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2014/09/11

「行楽」 という言葉のイメージ

「行楽」 という言葉は、日常生活の中ではほとんど死語に近くなった。「今度の週末、どこか 『行楽』 に行こう」 なんていう言い方は、今どき誰もしない。ところが 「完全に死語になった」 というわけではないのは、重要な用法がまだ残っているからである。

今日の天気予報では、「週末は天気が回復して 『行楽日和』 になるでしょう」 と伝えられている。また交通情報では日曜の夕方の高速道路などで、「行楽帰りの渋滞」 が伝えられる。

思えば 「行楽」 という言葉は、天気予報と交通情報のために生き残っていると言っていいぐらいのもので、あとは 「行楽客」 「行楽シーズン」 という言い方が細々と続いているだけだ。他にはほとんど使い道がない。

そもそも 「行楽」 とは何かといえば、『大辞林』 によれば 「山野に出たりして、遊び楽しむこと」 ということになっている。ずいぶん漠然とした言い方だ。「旅行」 というほど遠くまででかけるわけではなく、「観光」 というほど大げさではない。しかし、「ちょっとショッピング」 程度の軽さでもない。

それではどんなものなのかと言えば、伝統的な行楽の代表は、「花見」 と 「紅葉狩り」 だろう。なるほど、昔はちょっと足を伸ばせば 「花見」 と 「紅葉狩り」 がいくらでもできた。手甲・脚絆みたいな旅支度をしなくても、普段着で出かけられる自然が、すぐそこにあった。

毛氈とお重とお酒をぶら下げ、懐には短冊と筆をもって歩いてでかければ、季節の酒肴をたしなみながら、和歌俳諧、ちょっとした歌や手踊りを楽しめたのである。思えば風流な世の中ではあった。

ところが時代は変わってしまった。「花見」 程度は近場でもできるが、「山野」 というイメージではない。花見の名所の東京・上野公園では、周りを見渡せば間近にビルがそびえ、すぐ近くに売店が立ち並ぶ。そこまで都会でなくても、ほとんどの花見の名所は、すぐそばを車がビュンビュン通り過ぎるところである。

紅葉狩りとなると、もう大変だ。相当遠くまで行かなければならない。東京近郊で言えば、高尾山ぐらいのところだろうか。

都会では郊外に至るまで開発されて宅地化し、もうちょっと足を伸ばせば、そこには大規模なショッピングセンターやアウトレットストアが建ち並ぶ。つまり現代日本では、「気軽にちょっと出かけて楽しめる山野」 というものが、容易に存在できなくなってしまったのだ。

「行楽」 というものを行う 「山野」 という空間を 「都市」 と 「山中」 の間の緩衝地帯とすれば、今それがものすごく貧弱になったのである。だから、「山中」 から熊や猿や猪が、ひょいと都市の中にまで現れてきてしまう。その裏返しで、都市の人間が自然に親しもうと思ったら、山懐深くまで分け入らなければならなくなった。

近頃では、自然に触れて楽しもうと思ったら、それなりの 「アウトドア装備」 が必要だ。レジャー用の車、バーベキュー用品、もっと自然の中に行こうとすれば、キャンプ用品が必要になる。そうなると、漠然とした 「行楽」 というより、れっきとした 「アウトドア・アクティビティ」 ということになってしまう。

今、週末に気軽に出かけて楽しむといえば、「ディズニーランド」 が一番ポピュラーなんじゃなかろうか。しかし、ディズニーランドに行くのを 「行楽」 と言っていいのかどうか、本来の意味からすれうば、かなりビミョーなところだろう。

それでも、天気予報と交通情報では、「遊びでのちょっとしたお出かけ」 をざっくりと 「行楽」 という便利な言葉でくくってしまっている。これはもう、この 2つの分野の 「業界用語」 と化していると思えばいいのかもしれない。

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