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2012/03/18

今日は 「精霊の日」 なんだそうだ

今日、3月 18日は 「精霊の日」 (「しょうりょうのひ」 と読む) なんだそうだ。そりゃ一体何じゃ? と思って調べたら、柿本人麻呂、小野小町、和泉式部の 3人の祥月命日が 3月 18日なのだそうで、それで 「精霊の日」 なんだそうである。うぅむ、わかったような、わからんような。

今日が柿本人麻呂の命日として、「人麻呂忌」 とされているというのは、どこかで読んだ憶えがあるが、小野小町の命日として 「小町忌」 ということにもなっているとは、今日初めて知った。「式部忌」 というのがないというのは、和泉式部にちょっと気の毒かもしれない。

3人の命日が今日だというのは、いくらなんでも眉に唾して受け取らなければならない。この 3人とも正確な生没年は不詳とされているのに、どうして命日だけは記録されているのだと疑うことに気付きさえすれば、それは頷ける。念のため Wikpedia で生没年を調べると、次のようになっている。

柿本人麻呂: 斉明天皇 6年 (660年) 頃 - 養老 4年 (720年) 頃
小野小町  : 天長 2年(825年) - 昌泰 3年 (900年) の頃
和泉式部  : 天元元年 (978年) 頃 - 没年不詳

こんな怪しい話なのに、揃いも揃って 3月 18日が祥月命日と伝えられている。ただ、これを単に 「怪しい」 と笑い飛ばしてはいけない。いや、いけないというより、もったいない。どうみても怪しいとはいえ、こうした伝説を保持してきたことには、きっと理由がある。その背景というものを考察してみると、きっとおもしろいに違いない。

というわけでちょっとググってみたら、「柳田国男の 『目一つ五郎考』 によると、3月18日は、源義経、柿本人麻呂、小野小町、和泉式部といった古くに恨みをのんで亡くなった怨霊たちの命日とかんがえられているそうです」 という記述が見つかった (参照)。

残念ながら 『目一つ五郎考』 というのは持っておらず、青空文庫にもないようなので、にわかには原典にあたってみることができないが、ほかにも同様の記述をしたページもあるので、とりあえずはこれを信じておくことにしよう。

それにしても、そうか、菅原道真と並ぶ御霊の代表格、源義経の命日も 3月 18日だったのか。……と、一瞬信じそうになって、念のため Wikipedia にあたってみたら、どうやら 文治 5年 (1189年) 閏 4月 30日というのが、本当のところらしい。あぶない、あぶない。

他には山名宗全の命日も文明 5年(1473年) 3月 18日と伝えられている。これは一応、まともに信じてもよさそうだが、源義経、柿本人麻呂、小野小町、和泉式部の命日が 3月 18日というのは、ことごとく怪しい。怪しいが、そのようにまことしやかに伝えられているというのは、ますますもって興味深い。

柿本人麻呂については、梅原猛氏が 『水底の歌』 で人麻呂死刑説を展開しており、まさに非業の最期を遂げたという見方がある。「いろは歌」 の作者が柿本人麻呂で、そのメッセージは七文字目をつなげて 「とかなくてしす」 (咎なくて死す) となることで読み取れるなんていうびっくり説は、結構有名になっている。

小野小町は絶世の美女でありながら、不遇のうちに生涯を閉じたと伝えられ、恋多き奔放な女性だったとされる和泉式部も、幸せな人生だったとは思われない。二人とも、自分の内に秘めた熱情を人生のうちで存分に発揮し切れたとは思われないところがあり、その悲劇性が後世に伝えられる要因ともなっているように思われる。

ちなみに山名宗全にしても、応仁の乱の責任をとって切腹したが死にきれず、後になって非業の最期を遂げたと言われているので、怨霊っぽさがないとはいえない。しかし、それはちょっと歴史が下りすぎるので、除外しておこう。

確かに、上述 4人の人物は怨霊っぽさが漂う。源義経の御霊としてのすごさは群を抜いているが、群を抜きすぎているために、柿本人麻呂、小野小町、和泉式部の 3人とは一緒にしてもらえないのだろう。

とはいえ、それがどうして 「3月 18日が命日」 という伝説と結びつくのだろう……と考えて、それはすぐに想像がついた。この日は彼岸の入りの日なのである。なるほど、なるほど。多分、これらの人たちの命日は 「3月 18日」 というより、新暦採用以前には、彼岸の入りの日に重ねられて伝えられてきたのだ。それで 「精霊の日」 なのだ。

だからこそ、旧暦での命日がはっきりしすぎている人ではなく、よくわからない、つまりどうとでも言える 3人が、「精霊の日」 のシンボルとなっているのだ。きっと。

それにしても、「精霊の日」 の 3人が、揃いも揃って和歌の名人だったというのは、和歌というのは、かなりスピリチャルなものだったのだなあと、改めて思った。もう一つのブログ 「和歌ログ」 を運営するものとして、ちょっと身が引き締まった。

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