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2012/05/15

「熱い/暑い」 と 「厚い」 のアクセントの違い

最近、というより、かなり前から気になっているアクセントの混乱がある。それは 「熱い心」 とか 「熱い戦い」 という場合の 「熱い」 のアクセントである。これを平板で言う人がかなり多いのだ。アナウンサーの中にも平板で言う人が珍しくない。

当然ながら 「熱い」 の本来のアクセントは、中高型、つまり 真ん中の 「つ」 にある。語源としては 「暑い」 と同じなのだから、考えるまでもなくそうなる。(関西アクセントだと 「あ」 にあるようだが、ここではいわゆる 「標準語」 を基準とする) 「暑い日」 や 「暑い夏」 という場合の 「暑い」 を平板型アクセントで言ったら、かなりの違和感になる。

ちなみに 「熱い鉄板」 は、大抵の人がちゃんと 「つ」 にアクセントをおいて発音する。これを平板で言ったら、意味が変わってしまう。 「厚い鉄板」 に聞こえてしまうからだ。ところが、「熱い心」 や 「熱い戦い」 はなぜか、多くの人が 「厚い心」 とか 「厚い戦い」 のアクセントで言う。

これを平板で言ってしまう人というのは、発音する時に頭の中に漢字が浮かんでいないんじゃないかと思う。多分平仮名で考えているのだ。それを漢字にさせたら、「厚い心」 とか 「厚い戦い」 (「熱い戦い」 は 「熱戦」 なんだから 「厚い戦い」 のはずはないのだが) とか書いてしまう人が何割かいると思う。

つまり、まともに意味を考えずに、単なる慣用句として使っているのだ。きっと。

翻って、庄内弁で考えると、「熱い/暑い」 と 「厚い」 は、明確に区別される。なにしろ、別の単語になるのだ。庄内弁では 「熱い/暑い」 は 「あちぇ」 あるいは 「あっちぇ」 であり、「厚い」 は 「あっづ」 である。「あっちぇ鉄板」 と 「あっづ鉄板」 は、間違いようがない。

共通語においても、「熱い」 は極まると 「あっちっち!」 なんて言うが、「厚い」 はいくら強調してもそんな言い方には決してならない。「くそ暑い」 とは言うが、「くそ厚い」 とは言わない。そして 「分厚い」 とは言うが 「ぶ暑い」 とは言わない。

もしかして、古代においては 「熱い/暑い」 と 「厚い」 は、意味だけでなく発音まで微妙に違っていたのかもしれないと、私は思っている。

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言葉」カテゴリの記事

コメント

コメリ(ホームセンター)のテレビ、ラジオCM

会社名を平板で発音しています。
(因みに新潟在住です)
周囲の人は”コ”にアクセントを置いて発音しているが、それは間違いですよ言わんばかりに
平板で連呼されるから、頭にきてコメリでは買い物をしないことにしている。

”ギター”ピアノ”など業界人がわざと平板で発音していたが現在はアナウンサーまでが
平板で発音している。
大人が、あるいはアナウンサーまでが若者に迎合していうように見える。
日本全国”北関東”化しているのか。
この地域は雨、飴、箸、橋のアクセントが曖昧ですよね。

駄文失礼しました。

投稿: coolman | 2012/05/16 08:30

coolman さん:

私もつい最近知ったばかりなのですが、コメリは、元々は 「米利商店」 だったらしいので、由来からすると、どうやら平板が自然のようです。

念のため Wikipedia で調べたら、

社名は、現会長の父が米穀商を創業した際に、米屋の「米」と捧家の屋号「利右衛門」の「利」を組み合わせたことによる

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%A1%E3%83%AA

とありました。「へぇ!」 です。

ちなみに、インターネットの世界では 「CM では 『メ』 にアクセントを置いている」 と書いている人が多いようですが、どういう耳をしてるんでしょうかね。

どう聞いても平板ですよね。

明確なアクセントがない、というか、アクセント感覚がデタラメなのは、北関東から東北太平洋側の宮城あたりまで広がっています。

仙台出身の妻は、「柿」 と 「牡蠣」 を区別して発音するのに四苦八苦しています。

投稿: tak | 2012/05/16 09:28

猛暑のときに「ぶ暑い」を使うと、とても実感がこもっていいかもしれない…(笑)

「ギター」「ピアノ」はどうなんでしょう。

「ギター」は、以前は「ギ」にアクセントがあるのが普通だったように思いますが、最近は「ター」の方になっているように思います。何か英語の発音に近くて、その方が違和感がないような気もする。

「ピアノ」に関しては、(30年以上前ですが習っていた頃の印象としては)平板に読むのが楽器名としてのピアノ、「ピ」にアクセントが来るのが、強弱記号としてのピアノ(フォルテの反対語としてのp)、だと思っていました(英語のpianoはaにアクセントが来るのかな)。

投稿: 山辺響 | 2012/05/16 10:08

試しに「熱い戦い」と「アツい戦い」でググってみましたが、「熱い戦い」が9,040,000 件に対し「アツい戦い」が21,800,000 件でした。
ポジティブな熱血イメージを表現する際の「熱い」が「アツい」に置き換わった経緯はちょっと気になりますね。

投稿: S太郎 | 2012/05/16 11:02

山辺響 さん:

>猛暑のときに「ぶ暑い」を使うと、とても実感がこもっていいかもしれない…(笑)

実感がこもりすぎて、口に出しただけで暑苦しくなりそうなので、使わないでおきます ^^;)

「ギター」「ピアノ」はどうなんでしょう。

ちょっと試しに口に出してみたら、私の場合はギターは 「ギ」 にアクセント置きますが、ピアノは平板ですね。

しかし、庄内弁モードの時は、ピアノは 「ア」 にアクセント置いています。
(まるで別の単語みたいです)

アクセントだけ取れば、庄内弁の方が英語に近いようです ^^;)

投稿: tak | 2012/05/16 13:08

S太郎 さん:

>試しに「熱い戦い」と「アツい戦い」でググってみましたが、「熱い戦い」が9,040,000 件に対し「アツい戦い」が21,800,000 件でした。

驚愕の事実です!

そうか、あれってもはや、「熱戦」 じゃなくて、あくまでも 「アツい戦い」 だったのか!

本文で 「多分平仮名で考えているのだ」 と書きましたが、実はそれどころじゃなく、カタカナで考えていたんですね!

…… と驚いて、少し気を取り直し、「""」 を付けてググり直したら、
(「""」 を付けないと、一つながりの言い方でない場合も含まれてしまうので)

”熱い戦い”   1,240,000件

"アツい戦い"   122,000件

でした。少しホッとしました。

でも、10%近くは 「熱戦」 じゃなく、カタカナで考えてるんですね。
あるいは、「アツい」 は、わざわざ手間をかけて変換しているだろうことを考慮すれば、10%以上かも。

>ポジティブな熱血イメージを表現する際の「熱い」が「アツい」に置き換わった経緯はちょっと気になりますね。

その通り。とても気になります。

投稿: tak | 2012/05/16 13:13

S太郎さん:

追伸です。

"熱い心" は 352,000件

"アツい心" は 54,600件 でした。

これはまた、すごい!

投稿: tak | 2012/05/16 13:39

いやいや、「""」 つけずに検索してしまいました。失礼をいたしました^^
しかし「アツい」という表現は相当定着しているようですね。

投稿: S太郎 | 2012/05/16 17:36

ふ~~ん
すばらしい~~
そんな言葉のアクセントについて
考えたこともなかった。
ただ、
私の子供の頃、ジャージーという布の生地名を知った。
それは、ジャーにアクセントがついた。
私が、35才ころ、
関西に住んでいたが、ジャージーでできたスポーツ服が
「ジャージ」とよばれていた。
「ジャージ」は、平坦に発音されていて
驚いたものです。

コメリが
米利だったんですね?
それじゃ、仕方が無い。平坦に発音いたしましょう~うふふ

投稿: tokiko | 2012/05/21 13:13

tokiko さん:

「ジャージ」は既に日本語です。
「カルタ」が日本語であるように (^o^)

投稿: tak | 2012/05/21 20:27

NHKのアクセント辞典に「暑い/熱い」と「厚い/篤い」のアクセントは明確に異なる記述になっているのに、NHKのアナウンサーまで平板に発音するのが気になってしかたありません。
「厚い戦い」などと発音するのを聞く度に「何センチや!」と突っ込みを入れています。

投稿: SKG | 2013/03/30 09:37

SKG さん:

最近では、物体が熱い場合は「暑い」と同じアクセント、物体ではないもの(試合とか戦いとか心とか)が熱い場合は平板型アクセントという、まことに妙なことになりつつあるようで、平板型の場合は漢字ではなく 「アツい」と表記すべきという結論に、私の中では達しつつあります ^^;)

投稿: tak | 2013/03/30 16:06

初めまして。庄内氏の意見に同意です。
先日のリオ五輪の開会式の中継でもNHKの佐々木彩キャスターが「これから17日間の厚い戦いが繰り広げられます」言っていた。だけど後に柔道優勝のブラジル選手の紹介は「地元の熱い声援を受けて」と正しい発音。不安定この上ない。

TBSラジオの「明日へのエール言葉に乗せて」では西村幸太郎が、神田のカレーの話で、「厚い戦い」と二回も言った。ま、間違いながら彼は安定しているけど。
これは育った場所に関わる発音の問題なのだろうか、今、言葉に関する筆頭の関心事項だ。

投稿: かぼねこ | 2016/09/27 11:16

かぼねこ さん:

「厚い戦い」 は OK でも 「厚い声援」は NG という感覚なのかも知れず、形容される名詞によってアクセントが変わるのかもしれません。「熱い声援」 は何度言っても 「厚い声援」 にはならないじゃないかとも思われ、そうだとしたら、「不安定」というわけでもなさそうです。

投稿: tak | 2016/09/28 00:18

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