱皮する準備を開始しなければならない。そうでないと、人々の心が硬直してしまう。今、ウォール・ストリートで起こっていることは、根元的にはそういうことなんだと、私は捉えている。

先進国は軒並み経済が停滞してしまっているが、それも当然だ。そもそも、地球はこれ以上の大きな物質的成長を受け入れるキャパがない。今ニューヨークで起こっていることは、「中東の春」 とは次元がかなり違う。

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コメント

"I sincerely believe... that banking establishments are more dangerous
than standing armies."

                         - Thomas Jefferson, 1816


銀行屋は軍隊より危険らしいです(-_-)

投稿: Adrienne | 2011/10/15 20:17

Adrienne さん:

>銀行屋は軍隊より危険らしいです(-_-)

亡き山本夏彦翁は、「銀行は金貸し、証券屋は山師」 と言って、完璧に職業差別をしていました (^o^)

投稿: tak | 2011/10/15 20:46

仰るとおり、日本的な文脈でいうところの「格差社会」とか「行き過ぎた市場主義」に対する抗議ではないですよね。
基本的には金融機関に対する怒りに端を発しているわけです。危機の際にはオレたちの税金から多大な公的支援を受けるクセに、ちょっと景気が良くなるとべらぼうな利益を上げて、べらぼうなボーナスを内輪でふるまい、そしてまた世の中にリスクを撒き散らす - そんなのが許せるか、と。実際には、単に格差解消を叫んでいる人もいるだろうし、金融機関に限った問題ではないけれども、不合理・不公平なシステム、ずるい人たちへの怒りというのがコトの本質ではないでしょうか。

日本の場合、最近だと金融機関よりもより相似形がはっきりしているのは電力会社だと思います。私は、いずれも市場原理の行き過ぎどころか、ちゃんとリスクを経済的にシステムに織り込んでいないことが問題だと思っています。

金融システムがメルトダウンした時のコスト、あるいはそれを防ぐためのコストをあらかじめ平常時に拠出させるべきではないか、と。バーゼル委員会の自己資本規制なんかはある程度同じような効果がありますが、その程度の規制や従来の預金保険機構では、スケール的にも起こりうるカタストロフィーの広範さでも不十分であることが分かってきたのではないかと思う次第です。金融機関は嫌がるでしょうけれども、なんらかの形で危機のコストを事前に負担させるのがフェアなやり方だと思います。原子力発電もまたしかり。

その結果経済成長が低迷すると言われそうですが、この失われた20年の低成長やこれからの原発事故処理を考えれば、その方がマシだと思わざるを得ません。

投稿: きっしー | 2011/10/16 19:18

きっしー さん:

>不合理・不公平なシステム、ずるい人たちへの怒りというのがコトの本質ではないでしょうか。

まさに、「なんだかヘンなシステム」 と、その 「ヘンなシステム」 に乗ってアンフェアな利益をむさぼる人への怒り、そして 「あの連中みたいにするのが、利益を得る最も効率的なビジネスモデルだなんて、おかしいじゃないか?」 というプロテストですね。

私も 「あの連中みたいにする」 のが、短期的な利益を生むことにはなっても、長期的な人類の利益につながるとは到底思えないのです。

>その結果経済成長が低迷すると言われそうですが、この失われた20年の低成長やこれからの原発事故処理を考えれば、その方がマシだと思わざるを得ません。

ある意味、そのトライアルが新たな社会のビジョンを生むきっかけになるかもしれないとさえ思います。

どうせ中国やロシア、それに続く途上国もおっつけ飽和状態になって、世界的低成長の時代が来るんですから。

その時、パイの奪い合いで戦争になるよりも、低成長でもやっていける、今よりマシなシェアリングのモデルを作っておく方がずっと建設的です。

投稿: tak | 2011/10/16 20:30

連投すみません。「格差」については色々と思うところがあるんで(笑)。

自らがいわゆる中産階級だと思う人が「昔と比べて暮らしにくくなったよなあ」というのは、先進国ではどこでも共通だと思います。
しかし、これは格差という観点から考えれば、むしろ先進国と後進国の(それぞれの中間所得層の間の)格差が縮小していることによるものじゃないでしょうか。日本人に生まれら一生インド人や中国人よりも高い生活水準が当たり前という考えは間違っていると言わざるを得ないですよね。モノやサービスの取引に関する地理的な制約が減少する中、コモディティ的な労働に対する所得が収斂するのは当たり前です。

そういう規模の問題が背景にあることに目をつむり、小手先の規制や税制で国内の「格差」を無理矢理圧縮しようとしても、国全体で地盤沈下するだけです。よく派遣労働の規制緩和が格差社会の元凶であるといわれますが、逆に規制緩和をやっていなかったら企業はその分正社員の雇用を維持・拡大していたでしょうか。していたら、より多くの分野で日本企業は競争力を失い、雇用が消えていったでしょう。より現実的には、企業は雇用を抑制する(派遣の仕事すらない状況になる)、あるいは海外に拠点を移す(同じく、国内の雇用は増えない)といった傾向をより強めていたでしょう。ちなみに、正社員の解雇をもっとし易くすべきだという議論に関しては、すべきだけれども十分条件ではないと思います。最終的には生産性を高めて競争力を強めるしかないです。

こういうプレッシャーをみんなうすうす感じているから、それが市場原理への反発という形に現れているように思います。しかし、この原理ってやつは、それを採用するとかやめるというようなものではないわけです。局所的には「スローライフ」を選択できる人もいるでしょうけれども、全員が全面的にやることは難しい。ギリシャの現状がそれを示しているように思われます(笑)。
この最後の部分がちょっとtakさんのビジョンと違う部分かな。

投稿: きっしー | 2011/10/16 21:00

きっしー さん:

>こういうプレッシャーをみんなうすうす感じているから、それが市場原理への反発という形に現れているように思います。

まさにその通り。

>しかし、この原理ってやつは、それを採用するとかやめるというようなものではないわけです。

意識的に採用するとかしないとかいう類のことではないですね。

ある意味、自然に落ち着くところに落ち着くということになるんでしょう。
(というか、常に変化の途上ということもできるんですが)

>局所的には「スローライフ」を選択できる人もいるでしょうけれども、全員が全面的にやることは難しい。ギリシャの現状がそれを示しているように思われます(笑)。

当然ながら、急には到底無理です。
好きで選んだスローライフと、経済的に規定されての強制的なスローライフでは、意味合いが全然違いますし。

21世紀の前半は、次のシステムへの移行に向けての、かなりしんどい試行錯誤が繰り返されるだろうと思っています。

下手すると、残ったパイを奪い合っての戦争になりかねない。
地下資源(原子力を含む)に頼った発電がメジャーであるという状態が続くと、残ったオイルの奪い合いで、かなり危ないレベルまで行くと思っています。

というわけで、思想のレベルだけでも、次のシステムに平和裏に移行するモデルを先行的に構築しなければならないと思っているわけです。

一種類のモデルだけでは心許ないので、いろいろと出てくる方がいいでしょう。

それから突然ですが、今夜、父が亡くなったので、当分バタバタして、まともなレスが付けられなくなると思います。

ご了承ください。

投稿: tak | 2011/10/16 23:28

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