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2012/07/18

原発関連の聴取会をめぐる冒険

将来の原発比率をどうするかという 「聴取会」 とやらで、中部電力の社員 (幹部社員らしい) が、「福島原発の事故で放射能の直接的な影響で亡くなった人は 1人もいません。今後 5年、10年たってもこの状況は変わらないと考えています」 と発言したとやらで、結構な問題になっている (参照)。

まあ、確かに 「直接的な影響」 で亡くなった人はいない。しかし、それを電力会社の人間が言うのは、いくら 「個人的な発言」 としても、あまりにも短慮である。そんなもの、反発されて逆効果になるに決まっているではないか。そんなことも読めないようでは、電力会社もいよいよ焼きが回ってしまったとしか思われない。

それに、あえて冷静な議論をすれば、「直接的な影響」 で亡くなった人はいないが、間接的な影響で亡くなった人は、かなり多数にのぼるはずなのである。

私は今年 3月 7日に 「原発事故では本当に一人も死んでいないのか?」 という記事で、次のように書いている。

「震災で福島県の避難区域内で餓死した疑いの強い人が少なくとも 5人いる」 と、あの NHK が報じた。

(中略)

瓦礫の下から助けを呼ぶ声が聞こえていたのに、原発事故による避難指示が出たので、救助することができなかったのが残念だと述懐する消防団員は、一人や二人ではない。さらに、避難先の不自由な暮らしのうちに病気で亡くなった人もいると報告されている。

この電力会社幹部社員以外でも、「原発事故での死亡者は一人もいない」 というのは、某池田信夫氏を初めとして何人もいるが、それは詭弁というほかない。この世は複雑系なのである。複雑系の世の中を幼稚園児的ウルトラ単純論で切り抜けようなんて、大人のすることじゃない。

そもそも、こうした聴取会に当事者である電力会社の社員が出席して意見を述べること自体が問題である。食中毒で死者まで出ている牛の生レバーをどうしようかという問題に、ユッケを看板メニューとする焼き肉屋のオヤジが出てきているようなものだ。

この聴取会のテーマというのは、将来の原発比率を どうするかということなのだが、政府が提示した(1)0% (2)15% (3)20~25%の 3案に対し、抽選で選ばれた一般国民が意見を述べるという形で行われたというのが、ちょっと唖然である。

ところが、こうした唖然茫然な三択を前提にしてしまったせいで、、「0%にすべし」 という政府の思惑を裏切った声が圧倒的という状況になっているのは、ものすごい皮肉である。普段はあんなにも中間的意見の好きな日本国民が、この問題に限っては、はっきりした意思表示をしているというのも、ある意味画期的なことではないか。

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コメント

(1)0% (2)15% (3)20~25%の 3案
の支持者がそれぞれ約3分の1になるように
参加者を「公平に抽選した」と言うことが
そもそもの原因だったと言うことだそうです。

それなら原子力村の代表みたいな人を発言者
にするしかですよね。

と言うことはそう言う配分にするようにした
張本人がこの問題の責任者だと思います。

投稿: 蝠樂亭 | 2012/07/18 23:24

蝠樂亭 さん:

(3) 支持者の選出は、原子力村に頼るしかなかったということですかね。

投稿: tak | 2012/07/19 00:49

 私が聞いた発言と少し違います。電力会社の社員は原発事故で死者がいない。ではなく、放射能による死者はいない。と発言しているのではないでしょうか?池田信夫氏も同様です。
  この違いを切り分けるのはお嫌いでしょうか?私は切り分けるのが科学的だと思うのですが。池田信夫氏は放射能への過剰な恐怖が原発関連死を大きくすると警鐘を鳴らしているのだと思います。池田氏の知見が正しいかどうか私にはわかりませんが、日本には、日本人が古来から愛した有馬温泉や三朝温泉、他にも沢山の放射能泉があります。私は温泉の近くの人に癌が多い、短命だという話は聞いたことがありません。ローマは放射線量が多い町だそうで、テルミニ駅周辺で、0.25マイクロシーベルト、スペイン広場付近で0.45マイクロシーベルトだと、行って測った日本人がネットに書いていました。新聞にのっている日本各地の放射線量で、スペイン広場より高いのは福島市だけです。勿論、原発付近には測りにも行けないほど高い地域もあるでしょうが、ローマが他のイタリアの地域より癌が多いということは無いようです。
  私も放射能は怖いものだと思いますが、正しく怖がる必要があり、公聴会で素人の意見をいくら聞いても意味はなく、あんな会は百害あって一利なしだと思っています。
  しかし、長崎大学でずっと放射能の人体への影響を研究し、今回の事故後、福島へ行った医師も御用学者の一言で、意見を聞こうとしない人々のヒステリックな態度を見ると、彼らの云うとおりにすると、被災者はより大きな苦しみを与えられるような気がします。
  広島や長崎では今でも被爆者と認定された人が死亡すると原爆の犠牲者として、慰霊碑に名前が刻まれるそうです。90過ぎて死んだ人もです。犠牲者は多ければ多いほど良いと思っているようです。
  今回も電力会社の幹部が10年後も20年後も死者は出ないと発言すると、うそ付け、と叫ぶ声が出ていましたが、死者が出たほうが都合が良いのでしょうか。きっと、20年後癌による死者がでると、勝ち誇ったように犠牲者だという人たちでしょう。日本人の3分の一は癌で死にます。私の父も叔父も従兄も癌で死にました。癌で死んだからといって、疫学的調査をして他地域と比較しなければ、原発の犠牲者とはいえないはずですが、疫学的な調査を信じない人たちには、御用学者、で終わるのでしょうか。
  私は日本人がみんなもっと冷静になってから結論を出すべきだと思います。上杉隆のような嘘つきが消えてから、結論を出せばよいのではないでしょうか。

投稿: basara10 | 2012/07/20 04:26

すみません。すこし、場違いな文章になってしましました。takさんはちゃんと放射能による死者はいない。と認識している方でしたね。お詫びいたします。

投稿: basara10 | 2012/07/20 04:31

basara10 さん:

事実は「原発事故が直接的原因となって死んだ人はいないけれど、それが間接的原因となって命を縮めた人はいくらでもいる」ということですね。

池田信夫氏にしても、ご自身のブログで、

「いまだに放射能で死んだ人は1人もいないし、致死量の放射線を浴びた人もいない」

と書いたそばから、

「ところが今回の事故では1人も死んでいないのに、東京電力に関する経営・財務調査委員会は……」

と、自分で混乱しておいでです。

http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51758565.html

投稿: tak | 2012/07/20 13:15

ご参考まで。

ikedanob (池田信夫)

政府事故調も国会事故調も「事故前」のことしか調査してない。事故では1人も死んでないが、「事故後」の避難で600人死んだ。このまま放置すると後者の被害はまだまだ増え、それは政府が止めることができる。

7月23日 13時58分 HootSuiteから

http://twitter.com/ikedanob/status/227266417144246272

ikedanob (池田信夫)

【訂正】 福島事故で130人が死ぬという予測が正しいとしても、TWhあたり失われる余命は30年。これは石炭火力の138年よりはるかに小さく、原発は相対的には安全な発電手段だ、とRichterはコメントしている。 ow.ly/cq1ia

7月23日 13時3分 HootSuiteから
http://twitter.com/ikedanob/status/227252515366899712

投稿: 杉山寛 | 2012/07/24 02:23

そうかぁ、杉山寛さんが紹介されている池田信夫さんのツイート(非公開ですが)からすると、池田信夫さんは、もう事故が終わった(「事故後」という言い方から察する限り)と思っていらっしゃるんですね…。

まぁ野田首相も収束宣言しましたもんね。

投稿: 山辺響 | 2012/07/24 13:33

杉山寛 さん:

池田氏は、死者の数を問題にして、原発に伴うその他諸々の問題にはほとんど言及せず、その限定的な思考の結果として、原発は相対的に安全と言いたい人なのだなと、私は思っています。

投稿: tak | 2012/07/24 15:17

山辺響 さん:

池田氏は、「事故後」の死者に関しては、主として政府の不手際によるものであり、原発事故とは切り離して考えるべきものだとおっしゃりたいようですね。

投稿: tak | 2012/07/24 15:20

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