ネスレ日本の 「レギュラーソリュブルコーヒー」 というもの その2
ネスレ日本が、製品の呼称問題でもめて、業界団体である 「全日本コーヒー公正取引協議会」 を脱退するのだそうだ (参照)。今後は日本のインスタント・コーヒー市場のトップシェアをもつネスレが、いわゆるアウトサイダーになるわけだ。
問題となったのは、ネスレの 「レギュラーソリュブルコーヒー」 という名称である。ネスレの言い分によると、同社の展開している商品は「微粉砕されたレギュラーコーヒー豆の粒を混ぜる」 という新製法なので、単なるインスタント・コーヒーではなく、「レギュラーソリュブルコーヒー」 というものなんだそうだ。
ところが全日本コーヒー公正取引協議会の加盟企業から、「消費者がレギュラー・コーヒーと誤認する」 という声が上がったため、同協議会で検討したところ、新製法での商品は重量比によって 「レギュラーコーヒー (インスタントコーヒー入り)」、「インスタントコーヒー (レギュラーコーヒー入り)」 とする規約改定案が採択された。
なるほど、これなら混乱は避けられるだろう。ちなみにネスレの製品は、多分 「インスタントコーヒー (レギュラーコーヒー入り)」 というカテゴリーになるのだろうね。
ところがネスレ側は、「レギュラーソリュブルコーヒー」 の展開を始めてから 4年間、消費者からのクレームは 1件もないとして、協議会の決定に不服を唱え、脱退することにした。「消費者が誤認する」 なんて言ってるけど、実は気にしているのは業界他社だけじゃないかと、ケツをまくってしまったのだね。
ところで私は、ネスレが自社商品を 「レギュラーソリュブルコーヒー」 という名称に一本化すると発表した昨年夏に、”ネスレ日本の 「レギュラーソリュブルコーヒー」 というもの" という記事を書いていて、今回の記事は 「その 2」 というわけだ。前回の記事では、次のように述べている。
「レギュラーコーヒー」 という言い方は結構複雑だ。日本でいうところの 「レギュラーコーヒー」 は、「インスタントじゃないよ」 ということを示すために、本家本元の方にわざわざ余計な形容詞を付けた言葉で、本当かどうか知らないが、UCC による造語と伝えられている。つまり、和製英語なのね。
じゃあ、本来の英語には 「レギュラー・コーヒー」 という言い方がないのかといえば、そういうわけでもなく、民族や地域性などにより、それぞれがてんでに 「この淹れ方、この飲み方こそが "regular coffee" である」 と思っているらしい。そのへんのことは、前回の記事に少し詳しく書いておいた。
つまり、全日本コーヒー公正取引協議会が、「レギュラー・コーヒー」 と誤認されるおそれがあるなんて言っても、「レギュラー・コーヒー」 という言葉を 「インスタントじゃないよ」 という意味で使っているのは日本だけのようで、国際基準にはそんなのはないのだから、あんまり説得力がない。何しろ、ネスレは外資だしね。
というわけで、「レギュラーソリュブルコーヒー」 というのは、言葉通りに受け取れば、これはネスレにとっても痛恨だろうが、「フツーのインスタント・コーヒー」 という意味でしかない。ネスレの製品をみれば、どうせ 「インスタント・コーヒー」 以外の何物にも見えないし。
ちなみに私自身は、コーヒーはちゃんとドリップして飲むので、ネスレの 「レギュラーソリュブルコーヒー」 とやらを飲む気はない。だから、どーでもいい。ただ、言葉の趣味の問題としては、「レギュラーソリュブルコーヒー」 というのは、言いにくいし、ナンセンスだし、悪趣味であるなあとは思う。
というわけで、とっくに見放してしまっているので、クレームなんかつける気にもならない。
ネスレとしても 「4年間、クレームが 1件もない」 なんて誇らしげに言っているが、実はこれは案外ヤバいことと思わなければならないだろう。少しはクレームがつくぐらいの方が、「きちんと意識されている」 ってことで、4年間も経つのに全然クレームがないというのは、「まともに受け取ってもらえていない」 ということを、自ら白状しているようなものではないか。
今月 21日の記事で書いているように、「国民の大多数に正しい情報がきちんと行きわたるなんて、期待しちゃいけない」 のである。メーカーの発信する情報は、ややこしければややこしいほど、消費者全体には伝わらない。伝わるのは、マニアックな消費者だけである。
で、コーヒーの場合は、マニアックな消費者はインスタント・コーヒーなんて興味ないから、そんなところにこだわってもあまり意味がない。ネスレの CM に登場する 「違いがわかる男」 も、どうみても日頃インスタント・コーヒーを飲んでるようには見えないし。
私には、ネスレがあまり意味のない独り相撲を取っているとしか見えないのである。ネスレとしては、業界団体を抜けることで、かなり高い会費 (大抵の団体では、売り上げ規模にしたがって会費も高くなる) を払わなくてよくなり、余計なしがらみもなくなるので、清々しているのかもしれない。
しかし、このような横紙破りをしてまで栄えた企業の例を、私はあまり知らない。マスコミはネスレから広告料をどっさりもらっているので、あまりまともには取り上げていないが、この件では、普通に考えれば公取が動くだろうしね。(動かなかったら、それはネスレの政治力がモノを言ったのである)
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コメント
ありゃ、これは痛い会社ですな。おいしいコーヒーを飲みたいと思っている方は今どき、インスタントコーヒーなんかには手を出さないので、業界最大手として焦りもあるのでしょうか。
レ、レギュラーソリュブルコーヒー…、なんやそら?って感じですな。あたくしもちょいと飲んでみましたが、ま、やっぱり、「インスタントコーヒー」でした。
コンシューマーにおいしいコーヒーを楽しんでもらいたいという気持ちがあれば、商品カテゴリーをわけわからん名前にするより、もっとほかに方法はあるでしょ、と思いますね。
投稿: 池波下衆太郎 | 2014/07/25 21:27
池波下衆太郎 さん:
この件、去年の記事にも書きましたが、Slashdot にあった名コメント 「飲み物なのに、噛んじゃう」が秀逸で、それでけりをつけてもいいような気がしています (^o^)
投稿: tak | 2014/07/25 23:29
おはようございます~
インスタントコーヒーから50年も遠ざかっていましたので
今さらこんなことを言われてもわかりませんでした。
ふう~ん4年前からですかぁ~
インスタントで売った場合と、レギュラーで売った場合との
税金のかかりかたはどうなんでしょうね?
最近の、あの缶ビール事件で、せっかくライトな安価ビールで売り出したけれど、ストップして、
やはり本物のビールで売り出したのもありましたよね?
業者さんにはどちらがお得なのかは、私にはさっぱり解りませんけれど・・・
とにかくインスタントコーヒーと、ファミリーレストランの安いコーヒーはまずいです。しかたがないけれど。
投稿: tokiko6565 | 2014/07/26 05:02
おはようございます。
CMで有名飲食店(イタリアンと和食)の店主さんが、ウチでも出してます、なんてことを仰られておりました。
んなアホな。
正直な感想です。
ホントに出しているなら、店主さんネスレさんごめんなさいの心境です。
併せて、平べったい香りのコーヒーが合う料理ってことで、特にイタリアン店主監修の商品などは、眉唾で見ることといたします。
投稿: 乙痴庵 | 2014/07/26 07:41
tokiko さん:
>インスタントで売った場合と、レギュラーで売った場合との
>税金のかかりかたはどうなんでしょうね?
え、えーと、あのー、
物品税の時代はだいぶ前に終わりましたので、今はどちらも 8%かと。(酒税とは違うので ^^;)
>とにかくインスタントコーヒーと、ファミリーレストランの安いコーヒーはまずいです。しかたがないけれど。
いい豆で上手に淹れてもらうと、おいしいですよね。
我が家のは、いいかげんにドリップしてますから、「それなり」です ^^;)
投稿: tak | 2014/07/26 21:19
乙痴庵 さん:
レストランの厨房で、インスタント・コーヒーをかき回してる様子は、あんまり見たくないですね ^^;)
投稿: tak | 2014/07/26 21:20
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投稿: Johna69 | 2014/07/31 03:28
Johna69:
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投稿: tak | 2014/07/31 14:30