« 年賀状で人柄が偲ばれてしまう | トップページ | 南スーダンでの、どうしようもないしがらみ »

2014/01/05

餅のリスクと伝承文化

昨年暮れ、メディアは例年以上に念入りに 「お年寄りが餅を食べる時の注意」 を、繰り返し繰り返し伝えていた。いわく、「小さく切って」 「よく噛んで」 「喉を湿らせて」 「ゆっくりと呑み込む」 等々、至れり尽くせりの呼びかけだったのである。私は 「これだけ注意を呼びかければ、餅を喉に詰まられる事故は、少しは減るだろう」 と思っていた。

ところが、事故は減らなかった。今年も元日の都内で、「お年寄りなど少なくとも 10人が餅をのどにつまらせて病院に運ばれ」 たと、NHK が伝えている (参照)。私の 2007年 1月 3日付の記事には、次のように書かれている (参照)。

元日付のニュースでは、東京消防庁によると、「70-90歳代の男性 7人と女性 2人の計 9人が病院に運ばれ、うち 5人が重体」 となっている。

つまり、それほど注意が呼びかけられていなかった 7年前よりも、今年の方が病院に運ばれた人数が多いのである。ただ、今年は都内では餅を喉に詰まらせたことによる死亡事故が報告されていないだけ、少しマシかもしれない。一昨年は、三が日の間に都内で 8人もの高齢者が餅を喉に詰まらせて死亡したと伝えられたのだから (参照)。

好意的に解釈すれば、死ぬほどの不注意な餅の食い方をする老人は、都内ではいなくなったということで、注意呼びかけの効果は、少しはあったということだろう。病院に搬送された人数が増えたのは、老人の人口が増えたことによる 「自然増」 と考えればいいのかもしれない。

「ハインリヒの法則」 によると、具体的な数字となって現われた事故の裏には、その 300倍以上の 「ヒヤリ、ハッと」 があるとされている。ということは、元日に 10人が病院に搬送されたというのだから、3,000人のお年寄りが 「うっ、く、苦しい!」 となっていたとみても、あながち大袈裟ではない。

いやはや、餅というのは想像以上にリスキーな食い物である。人間というのはこんなに大きなリスクを冒してでも、やはり正月には餅を食いたくなるものらしい。

これは食文化と言えばいいのか、宿業と言えばいいのか、ビミョーなところである。それを如実に感じさせるのが、「餅すすり (あるいは 「すすり餅」)」 とか 「餅飲み」 とかいわれる芸能だ。リンク先の動画にあるように、長く伸ばした餅を端から噛まずにすすり込むスタイルと、小さく切った餅を次から次へと、さながら 「わんこ蕎麦」 の如く噛まずに呑み込むスタイルがある。

蕎麦を噛まずに喉越しで食うぐらいのことは、江戸っ子ならぬ私でも、ふと気付くとやっちゃってることがあるが、同じことを餅でやろうなどとは、間違っても思わない。ところが、それをやってのける 「伝承文化」 が、日本各地に存在する。過去に何人もの人死にが出た 「諏訪の御柱」 に思いを致すまでもなく、フォークロアというものはかなりアブナいところがあるのだ。

餅の事故から得られるもう一つの教訓は、いくら注意を呼びかけても、伝わらない人には絶対に伝わらないということだ。それは 「振り込め詐欺」 の被害が一向に減らないことをみても、よくわかる。

|

« 年賀状で人柄が偲ばれてしまう | トップページ | 南スーダンでの、どうしようもないしがらみ »

比較文化・フォークロア」カテゴリの記事

コメント

「てやんでぇ、そんなに小さく切っちまったら、餅だか何だかわからねぇじゃねぇか!餅ってのは、でっかいのにガブッと噛みついて、ビョロ~ンと伸ばして、ング!と呑み込むときののど越しがいいんじゃねぇか」


みたいな。


あ、あっしはこの正月(てか去年も)、餅は食いやせんでした。生活様式の変化ってやつでござんすかね。

投稿: 下衆兵衛でげす | 2014/01/06 09:39

下衆兵衛でげす さん:

>てやんでぇ、そんなに小さく切っちまったら、餅だか何だかわからねぇじゃねぇか

永六輔さんは奥様亡き後、娘さんたちが心配して 「小さく切って食べるのよ」 と言うのに従い、サイコロの如くに小さく切って、並べてチンしたら、元通りにくっついて焼き上がったそうです (^o^)

>あ、あっしはこの正月(てか去年も)、餅は食いやせんでした。生活様式の変化ってやつでござんすかね。

おめでとうございます。食文化という名の宿業が晴れましたね (^o^)

ちなみに私はリスクも顧みず、このところ毎日餅を食っています。

投稿: tak | 2014/01/06 13:00

「てやんでぇ!年寄りだと思って馬鹿にしやがって。餅ぐらい好きに食わせろってんだ!ぐにょぐにょしてっから喉につまんだろ!こうやってよ、ぺったらぺったら伸ばしてよ、焼けば硬くなるから喉につまんねぇだろ!へへっ、出来たぜ!…な、なんでぇ、こりゃ煎餅じゃねぇか。ちくしょうめ」

みたいな。

投稿: 毎度下衆兵衛でげす | 2014/01/06 13:33

毎度下衆兵衛でげす さん:

わはは (^o^)

投稿: tak | 2014/01/06 16:02

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/42004/58891261

この記事へのトラックバック一覧です: 餅のリスクと伝承文化:

« 年賀状で人柄が偲ばれてしまう | トップページ | 南スーダンでの、どうしようもないしがらみ »