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2012/03/08

「真逆」 という言葉を巡る冒険

今朝、Twitter で次のように tweet した (参照)。

よく 「真逆」 と言うけど、個人的にはこの言葉に馴染めない。フツーに 「逆」 でいいじゃん。そもそも 「真逆以外の逆」 って、どんな逆だろうと思う。

試しに Goo 辞書 (デジタル大辞泉) で調べてみると、次のように出てきた。(参照

真逆 [名・形動] 《「逆」を強調した俗語》 まったく逆であること。正反対なこと。また、そのさま。「前作とは性格が ― の人物を演じる」

ふぅむ、「俗語」 扱いとはいえ、ちゃんと見出し語にあったんだ。もしかして、そんな言葉は無視されているかと思った。

私の tweet に対して、次のような反応があった。

S太郎さんより (参照

逆に言うと、的なマクラが 「逆」 じゃないケースでも濫用された挙句 「逆」 の価値が下がってしまい、本来の 「逆」 を表現する必要がうまれた、、なんて事はありませんよね?

おかげんさんより (参照

「逆様」 に対して 「真っ逆様」、「反対」 に対して 「正反対」 という表現があるので、「逆」 に対しても同様の表現が存在してもおかしくないと思います。「真逆」 という表現が妥当かどうかは別問題ですが…

私の tweet は下手すると、「何がいけないんだ、気取るんじゃねえ、馬鹿野郎!」 みたいな、ちょっとした反感を買っちゃうんじゃないかという気もしていたのだけれど、このようにとてもクールな反応が 2つもあって、私はある意味、感動してしまったのである。

S太郎さんの "「逆」 じゃないケースでも濫用された挙句 「逆」 の価値が下がってしまい" という指摘の内容は、私も確かに日頃感じている。「逆に言うとさあ……」 なんて言うから、どんなアンチテーゼが提出されるのかと思って期待していると、ちっとも逆じゃない見当はずれだったりして、がくっとくることがある。

「逆」 という言葉がインフレを起こした結果、本来のインパクトがなくなってしまったので、「真逆」 というかなりパワフルな言葉でデノミを行ったのだと捉えることは可能だし、確かにそんな側面があると思う。

一方、おかげんさんの指摘は、私も 「それを言われたら弱いよなあ」 と思っていたことである。「真逆」 という言葉に違和感を覚える私は、会話の中では 「正反対」 という言葉をよく使うのだが、これにしても、「だったら 『正反対以外の反対』 なんてあるの?」 と言われたら、答えるのが難しい。

ただ、うじうじと言わせてもらうとすれば、「正反対」 というのは、数学的、論理的にきっちりと 180度反対のことを強調する場合に使われるんじゃないかという気がする。単に 「反対方向」 などと言った場合は、「真北に対する真南」 でなくても、「北向きに対する南向き」 ぐらいで済ませられる。

「正反対」 というとても数学的、論理的な言い方に対して 「真逆」 は、「感覚的にざっくりと正反対っぽい」 (正確さやヘビーな論理的裏付けを要求しない) というような場合に多用されている気がする。

まさに、上述の 「大辞泉』 にある 「前作とは性格が真逆の人物を演じる」 という用例がいいサンプルだ。性格というものが数学的かつ論理的にきっちり 180度反対というのは不可能だろうから、「性格が正反対」 というよりも、ざっくりと感覚的に 「性格が真逆」 と言いたくなるというのもわかる。

で、「感覚的にざっくりと正反対っぽい」 ということなら、そもそもの話、単なる 「逆」 でいいじゃんということになるのだが、そこはそれ、S太郎さんのご指摘にあるように、単なる 「逆」 はインフレで価値が下がってしまっているので、「真逆」 という言葉のデノミでインパクトを保持する必要が出てきたと、そんな感じなのかもしれない。

ちなみにおかげんさんの指摘にある 「逆様」 という言葉は、相当早い時期からインフレを起こしていたようで、「真っ逆様」 ではないケースでも、大体 100度以上ぐらいの角度がついてさえいれば、「逆様」 と表現されてもあまり違和感がない。それで上下がすっかり置き換わった状態を表現するために、「真っ逆様」 という言葉が生まれたのだろう。

とすれば、「逆/真逆」 も、「逆様/真っ逆様」 と同様のプロセスを、今辿りつつあるのかもしれない。

ただ、私が 「真逆」 という言葉に違和感を覚えるのは、こうした背景や意味合いよりも、語感やニュアンスに対してというのが大きいような気がする。この言葉は、言った当人の勝手な主観が強く出過ぎているというか、押しつけがましいというか、要するに、言葉としての美しさを感じないのだよね。

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コメント

「正反対」は音読み、「真っ逆様」は訓読み。だけど「まぎゃく」は音+訓の湯桶読みなんですね。そのせいかなぁ。でも湯桶読みでも別に違和感を持たないものもありますか……。

投稿: 山辺響 | 2012/03/08 14:26

山辺響 さん:

>だけど「まぎゃく」は音+訓の湯桶読みなんですね。そのせいかなぁ。

あ、その点を見過ごしていました。
そのせいも、あるような気がしますね。すべてではないですが。

投稿: tak | 2012/03/08 18:32

あ、間違えました。訓+音の湯桶読み、ですね(汗)

投稿: 山辺響 | 2012/03/08 18:48

山辺響 さん:

こっちも全然気付きませんでした (^o^)

投稿: tak | 2012/03/08 20:31

真には、真偽という二値的イメージと、真ん中という中心的イメージがあります。
逆というと、なんらかの基準にたいして左右等分で反対向いたイメージですが、真逆というと、基準も含めて反対向いたようで、等分でなくなった分すわりが悪いのではないかと、愚考しましたがいかがでしょうか。

投稿: vagari | 2012/03/09 00:51

「まぎゃく」。私も単純に音が美しくないと思います。思ったうえで、言葉あそびの感覚でおもしろがって使います。こういう輩がいるから気持ちの悪い言葉が氾濫してしまうんですよね。

こんな記事を見つけました。ご参考まで。
http://photohappy.blog54.fc2.com/blog-entry-619.html

投稿: emi | 2012/03/09 01:40

「真上」「真下」といった言葉などは、数学的論理的な方向を表現する言葉として納得できます。
ざっくりとした「上」、鉛直方向の「真上」といった具合に。
確かに「真逆」の違和感は、takさんの仰るように語感やニュアンスの問題なのかもしれません。
「真上」を「マジョウ」と発音するような。

投稿: S太郎 | 2012/03/09 11:20

「言葉は生き物」という言い方が広まって以来、センスのある人が使い始めた新語も、センスのない人が使い始めたものも同列に扱われがちになったような気がします。
ヘンだなと思う表現に出くわしても、判断停止して「言葉は生き物だし…」で終わらせてしまうか、悪乗りして流行らせてしまったり。いくつか思い当たる節があります。

投稿: きっしー | 2012/03/09 19:26

vagari さん:

>真逆というと、基準も含めて反対向いたようで、等分でなくなった分すわりが悪いのではないかと、愚考しましたがいかがでしょうか。

うぅん、恐縮ながら、おっしゃる意味が今イチよくわかりません。

基準が反対向いても、等分は等分じゃないかと思ったり。

投稿: tak | 2012/03/09 22:02

emi さん:

ご紹介のページに行ってみました。

いろいろ興味深い指摘はありましたが、「真逆」が「まさか」だなんて、まさか! と思った次第です (^o^)

「真逆様」なら「まさかさま」ですが。

投稿: tak | 2012/03/09 22:06

S太郎 さん:

>「真上」を「マジョウ」と発音するような。

「最中」と「さいちゅう」の喩えを思い出してしまいました (^o^)

投稿: tak | 2012/03/09 22:07

きっしー さん:

>ヘンだなと思う表現に出くわしても、判断停止して「言葉は生き物だし…」で終わらせてしまうか、悪乗りして流行らせてしまったり。

気味の悪い生き物もいるってことですね ^^;)

投稿: tak | 2012/03/09 22:10

真正面
真一文字
真四角
真っ向
真っ最中
真人間

投稿: tj | 2014/05/20 16:38

tj さん:

真っ赤な嘘
真夏、真冬 (真春、真秋はない)
真綿で首を絞める
マイカ、マダラ、マガレイ、マイワシ、マカジキ、マサバ
マガモ、マガン、
真鯉、真木(槙)、真昆布
石川や浜の真砂(まさご)は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ
真心
まないた(真菜板)
真っ暗闇
真っ盛り、真っ先、まっさら、まっ芯
真っ平、真っ昼間
まっ、そのぅ……^^;)

投稿: tak | 2014/05/20 17:20

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