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2014/04/07

凶悪犯罪は増加しているか

「世の中、物騒になった」 とか 「最近は凶悪事件が多い」 とか 「昔はこんな事件はなかった」 とか、いろいろな言われ方をするが、実際はどうなんだろう。本当に昔は平和で、今が殺伐とした世の中になってしまったんだろうか。

このことについて調べようと思うと、なかなか大変だ。Wikipedia に 「日本の犯罪と治安」 というページがあり、かなり信頼のおける数字がずらりと並んでいるのだが、「昔に比べてどうのこうの」 と一概に言い切る材料にはならない気がする。なにしろ一言に 「犯罪」 と言ってもちょっとした窃盗 (万引きみたいなもの) から大量殺人に至るまでいろいろあり、膨大な数字の中からそれを読み取るのはエラいことになる。

このページをざっと眺めると、犯罪発生件数の推移には波があり、時代によって増えたり減ったりしていることがわかる。考えてみればそれは当然のお話で、一本調子で推移しているはずがない。だから 「昔と比べてどうのこうの」 という言い方自体がナンセンスということになる。

とはいえ、多くの人が 「昔はこんな凶悪な事件はなかった」 という印象をもっていることも事実で、こうした感慨の裏付けとなるような数字を得るために、もっと端的にわかるような統計を探してみると、横須賀市がまとめた 「犯罪発生件数の分析」 というページがある。

このページによると、「犯罪発生件数は、全国・神奈川県・横須賀市とも平成 14年 (2002年) がピークで現在減少傾向」 ということになっている。平成 5年 (1993年) の犯罪発生件数を 100とすると、平成 14年が 160ぐらい (横須賀市は 175以上) で、平成 20年 (2008年) 以後は 100を切っている。

話を殺人、強盗、放火、強姦という凶悪事件に限っても同様の傾向で、つまり、10年前は結構物騒だったが、今はかなり落ち着いている。バブル崩壊からこっちは、やっぱりちょっと世の中が荒れたが、再びもちなおしているということなのだろうね。まあ、親切な見方をすれば、10年前に感じた 「近頃、やべぇな」 という印象が、今でも生きているということなのかもしれない。

話をもっと遡ると、昭和25年 (1950年) から 40年 (1965年) にかけての凶悪事件発生数は、最近の水準の倍ぐらいになっている。この当時は日本の人口は今ほど多くなかったから、発生率でいえば今は当時の半分以下ということになるだろう。つまり、日本の凶悪犯罪は、戦後から高度成長期にかけてはかなり多くて、その後減少傾向にあった。そしてバブル崩壊後に一時的に増加したが、再び減少しているというわけだ。

さらにいえば、終戦直後は思いのほか犯罪件数が少ないが、これは戦後の混乱がひどすぎて警察の手が足りず、実際にはいろいろな犯罪が発生してはいても、それを捉えきれなかったのかもしれない。まあ、そのあたりのことは今となってはわからないが。

少なくとも 「近頃物騒」 とか 「最近は凶悪犯罪が多い」 とかいうのは、かなり印象点的な言い方で、4〜5年前ぐらいまでは 「確かにちょっと物騒かもね」 と言えたかもしれないが、それでも戦後から前の東京オリンピック頃の様相に比べればずっとマシで、最近はさらに落ち着いているというのが、客観的な見方といえるだろう。

話は変わるが、「自閉症増加」 という印象に関してもからくりがあるという。ナショナルジオグラフィックニュースに 「自閉症“増加”のデータに警鐘」 という記事があり、これは米国のデータに基づいた話なのだが、自閉症の子どもが急増しているように見えるのは、統計上の都合によるもので、実態は昔からそんなに変わるものではないという内容である。

自閉症に関する認知度の高まりや学校でのスクリーニングの拡大があると、自閉症としてカウントされる数が増えるのだ。それで数字だけが一人歩きして、人々に強く印象づけられる。犯罪の場合は、情報伝達が発達してどんどんニュースに取り上げられるので、人々に強く印象づけられることになる。

「最近は凶悪犯罪が多い。昔はこんなことはなかった」 という人に、データに基づいて 「いや、昔の方がずっと物騒だったんだよ」 と言うと、「あんたはそう言うけどね、そんな数字は信じられないよ」 なんて、理屈に合わない反応が返って来がちだ。

このように、実態と印象の間には、結構なギャップがあり、印象というのは理屈を超えたインパクトなのである。客観的な統計数字でさえも、受け取る側の都合で印象を裏付ける根拠になったり、印象を裏切る 「信用できないもの」 になったりするのだ。人間とは相当に勝手なものである。

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コメント

日本全体の犯罪について一番信頼できる数字があるのは法務省が出している犯罪白書だと思います。これだけの統計数字が出ているものは他国ではなかなかないそうです。ちなみに平成25年版は「女子の犯罪・非行」が特集です。ご一読あれ。

投稿: 齋藤光惠 | 2014/04/14 19:18

齋藤光惠 さん:

犯罪白書は膨大すぎて避けて通っていましたが、覚悟を決めてちょこちょこ拾い読みすると、さすがに面白いところが多いですね。
(おもしろがっちゃいけないのかも知れませんが)

近年はストーカー犯罪などが増えているようですが、これにしても、昨日や今日で急に増えているわけじゃなく、警察が立件するようになったから増えているように見えているということもあるでしょう。

すべての統計は、「読み方」 の問題が大きいので、心してあたらなければなりませんね。

投稿: tak | 2014/04/14 23:46

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