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2013/11/16

ナイジェリア人から預かった荷物に覚醒剤が入ってたって?

愛知県稲沢市というところの市議会議員が、中国で覚醒剤所持の疑いで逮捕されたという (参照)。その後のニュースで、この桜木琢磨という市議は、覚醒剤の入ったスーツケースをナイジェリア人から預かったと言っているらしいということが報じられた (参照)。

桜木市議は貿易会社を経営しており、仕事上の取引で会ったナイジェリア人から荷物 (その後の報道によると、靴のサンプルらしい) を受け取ったが、まさか覚醒剤が入っていたとは知らなかったと主張しているようだ。そして現地で接見した日本の外務省関係者に、「私は無実なので、議員は辞めない」 と言っているらしい。

この人、ずいぶん呑気だなあと思う。中国では麻薬所持は重罪なので、「議員は辞めない」 どころか、客観的には死刑になってしまうことをマジに心配しなければならないところだ。他人から預かった荷物の中にたまたま覚醒剤が入っていたなんていう話を、中国当局が信用するかどうか、悲観的にならざるを得ないではないか。

というのは、この市議は貿易会社を経営しているというのだから、国際的な常識に欠けるとは考えられない。そんな人間が、他人から、ましてやナイジェリア人から預かった 「製品サンプル」 を持って、軽い気持ちで通関できると思ったなんていう非常識なストーリーは、フツーは信じてもらえないだろう。

こう言っちゃナンだが、貿易業務に携わるような人なら、ナイジェリア人と聞いただけで、「詐欺」 とか 「麻薬販売」 とかいうヤバイ話を想起しなければならない。私だったら、預かった物の中にヤバイものが入っていないか、必死に調べる。

いや、そもそも預かったりなんかしない。必要だというなら荷物便で送ってもらう。預かったサンプルを手荷物で持って帰国するなんていうのは、本来は面倒な通関上の手続きが必要になるから、ナイジェリア・ケースでなくても、私なら避けたいところだ。

大多数の真面目なナイジェリア人には甚だ恐縮だが、中国みたいな面倒くさい国で、評判の悪い国の人から預かった 「サンプル」 を手持ちで出国するなんて、考えるだにうっとうしい。そんな常識に当てはまらないリスクを敢えて冒す貿易会社の経営者なんて、「何かある」 と思われても仕方のないところがある。

いや、ここまで考えてふと思い当たったのだが、この市議さん、もしかしたら本当に、相手を信じて荷物を預かってしまったのかもしれない。これだけ 「振り込め詐欺に注意」 と言われながら、わけのわからない口座に大金を振り込んでしまう年寄りが絶えない国の、地方都市の一市議だもの、そんなことがまったくないとは言えない。

30年ほど前、私の上司 2人が出張先のニューヨークで、「ピック・ポケット」 (スリ) の被害に遭いかかったことがある。朝、ニューヨークの町を歩いていてふと振り返ると、上司 2人が何やら怪しい 2人組に引っ掛かっている。どうしたのかと見ていると、上司 2人のジャケットの背中には、チョコレート・アイスクリームがべっとりとなすりつけられている。

怪しい 2人組は、言葉巧みに 「おやまあ、ひどいことになっている。お貸しなさい。私がハンカチで拭ってあげましょう」 みたいなことを言っている。で、信じられないことに、上司 2人はそいつらに言われるままに、ジャケットを脱いで渡そうとしているのである。おいおい、正気かよ、まったく!

慌てて駆け寄って、怪しい 2人組に 「止めろ! それはお前たちがやったんだろう!!」 と怒鳴ると (もちろん、英語でだよ)、そいつらは脱兎の如く逃げ去った。それはまあ、見事なスピードだった。逃げられる前に 2~3発ぶん殴りたいところだったが、まあ、上着の内ポケットの財布だけは、危ういところで取られずに済んだ。

出張前に 「ニューヨークは物騒な街だから、決して怪しいヤツの口車には乗らないように。知らないヤツに物を預けるなんて、絶対にしないように」 と、あれだけ口を酸っぱくしてレクチャーしておいたのに、2人の上司、全然わかっていない。その場になると、いい大人がまるで催眠術にかかったようにあっさり騙されるのを、目の当たりにしてしまった。

「人を見たら泥棒と思え」 なんていうのは、とても悲しいお話ではあるが、世知辛い世の中で身を守るには必要なことだ。善人が圧倒的に多いありがたい国に暮らして、その中にどっぷりと浸かっていると、悪いヤツからは 「カモ」 にしか見えなかったりするのである。

今回の問題では、中国側がこの市議の言い分を聞いて、荷物を預けたというナイジェリア人を取り調べようとしても、多分そいつは出国してしまった後だろうし、万が一中国内に残っていたとしても、「知らぬ存ぜぬ」 で貫き通さないはずがない。この市議さん、本当に大丈夫かなあ。

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コメント

この市議さん、きっと、政府間の政治的問題に利用されちゃうんじゃないかなあ、と思ったり思わなかったり…(笑)

投稿: もりけん | 2013/11/16 23:57

もりけん さん:

それはあるかも知れませんね。
人質に取られてるようなものですから。

投稿: tak | 2013/11/17 01:27

おっしゃる通り
我々商社の人間の中では
ナイジェリア人は、最悪
というのは常識です

そのナイジェリア人から
日本に持ち帰って○○という人物に手渡してくれ
なんてことを言われて
ホイホイと日本に持ち帰るなんて
貿易会社を経営している人間が
やるとは、普通、とても思えない

そんな商品サンプル
普通に簡単に貨物で日本に送るはずです
サンプルは、靴だったというけれど
そんなものに、どれだけ商品価値があるか?
日本で販売できるような品質のものか?
自分が持ち帰る意味があるか?
そういう判断もしないはずはありません
スーツケースにちょっと入れただけという数量で
どれだけのスケールのビジネスができるのか?
判断力皆無、または、知っていて運び屋になった
そうとしか、思えません

そういう運び屋にされて
死刑宣告を受けている人間が
東南アジアでは非常に多い
それも、知らないはずがない

ニュースで見ましたが
中国でナイジェリア人に頼まれて?
麻薬の運び人になった(された?)例が
少なくとも他に2件あるそうです

この市議
自分の貿易会社の業績が悪く
一発を狙ってギャンブルをしたのではないでしょうか?

投稿: alex99 | 2013/11/19 09:17

alex さん:

お久しぶりです。

このケースはどうみても、

・ 貿易業務をする人間としては無能もいいとこ
・ リスクを承知で運び屋になろうとした

のどちらかとしか思えませんが、
精一杯好意的(?)にみて
「無能もいいとこ」 なんでしょうね。

投稿: tak | 2013/11/19 13:50

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