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2012/08/25

ヴィトンの価値が変容した今

6~6年前は、電車に乗ればそんなに混雑していなくても、1両に 4人や 5人以上のヴィトンのバッグをぶら下げた女性が必ずいた。しかし今、このブランドのモノグラムを目にすることがめっきり減ってしまった。

私が「ヴィトンの価値が変容する日」 という記事を書いたのは、日本におけるヴィトン最盛期をちょっと過ぎたあたりの、4年半前のことである。この記事の中で、私は次のように書いている。

ヴィトンの最重要市場は、日本から中国に移る。中国から大挙して押し寄せるツアー客が皆、あの特徴的なモノグラムのバッグをぶら下げて、辺り構わぬ大声で会話しながら街を歩き、電車に乗り込んでくるだろう。

その時、ヴィトンの価値の二面性は変容するかもしれない。それは日本の消費者にとって、「最も大衆的な高級品」 というより、「あまりにも大衆的過ぎる高級品」 になってしまう可能性がある。既に今でもその萌芽は見え隠れしているが。

この予言は見事に当たった。今、ヴィトンは確実に、日本よりも中国でのマーケティングに力を入れている。中国からの観光客がヴィトンのバッグをぶら下げている割合は、確実に増えている。

日本経済のバブルの最盛期、本国のフランス人は、日本人観光客の多くがヴィトンをぶら下げているのをみてうんざりしたであろうことが想像される。そして今、日本人がそれと似た感慨を追体験しようとしている。

ルイ・ヴィトンを展開する LVMH グループの売上げは今、日本での低調さをよそに順調に拡大している。2011年の売上げは、前年比 16%増の 23,659百万ユ-ロ (約2兆6,271億円) で、この売上げ拡大の最大の要因は、アジア・マーケットの拡大だ。

同グループのウェブページによると、日本を含むアジア・マーケットでの販売比率は、全体の 35%を占め、世界でも最大市場になっている。さらに詳しく見ると、日本の比率は 8%で、日本を除くアジアは 27%になっている。

日本での売上げの比率は、2006年の 13%から徐々に下降している。日本国内での売上高も、最盛期の 1500億円から半減しているという説もある。もっとも、これも無理もない。日本の家庭には、既に 2兆円以上分のヴィトンのバッグが眠っていると見られる。これ以上買ってもしょうがないではないか。

ましてやヴィトンは、前述のように 「大衆的すぎる高級品」 になってきている。5~6年前、私はつくばの田舎道の光景を見て、「若いねーちゃんたち、ジャージ着てヴィトンぶら下げて、どうすんの?」 と思っていた。そして今、はっきり言ってその段階も越え、「なんとも扱いに困る高級品」 になってしまっている。

それはもう、昔からヴィトンの方としては 「高級品として大切に売っていく」 という、京都の老舗的なマーケティングというよりは、「売れるところでどんどん売って、儲かりさえすればいい」 という姿勢だったしね。塩化ビニールにプリントしただけのバッグを、あんなに法外な値段で売るという戦略からして、それはミエミエだ。

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マーケティング・仕事」カテゴリの記事

コメント

わたしは、最近までヴィトンは、皮製品とばかり思っていて、事実を知ったときおどろきました(ここ1~2年の間に知りました。)。あの塩ビはすごいです。皮ばりの重厚感を何年たっても(?)あらわしていますから。

わたしは、同じ値段出すなら職人さんの手のこもったほうがいいな。海でも大丈夫というコンセプトで開発されたものと記憶しています(昔見たテレビ番組情報)。

塩ビは大量生産にはうってつけですね。
機能を重視するならヴィトンはかなり優れているカモ

投稿: BEKAO | 2012/08/31 12:17

BEKAO さん:

>あの塩ビはすごいです。皮ばりの重厚感を何年たっても(?)あらわしていますから。

塩ビは塩ビです。

そういうことなら、コピー商品をほめてあげてください。同じような重厚さを、ずっと安い値段で実現しているのですから。

投稿: tak | 2012/08/31 13:08

ずいぶん前の記事に通りすがりですみません。
ちょっと差別的過ぎる記事だなあと感じたのでコメントさせていただきます。
どうして中国人が購入したらヴィトンの価値が下がるのでしょうか?中国人が黄色人種だからですか?人種的に劣った人々だからですか?
追体験とおっしゃいますが、日本でヴィトンが大流行したことによって、ヴィトンのブランド価値は下がりましたか?
フランス本国で、「日本人が買ってるからもうヴィトンはかっこわるい」なんてことになったという話は聞きません。むしろ日本大流行以降に、フランス本国でもヴィトンの人気が高まったと言う話なら聞きます。

それにフランス人は、うんざりするどころか自国のブランドが海外で大人気であることを誇らしく思っているのではないでしょうか。
日本人だって「中国でソニー製のテレビが人気」と聞いて悪い気はしないでしょう。
もちろん、団体の観光客がフランスのヴィトン店で傍若無人にふるまっていたらうんざりしたでしょうが、それは単なる旅行マナーの問題です。
相手がどの国、どの人種であろうと、自国の製品を価値あるものと感じてもらえるのは嬉しいことです。
そしてその製品が海外で人気が高まれば高まる程、その製品の価値はむしろ上がっていくのが当たり前でしょう。

それにヴィトンは決して、「高級品だから」という理由のみで今の日本での地位を築いたわけではないでしょう。
日本女性達の多くが、フランスの一ブランドの商品を「とても可愛い」と感じた、これが大きかったと思います。どんなに「高級品」「流行品」でも魅力的なデザインでなければ、やがて飽きられるだけです。
わたしは根強い人気の理由は、ヴィトンのデザインの中に「和」があるからだと思います。
モノグラムの模様は日本の家紋、ダミエの模様は市松模様。
ヴィトンのデザインにそもそも日本女性の琴線に触れる「かわいい」のエッセンスがあったからです。

投稿: ringo | 2013/01/13 14:57

ringo さん:

>どうして中国人が購入したらヴィトンの価値が下がるのでしょうか?中国人が黄色人種だからですか?人種的に劣った人々だからですか?

そんなことは一言も言っていないでしょ。
私が問題にしているのは、人種ではなく 「クラス (階級)」です。

白人の中にもロウアー・クラスはあり、黄色人種の中にもアッパー・クラスがあります。

で、こんなことを言うと、また金持ちか貧乏かで人間を差別するのかと言われそうですが、私は客観的なヒエラルキーを言っているだけで、差別意識は毛頭ありませんので、よろしく。

一般的には、ディフュージョン (普及・拡散) が行きすぎると、ステイタスは下がるものです。それだけの話です。

>それにフランス人は、うんざりするどころか自国のブランドが海外で大人気であることを誇らしく思っているのではないでしょうか。

「どうして日本人はそんなに ヴィトンが好きなのか?」 と怪訝がられたことは何度もありますが、単純に誇らしいと言われたことは、少なくとも私は一度もありません。

>日本人だって「中国でソニー製のテレビが人気」と聞いて悪い気はしないでしょう。

ソニーとヴィトンでは商品カテゴリーが違うので、一概に言えるものではありません。

とくにフランスのようなクラス意識の強い国では、ことはそんなに単純ではありません。

>日本女性達の多くが、フランスの一ブランドの商品を「とても可愛い」と感じた、これが大きかったと思います。どんなに「高級品」「流行品」でも魅力的なデザインでなければ、やがて飽きられるだけです。

恐縮ながら、飽きられていますね。現実に。
(ヴィトンの名誉のために付け加えれば、どんなに魅力的なデザインでも、飽きられることはあるものです)

>わたしは根強い人気の理由は、ヴィトンのデザインの中に「和」があるからだと思います。
>モノグラムの模様は日本の家紋、ダミエの模様は市松模様。

ならば、もっとオリジナルの家紋や市松模様を大切にすべきでは?
(これはあなた個人に対してではなく、平均的日本女性に言っています)

投稿: tak | 2013/01/13 21:24

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