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2013/06/19

「アレルギー」 の語源と、世間が本当にググらないことについて

最近、知人と四方山話をしていて花粉症の話題になった時、彼は 「そういえば、知ってる? 『アレルギー』 って言葉は、ドイツ語で 『よくわからない』 という意味なんだってね」 と言いだした。

それを聞いて私は直観的に、「どこで聞いたか知らないけど、それは確実にガセネタだと思うよ」 と言った。「アレルギー」 は確かにドイツ語だろうが、「よくわからない」 なんていい加減な言葉を医学用語にするのは、あの理屈っぽいドイツ人のメンタリティからしてあり得ない。

「いやぁ、確かにそう聞いたけどなあ」 といぶかる知人を尻目に、私はさっさとポケットから iPhone を取り出し、「アレルギー 語源」 のキーワードでググってみた。答えはすぐに出たが、いつものように、念のため複数サイトで確認した (参照 1 参照 2参照 3)。

手短に言うと、「アレルギー」 という言葉は、1904年に Clemens Peter Freiherr von Pirquet というオーストリアの科学者/小児科医が、ギリシャ語の "allos" (奇妙な) と "ergon" (反応) という 2つの単語を組み合わせて、ドイツ語風にアレンジした造語なんだそうだ。

上述の 「参照 2」 のリンク先は、なんだかもっともらしいサイトだが、造語した人物の名を 「C・V・ピルケール」 としている。しかし "Pirquet" はどう読んでも 「ピルケール」 にはならないだろうなあ。それに恐縮ながら、ちょっと悪文が目立つ。

いずれにしても、オーストリア人がギリシャ語を組み合わせてドイツ語風に造語したというのが、ちょっと奥深いところである。もしかしたら、「奇妙な反応」 という意味が伝言ゲーム的に広まっている間に混乱して、「よくわからない」 なんてことになってしまったのかもしれない。

ちなみにこれと似た話で、かなり広く信じられている 「カンガルー」 が 「わからない」 という意味のアボリジニ語だなんていう説も、実はガセネタなのである (参照 1参照 2)。人に聞いたことを安直に信じすぎることについて、私は先月 12日の 「20歳を 「はたち」 というわけ」 という記事でも 「困ってしまう」 と書いている。

知人は、「いやぁ、スマホってすごいね。すぐに調べられるんだもんね」 と感心していたが、すごいのはスマホではなく、「軽い気持ちでググってみる」 という姿勢である。その証拠に、自分だってスマホのユーザーのくせに、都市伝説をあっさり信じてしまっているではないか。

もう 4年前になるが、「世間がそれほどググらないのは」 という記事を書いた。インターネットの普及で、ちょっとググリさえすれば大抵のことは調べがつく世の中になったというのに、世間の人はググるより先に人に聞いて済ませたがる。ところが人に聞いて得た知見の多くは不正確なものでしかない。「アレルギー」 や 「はたち」 の語源のように。

私ぐらいに何かというとすぐにググってみたがるのは、案外珍しいみたいで、「どうしてそんなに調べたがるの?」 なんて聞かれることがある。「だって、わからないままだと気持ち悪いじゃん」 と答えるのだが、その気になればすぐに調べられる道具をもっているくせに、調べずに済ませていられることの方が、私には信じられない。

まあ、とはいっても、私だって興味のないことまでググるなんてこともない。ということはつまり、世間の興味の幅って、ものすごく狭いのであって、私は特別 「物好き」 ということなのかもしれない。

【6月 23日 追記】

Clark さんから、ギリシャ語の "allos" を 「奇妙な」 と訳すのは無理があるとのご指摘のコメントをいただいた。

私はギリシャ語がさっぱりわからないのに、この肝腎の部分をググらずに済ませていたことを恥ずかしく思い、改めてギリシャ語/英語の対訳サービスでググってみた。並のサイトでは "allos" に対応する英単語は見つからないと言ってくるが、こちらのサービスで、"allos" に対応する英語は "another" であると出てきた。

となると、元々の意味は 「もう一つの (別な) 反応」 ということになる。ものすごく意訳すると 「奇妙な反応」 ということになるかもしれないが、ここは慎ましく、「通常とは違った反応」 ということにしておく方がよさそうな気がする。

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コメント

私は、以前は、リビングのテーブルに辞書や事典を置いて、
TVや新聞を見ていて疑問に思った言葉などを調べるのに
しょっちゅうお世話になっていましたが
今では、MacBookがその代わりをつとめています。

最近、夫はそれをあてにして、「○○って何だ?」と
独り言の振りをして言うようになりました。

でも、ググるって便利だよなぁと実感しています。

投稿: さくら | 2013/06/19 19:35

辞書の活用は、さくらさんの仰るのと同じく、アタクシの家でもありました。

方や今は片手に端末で、辞書以外の(余計な)情報まで得ることができるようになり、最初に調べたかったことが何だったか忘れちゃったぃ、みたいなことがときどきあります。(大概酔ってますが…。)

最近の小学校の授業では、(調べたところに)付箋いっぱいの辞書を作ることがワークとなっている風潮があると聞きますが、調べることがステータスになっちゃってるんじゃないか、と、「テレビ見ながら辞書ひいた」オッチャンとしては、なんか回り道をしているんじゃないかという、変な感覚が残りました。

さくらさん、横入り失礼いたしました。

投稿: 乙痴庵 | 2013/06/19 20:56

うーむ、私もよくググりますが、その結果は頭から信じないようにしてます。「多分、こういうことなのだろう。、もしかしたら違うかもしれない」といったスタンスです。

以前、私の仕事に関する技術的知見がどこまで正しく説明されているのだろうかという興味からググってみましたが、なんと90%が間違った解説でした。次の5%は間違ってはいないが自信なさそうな解説で、最後の5%がキッパリと正しく解説されているという状況でした。それでメシを食っている人(企業)が書いたページのみが正しい解説をしていたという結果でした。

Web上では間違った知識が一気に拡散してしまういう危険性を、常に意識しておかなければならないと思います。

投稿: ハマッコー | 2013/06/19 22:07

さくら さん:

紙の辞書の、薄いページを必死にめくりながら調べるより、ググる方が確かに速いですよね。

私は辞書でも、iPhone にインストールしたのを引くようになり、紙の辞書は 1年に 2~3回ぐらい、漢和辞書を引くぐらいのものです。

(漢和辞書は、iPhone にまだ入っていないもので ^^;)

投稿: tak | 2013/06/20 18:07

乙痴庵 さん:

>今は片手に端末で、辞書以外の(余計な)情報まで得ることができるようになり、最初に調べたかったことが何だったか忘れちゃったぃ、みたいなことがときどきあります。

それ、私もあります。どんどん余計な方に逸れて行ってしまって (^o^)

>最近の小学校の授業では、(調べたところに)付箋いっぱいの辞書を作ることがワークとなっている風潮があると聞きますが、

へえ、びっくりです。

何べん調べても忘れてしまう英単語なんかを、次に調べる時なんかは便利でしょうけど、付箋が増えすぎたら、かえって不便になったりして ^^;)

投稿: tak | 2013/06/20 18:12

ハマッコー さん:

>うーむ、私もよくググりますが、その結果は頭から信じないようにしてます。「多分、こういうことなのだろう。、もしかしたら違うかもしれない」といったスタンスです。

そうですね。正しいという保証はないです。

浸透圧の原理について、Wikipedia の説明も間違ってるらしいですから。

http://tak-shonai.cocolog-nifty.com/crack/2013/04/post-d364.html

>Web上では間違った知識が一気に拡散してしまういう危険性を、常に意識しておかなければならないと思います。

その通りですね。

かの池田信夫氏が 「今回の原発事故で死者は 1人も出ていない」 と堂々と書いて、政権党の政調会長までそれを信じてしまったり。

投稿: tak | 2013/06/20 18:19

webは間違った情報が多いというより、多様な意見や見方が容易に得られるという点が、自分は利点だと思ってます。言葉の用法など、間違いが慣用となっていく事も多いですし。

一方で豆知識や百科事典的な知識では便利ですが、それ以上の内容でwebを過信し過ぎる人とは最近会話に困ってしまう事が多いです^^;

投稿: clark | 2013/06/20 21:04

clark さん:

>一方で豆知識や百科事典的な知識では便利ですが、それ以上の内容でwebを過信し過ぎる人とは最近会話に困ってしまう事が多いです^^;

「アレルギーは 『よくわからない』という意味のドイツ語が語源」 と、ネットに書き込んでみたら、会話に困ってしまうことが続出するかもしれませんね ^^;)。

投稿: tak | 2013/06/21 10:23

単純に訂正しやすい間違いばかりなら良いのですが^^;

ちなみにallosはプレーンに「他の(other)」を意味する語なので、「正しいもの」と対置して「変わった」となる場合もありますが、一語で「奇妙な」と訳すのは少々怪しい気がします。
同じ「他の」を意味するheterosは「奇妙な」と訳す場合がありますが。

投稿: Clark | 2013/06/23 01:21

Clark さん:

>ちなみにallosはプレーンに「他の(other)」を意味する語なので、「正しいもの」と対置して「変わった」となる場合もありますが、一語で「奇妙な」と訳すのは少々怪しい気がします。

ほほう、そうでしたか。
ギリシャ語はさっぱりわからないのですが、この部分をしっかりほかで確認するのを怠っていました。お恥ずかしい。

改めて確認すると、"allos" の英訳は "another" と出てきました。

(翻訳サイト: http://www.kypros.org/cgi-bin/lexicon)

とすると、「別の反応」ということになりますね。

ご指摘、ありがとうございました。

投稿: tak | 2013/06/23 22:07

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