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2011/11/05

「ゴールド」 と 「ゴールデン」 の違い

やや旧聞になってしまうが、今シーズンはイチローがゴールド・グラブ賞を取れなかったのだそうだ。このニュース、初めはやや混乱していて、「ゴールデン・グラブ賞を取れなかった」 などと報道されたりもしていたが、アメリカのメイジャー・リーグで授与されるのは、正式名称が "Rawlings Gold Glove Award" で、日本での通称は 「ゴールド・グラブ賞」 である。

"Rawling" というのはグローブのメーカーで、この賞のスポンサー企業の名前である。この会社が 1957年に、ゴールド・グラブ賞を創設したのだという。

一方、日本のプロ野球にも同様の賞があるが、名称は 「ゴールデン・グラブ賞」 である。この違いのせいで、当初の報道がちょっと混乱してしまったのだろう。日本の野球界に慣れている記者ほど、つい 「ゴールデン・グラブ賞」 なんて原稿を作っちゃったのかもしれない。

「ゴールデン・グラブ賞」 にもまたスポンサーがいて、正式名称は 「三井ゴールデン・グラブ賞」 というらしい。 「ゴールド・グラブ」 と 「ゴールデン・グラブ」 の違いはあるが、賞品はどちらも同じ、金色に輝くグローブだ。デザインからして、日本のはもろに米国のコピーである。

Wikipedia の Rawlings Gold Glove Award の項の説明によると、この賞品はこんなふうなものだ。

The award was created from a glove made from gold lamé-tanned leather and affixed to a walnut base.

(日本語訳) この賞は金ラメでなめしたレザーで作ったグローブがクルミの木の台に取り付けられている。

日本のゴールデン・グラブ賞も、見たところ同じようなつくりなのだろうと思われる。

ここで、「ゴールド」 と 「ゴールデン」 はどう違うんだという疑問を抱いてしまうというのが、私の哀しき性である。どうしても言葉の上での些細な違いが気になって仕方がないのだ。我ながら面倒な性分である。

Goo 辞書で調べると次のようになる。

Gold

━━[名]
1 [U]
(1) 金(記号:Au);黄金, 金塊
(2) ((集合的))金製品, (特に)金貨, (多量の)金銭, 富
2 [U]金本位(制)
3 [U]貴重なもの, すぐれた[すばらしい]もの, 美しいもの
4 [C][U]金色, こがね色.
5 [U]金めっき, 金箔(きんぱく), 金糸, 金モール, 金粉, 金絵の具.
6 [C](的の)金的.
7 ((略式))金メダル(gold medal)
━━[形]
1 金製の
2 金の(ような).
3 金色の
4 金貨の;金本位(制)の
5 〈レコードなどが〉100万枚売れた, ゴールドディスクの

Golden

[形]
1 金色の, 黄金色の, 金のように輝く, やまぶき色の
2 金(製)の(▼この意味では通例 gold を用いる);金を含む[産する];金貨[金銭]の.
3 ((限定))貴重な;すぐれた, すばらしい;絶好の〈機会など〉;重要な.
4 活力に満ちた;〈時・時代などが〉幸福な, 繁栄している
5 才能と運に恵まれた;成功疑いなしの
6 〈声などが〉豊かで柔らかい.
7 富を生み出す;((俗))裕福な.

こうして比較してみても両者の違いは微妙だが、わずかに "gold" は即物的に 「金そのもの」 というニュアンスが強く、"golden"はやや比喩的な意味合い (「金のような」 「金色の」 「金のように価値がある」  といったニュアンス) が強いと思われる。例えば 「黄金時代」 などは 「金でできた時代」 じゃないから "golden age" であって、"gold age" ではない。

これはグローブという、金で作るにはちょっと特殊なアイテムではなく、時計で考えるとよりしっくりくるだろう。金時計は普通、"gold watch" といい、"Golden watch" とはあまり聞かない。

Answers.com というサイトに、"What is the difference between a gold watch and a golden watch?" (ゴールド・ウォッチとゴールデン・ウォッチの違いは?) というページがあり、そこには以下のように明確に書かれている。

A gold watch is made of gold ,on the other hand golden watch is gold in color.

(ゴールド・ウォッチは金でできていて、一方、ゴールデン・ウォッチは色が金色ということ)

ということは、「金でなめした皮のグローブ」 が贈られるのだから、やはり本家米国の 「ゴールド・グラブ賞」 の方が、正しい言葉の使い方ということになる。"Golden" の語義の 「2 金(製)の(▼この意味では通例 gold を用いる)」 という説明をみても明らかだ。「ゴールデン・グラブ」 だと、なんだかまがい物というイメージになってしまうのが切ない。

ただこれは、賞品そのものに焦点を当てた場合の話である。米国の 「ゴールド・グラブ賞」 は、スポンサーがグローブメーカーだけに、賞品そのものが大きな意味をもつが、翻って日本の場合は、「守備の名人」 という事実を 「黄金のグローブという比喩的なイメージ」 に昇華させたものと受け取ればいいかもしれない。

ただ、日本の賞は守備技術そのものを称賛するのだと考えるとしても、その賞品が米国のコピーではなあと、やはりちょっと切ない気がする。

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コメント

その「ゴールデン・グラブ」のほうは
↓のページに制作過程のムービーがあってなかなか興味深いです。

http://www.mitsuipr.com/mgg/outline.html

受賞した選手の使用しているグラブのモデルを再現しているところが、芸が細かいですね。

投稿: reccoa | 2011/11/05 20:15

reccoa さん:

ありがとうございます。

ご指摘のページは記事本文からもリンクしてありますが、Firefox ではビデオが再生されず、無視していました。

改めて IE で再生してみました。

ビデオでは 「金でなめした革」とは言わず、「金色でなめした革」 と言っていますね。

やっぱり 「ゴールデン・グラブ」 なのかなあ?

投稿: tak | 2011/11/05 22:43

リンクはすでになされていましたか、
確認もせず失礼しました。
ビデオの再生に夢中になってしまい肝心なことを書くのを忘れていました。
ゴールデングラブ賞の設立される前には、同様の趣旨の賞としてダイヤモンドグラブ賞というのがありました。
これはダイヤモンドのように輝く栄光というのと野球の内野のベース配置をダイヤモンドというのにかけてあったものと思われます。言葉としてはこちらの方のセンスが好きですが、「ダイヤモンドの」または「ダイヤモンド色の?」グラブは想像できませんね。
あと、「米国でゴールデン“グローブ”賞」といえばハリウッドの賞ですね

投稿: reccoa | 2011/11/06 02:42

reccoa さん:

そういえば、「ダイヤモンドグラブ賞」 というのがありましたね。

本家の 「ゴールド・グラブ」 の上を行く意気込みだったのかもしれませんが、賞品の作りようがなくて、「ゴールデン・グラブ」 になったんでしょうか。

>「米国でゴールデン“グローブ”賞」といえばハリウッドの賞ですね

あのぐらいの大きさだったら、奮発して 「ゴールド・グローブ」 でもいけるかもしれませんね (^o^)

投稿: tak | 2011/11/06 11:36

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