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2013/07/07

外来語への反発

「外国語の乱用で内容を理解できず、精神的苦痛を受けた」 として、「日本語を大切にする会」 世話人を名乗る 71歳の男性が NHK に 141万円の慰謝料を求める訴訟を、名古屋地裁に起こしたんだそうだ。(参照

どんな言葉が理解できないのかというと、「リスク」 「システム」 「トラブル」 「ケア」 などの言葉と、「BS コンシェルジュ」「スタジオパークからこんにちは」 「ほっとイブニング」 「Sportsプラス」 「Shibuya Deep A」 などの番組名だという。

だったら、「危険性」 「体系」 「困難」 「手当」 とか、「衛星放送よろず案内」 「放送室公園」 「暑い夜」 「運動足し算」 「渋谷の深A」 と言い換えればよくわかるのかといえば、少なくとも後ろの方の 3つは、ますますわからなくなる。ということは、元々意味なんてどうでもいいのだ。

一方、少なくとも 「システム」 は 「体系」 なんて言い換えるよりも、そのまま 「システム」 で通す方がいいような気がする。「システム」 がわからないという人なら、それ以上言い換えたとしても、結局のところ内容の理解はできないだろう。

訴訟を起こした人物は 「外国語の乱用」 と言っているようだが、上述の例の前の方の 4つは、「外来語」 として既に日本語の中に馴染んでいる言葉である。後ろの 4つでは、せいぜい 「コンシェルジュ」 が多少目新しいぐらいのものだ。

そもそも外来語がわからないなどと言ったら、野球もできない。「ストライク」 も 「ボール」 も 「ヒット」 も 「エラー」 も 「ホームラン」 も使えないことになる。この訴訟を起こした人が、もし野球放送を見て苦痛を覚えないなら、「他の外来語も少しは覚えましょうね」 と言ってあげればいいだろう。

もし彼が、「そんな興味のない分野の言葉を覚えるのは苦痛だ」 というなら、「興味がないなら、わからなくてもそんなに苦痛じゃないでしょ」 と言ってあげることになるだろう。「大抵の人は、興味のない分野はわからないままで、フツーに生きてますよ」 と。

興味のない分野で、無理に苦痛を感じて文句を言いたがるというのは、3年ちょっと前に "「ユニクロ嫌い」 を巡る冒険" で触れた人を思い出させる。私のユニクロ関連の記事について、こんなようなコメントを付けてくれた人だ。

私はいまだに一枚も買ったことのない者です。
何度か足を運びましたがどの商品も質が悪いのがすぐにわかりました。
(中略)
自分があんな洋服を買うのはとても惨めです。
買っている自分を友達に見られたくない。

ユニクロの服が嫌いなら、買わなければいいだけの話なのに、品質に見当違いの難癖を付けた上に、「買っている自分を友達に見られたくない」 なんて、妙にねじ曲がったことをおっしゃる。これでは、「本当は買いたいんじゃないの? もしかしたら、妙なコンプレックスに陥ってるんじゃないの?」 と言いたくなってしまうではないか。

今回の話も、本当はカタカナ言葉に興味がないではないのだが、なんとなくてらいがあって、妙に反発してみたくなる。そんなビミョーな感覚がにじみ出ているような気がしてしまうのは、私だけだろうか?

さらに訴訟を起こした 71歳の男性は、「若い世代は分かるかもしれないが、年配者は、アスリートとかコンプライアンスとか言われても分からない」 とおっしゃっている。いやいや、若い世代でも 「コンプライアンス」 を理解している人はそんなに多くないよ。

8年ちょっと前に書いた 「英語の乱れ?」 という記事で、私は "若者のかなり多くが 「ララバイ」 を 「バイバイ」 (さよなら) の洒落た言い方と思いこんでいるのに驚いた" と書いている。外来語がわからないのは高齢者ばかりではない。まあ、世の中全体がそんなものなのである。

全てきちんとわかれば、それに越したことはないが、わからなくても、取り立てて不都合はないという程度のものなのだ。それに、前述の番組名のように、わかるとかわからないとかいうことはどうでもいい、「単に雰囲気のもの」 というのも、ものすごく多いしね。

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言葉」カテゴリの記事

コメント

まあ、ヒマなんでしょうね。
現代社会では日常的に必要な概念でも、比較的新しいものにはしばしば1対1で対応する漢字やひらがなの「日本語」がないということくらい、誰でもわかることだろうし。
例えば、リスクを「危険性」と言い換えてしまうと、それは「問答無用で避けるべきもの」になってしまうので、本来の意味と異なってしまいます。きょうび、リスクと言う概念がわからないような人が大きくのさばっているとえらいことになるので、公共放送たるNHK(なんてものも、そもそも要らないと思うんですが)がこのジイさんの主張を受け入れたら大いに迷惑です。
takさんもしばしば述べておられるように、むしろカタカナの外来語と元々の外国語の間に大きなギャップがあることのほうが大きな問題で、こちらは遠慮なく文句を言い、ヒマな人は訴訟でもなんでもすれば良いんじゃないかと思います。

投稿: きっしー | 2013/07/08 06:48

記事の趣旨とはほとんどまったく関係ありませんが……

「衛星放送よろず案内」を断固支持します!(笑)

ちなみに、2年前からフランス語会話の教室に行っているのですが、フランス人講師に「コンシェルジュ」は(日本で最近使われているような意味では)通じませんでした。アパートの管理人とか門番の意味だそうです(辞書で調べると学校の用務員さんなんかも)。

投稿: 山辺響 | 2013/07/08 10:04

外来語が多くて“困惑”するなら、ある程度理解できますが、“精神的苦痛”を受け141万払えとなるとと、理解できません。

私なら、調べてそれでおわりにする。どの言語にも係わらず外来語は常に入ってくるのですから。

日本語を大切にすることは、外来語を拒否することではありません。

ただ、BSコンシェルジュは NHK も先走りしすぎましたね。

投稿: ハマッコー | 2013/07/08 13:25

「こっちは受信料を払って見てやってる客だぞ!」という気持ちもありそうですね。

投稿: emi | 2013/07/08 15:08

きっしー さん:

>まあ、ヒマなんでしょうね。

そこに尽きるかもしれませんね (^o^)

>むしろカタカナの外来語と元々の外国語の間に大きなギャップがあることのほうが大きな問題で、

そうなんですよね。
日本に何度も来ている外タレは、いきなり「署名しろ」と迫られることには慣れているみたいですが。

投稿: tak | 2013/07/08 17:48

山辺響 さん:

>「衛星放送よろず案内」を断固支持します!(笑)

ありがごうございます (^o^)

>ちなみに、2年前からフランス語会話の教室に行っているのですが、フランス人講師に「コンシェルジュ」は(日本で最近使われているような意味では)通じませんでした。

これ、もしかしたら米国経由で入ってきたために、そんな感じになったのかもしれませんね。

米国ではまさに「よろず案内」的な意味で使われているように思います。

投稿: tak | 2013/07/08 17:54

ハマッコー さん:

>日本語を大切にすることは、外来語を拒否することではありません。

元々日本文化自体が、外来文化を大胆に取り入れることで発展してきたという歴史がありますからね。

ライフスタイルがこれだけ西洋化しているのに、カタカナ言葉だけは拒否するというのは、ある意味、虫が良すぎますね。

シャツとかズボンとかエレベーターとかバスとかまでおかしくなっちゃう。

投稿: tak | 2013/07/08 17:59

emi さん:

>「こっちは受信料を払って見てやってる客だぞ!」という気持ちもありそうですね。

日本の「お客様」は、難しいですからね ^^;)

投稿: tak | 2013/07/08 18:00

自分が気になるのは、外国語としての意味を知っていても相手がどういった意味で用いているのか分かりにくい外来語が多いことです。
はっきりした断定を避ける為に元々あった日本語の言い回しを避けて使われている「和製外来語」も多いんじゃないかと。

NHKの津波に関する特集で(恐らく研究者の言葉をそのまま転用したのでしょうが)「河川システム」という言葉が出来てきた時は、普通に河川系とすべきだろうと思いました。
それと「-システム」と聞くと、何らかの装置やコンピュータ・プログラムなどがあるように誤解している人も多いような。

投稿: Clark | 2013/07/08 23:11

Clark さん:

>はっきりした断定を避ける為に元々あった日本語の言い回しを避けて使われている「和製外来語」も多いんじゃないかと。

はっきり言うと角が立つから、カタカナでぼかすなんてことは、よくありますね。

投稿: tak | 2013/07/09 23:09

新しい概念を表記したり伝えたりするのに外来語をカタカナ表記で使うのは日本文

化で古来から使われてきた賢いやり方で、もちろんこの71歳のご老人が生まれるよ

りずーっと昔からの方法でしょう。

「日本語を大切にする会」を名乗りながら、先人の積み上げてきたそういう柔軟で

便利な日本語自体を否定している気がしますね。

中国(北京・広東)語のような漢字しかない言語では外来語の表音表記に苦労して

るみたいですし、逆にハングル記述では表音文字だけなので日本語でいうひらがな

しか使えないので文意を読むのに疲れる。アルファベットだけの言語ではある意味

を示す表記自体が冗長になりがちですし、本当に日本語圏に生まれてよかったと胸

をなでおろしています(子供たちを責めないで/伊武雅刀)

新しい概念を“日本語(漢字?)”のみで表現しようとすると、その言葉自体が新造語になりますが、それを新しく理解するのはオーケー(おっと、外来語)なんでしょうかね・・・?

と、思ってしまいました。

まあ、ヒマなんでしょうね。ヽ(´▽`)/

投稿: ごん | 2013/07/10 09:49

あ、日本語の便利さはすでに書いてらっしゃいましたね。失礼・・

http://tak-shonai.cocolog-nifty.com/crack/2011/03/twitterfacebook.html

投稿: ごん | 2013/07/10 10:08

ごん さん:

>新しい概念を表記したり伝えたりするのに外来語をカタカナ表記で使うのは日本文化で古来から使われてきた賢いやり方で、もちろんこの71歳のご老人が生まれるよりずーっと昔からの方法でしょう。

まさにその通りで、漢語なんていうのは、昔の外来語ですね。

昔の外来語は漢字が多かったが、今はカタカナが多いというだけの違いです。

ただ、漢語は意味が類推しやすいけれど、カタカナはそうは行かないので、抵抗する人がいるんでしょうね。

もっとも、漢語は意味が類推しやすいですが、同音異義語が多いので、耳で聞いただけでは訳のわからない場合が多いという欠点もあります。

新しい概念を表現するなら、カタカナの方が有利ということもありますね。

投稿: tak | 2013/07/10 15:19

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