« 平成の神隠しを巡る冒険 | トップページ | ケータイと心臓ペースメーカー その2 »

2013/09/29

アップルの株価低迷を巡る冒険

Wired の "「アップルの革新的ヴィジョン」 が 「負の資産」 に" という記事に、「iPhone 5S、5C が発表されても、アップルの株価下落を食い止めることができなかった」 ことについて、その原因は iPhone 5S、5C で、何ら新しいものを提案できなかったからだと書かれている。

センセーショナルなのは、「何よりも最悪であり、最も明白なのは、『新しいものに対する消費者の飽くなき欲望』 をアップルが満たせなかったことだ」 と、最も明白に言い切っている点だ。しかしこれは、ジャーナリズムの業のようにもつ誤解である。消費者の 「新しいものに対する飽くなき欲望」 なんて、何よりも最悪な思い込みに過ぎない。

私は 8月 14日の 「次期 iPhone が発表されるらしいが」 という記事で、次のように書いている。

ところで、近頃 iPhone がアップデートされるたびに、マスコミが 「画期的な新機能はみられない」 とか 「期待されたほどの大きな変化はない」 とかいうお約束みたいなコメントを発するのが、私はかなり気になっている。

1ユーザーとしては、あまり大きく変化されたりしたら戸惑ってしまうから、「あまり変わりはありませんが、全体的には動作がちょこっと速くなって、安定性が高まり、ちょっとしたところで便利になりました」 程度が一番ありがたい。その一番ありがたい変化とも見えない変化を 「期待はずれ」 みたいに言われたら、こっちが困るのである。

こうした私の危惧がしっかりと的中してしまったのが、今回の Wired の記事だ。ちなみに iOS アップデートについて書いた 9月 25日の記事で、私は次のように書いている (参照)。

基本的な使い心地に大きな変化はないので、ほとんど戸惑わずに操作できる。これはありがたいことである。Windows 8 みたいに、アップデート したとたんにベテラン・ユーザーがいきなり初心者レベルに叩き落とされてはたまらない。

「新しいものを追いすぎる」 ことで墓穴を掘ってしまったのが、マイクロソフトの Windows 8 である。今回のアップルは、それと比べればずっとマシだ。とはいえ、株価低迷でもわかるように、アップルのイメージが低下しているのも事実である。ただしそれは 「新しいものを提案できていないから」 ではなく、「アップルらしいテイストが失われつつあるから」 だ。

私は上述の 9月 25日の記事で、iOS 7 におけるユーザー・インターフェイス・デザインの変化について、次のように書いている。

このあたりのことは、単なる 「機能」 では割り切れないことで、基本的な 「テイスト」 という範疇のことなのである。iOS 7 で、iPhone というデバイスの 「テイスト」 は、大きく変わり、「思い入れのある道具」 から 「単なる便利グッズ」 になってしまった。

このチャラいインターフェイスをみて、「ああ、スティーブ・ジョブスは本当に死んでしまったのだなあ」 と、しみじみ実感した。

アップルの株価が低迷しているのは、新しいものを提案できていないからではなく、端的に言えば、スティーブ・ジョブスが死んでしまったからである。それ以外にない。

|

« 平成の神隠しを巡る冒険 | トップページ | ケータイと心臓ペースメーカー その2 »

パソコン・インターネット」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/42004/58282390

この記事へのトラックバック一覧です: アップルの株価低迷を巡る冒険:

« 平成の神隠しを巡る冒険 | トップページ | ケータイと心臓ペースメーカー その2 »