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2014/09/08

「エンタテインメント」 という言葉を巡る冒険

またまたどうでもいいような細かい話で恐縮だが、今回は 「エンタテインメント」 という言葉についてである。

この言葉、元々の英語 (entertainment) では、最初の音節の 「エ」 に弱目のアクセントがあり、「テ」 の部分に強いアクセントがある。まあ、大ざっぱに言えば、アクセントは 「テ」 にあると言っていい。その昔 (第 1作は 1974年)、「ザッツ・エンタテインメント」 という映画がヒットしていた頃は、大方の日本人もそのようなアクセントで発音していた。

ところが最近、「テ」 のすぐ後ろの 「イン」 の音節にアクセントを置いて発音する人が多いような気がする。その結果、まるで 「エンター・テンメント」  という言葉があるように聞こえるのである。

巷でそんな言い方がちらほら聞かれるぐらいならまだ我慢もするが、テレビやラジオで、若手のレポーターが、「これは、最高のエンター・テンメントですよね〜!」 なんて言うのを聞くと、かなり気持ち悪くなってしまう。

この言い方で、「エンタテイナー」 (entertainer) という言葉でも 「イ」 にアクセントをおいたら、輪をかけて気持ち悪くなってしまいそうなのだが、そこはそれ、よくしたもので、いや、全然よくなんかないのだが、彼らはこれを 「エンターティナー」 (「テイ」 ではなく 「ティ」 ) と言うのである。

「さすが、エンターティナーですよね!」 なんて言うのを聞くと、私としては別の気持ち悪さに襲われるのである。彼らにとっては、どちらの言葉も同じ 「エンタテイン」  (entertain: 「もてなす」 「楽しませる」 という意味の動詞) から来ているなんてことは、どうでもいいことなのかもしれない。

「エンター・テンメント」 と聞こえる発音になってしまったのは、もしかしたら 『エンタの神様』 から影響を受けてしまったのかも知れないと、私は常々思っていた。「エンタ」 が日本語として定着してしまったようなので、改めて言うと 「エンター・テンメント」 になってしまうんじゃなかろうかと。

しかし、ここまで書いて、私は 『エンタの神様』 という言葉を知っていても、それがどういうものだか知らないということに、初めて気がついた。そこでググって調べてみると、それは日本テレビでやっていたお笑い番組だったらしい。

ところが Wikipedia の  『エンタの神様』 の項をみると、「究極のエンターテインメントを追求する 『総合エンターテインメント番組』 として放送開始」 とある。ここで私は、「おやおや」 と腰が抜けそうになってしまったのである。実は、そのココロは 「エンターの神様」 であったのか。なるほど、「エンター・テンメント」 になるわけだ。

さらに驚いたことには、本文の第 2段落目で紹介した 「ザッツ・エンタテインメント」 という映画も、Wikipedia では、「ザッツ・エンターテインメント」 という項目名で紹介されており、そのくせ、本文では 『ザッツ・エンタテインメント』 と、正しい邦題標記になっているといういい加減さである (参照)。

Wikipedia にはだめ押しのように、 「エンターテインメント」 という項目があり、そこには、「表記や発音の利便性を重視し、エンタメとも、ンが抜けたエンターテイメントなどとも言う」 とある。私は、「エンタメ」 は知っていたけど、「エンターテイメント」 なんて知らなかったよ。

さらに、さらに、さらに驚いたことには、「実際の英語の発音では entertainment の 9文字目の n は殆ど聞き取れないため、エンターテイメントの方がまだ実際の英語の発音には近くなる」 なんてことが書いてある。

よく言うよ。"n" はちゃんと聞き取れる。Goo 辞書の "entertainment" の項目で、「発音を再生」 ボタンをクリックすれば、それはすぐにわかる。聞き取れないとしたら。耳がどうかしているのである。

まあ、Goo 辞書ではことさら明確な発音となっているので、第 2音節の "t" と "r" が強調されており、実際の会話の中ではこの 2つの発音は紛れがちになるのだが、"n" まで紛れるなんてことはない。

1970年代に、ハリウッド映画とともに "entertainment" という言葉が大々的に入ってきた頃には、カタカナでも 「エンタテインメント」 と妥当に表記されていたのだが、その後、日本語化されるに従って 「エンターテインメント」 になり、さらに 「エンタメ」 とか 「エンターテイメント」 とか、ゴチャゴチャになってしまったようなのである。

最近はさらに、「エンターティメント」 という発音も聞くことがある。もう、どこまでバリエーションが広がるか、見ものである。ここまで来ると、言語学のサンプルとして貴重なケースになるかもしれない。

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コメント

お疲れさまです。このネタ、私も調べかけて面倒になって放棄したことがあったなぁと思って自分のブログを検索したら2009年8月のことでした。さすがtakさん、よくまとめていただき、5年待った甲斐がありました。笑

ちなみに私は日本語表記は日本人の発音を反映させたい気持ちがあり、カタカナで書く場合は「エンターテイメント」を使っています。私が聞く限り、今のところこの表記がいちばん近いようなのです。「アタッシュケース」や「ナルシスト」みたいなもんだと思っています。一般的な発音が「エンタテインメント」に定着したら変えるつもりですが、個人的にはまだかなという気がしています。

投稿: emi | 2014/09/09 00:15

emi さん:

>このネタ、私も調べかけて面倒になって放棄したことがあったなぁと思って自分のブログを検索したら2009年8月のことでした。

読みました。

>“エンターテインメント”。
>昔は2個目の“ン”なかったよね。

そのもっと昔は、「エンタテインメント」 だったんですよ。

>ちなみに私は日本語表記は日本人の発音を反映させたい気持ちがあり、カタカナで書く場合は「エンターテイメント」を使っています。私が聞く限り、今のところこの表記がいちばん近いようなのです。

70年代の 「ザッツ・エンタテインメント」を基準にしている世代とそれ以後の世代で、違ってしまってるんだなあと、しみじみ思う今日この頃になってしまいそうです ^^;)

>「アタッシュケース」や「ナルシスト」みたいなもんだと思っています。

なるほどね。ちなみに、私は "attache" の発音が、未だによくわかってません。わからないので、実際に使う場合はテキトーにごまかして言って、何となく通じてるみたいなところです。

(Attache case 以外の用法で使ったことがないし、自分では持ったことがないので、あんまり必要ないし)

英米人でも、「おフランス語こだわり派」的な人と 「外来語だけど、既に英語だもんね派」 的な人がいて、ビミョーに違うような気がして、誰をお手本にしていいのかわかりません ^^;)

「ナルシスト」 に関しては、私が 10代の頃までは 『ナルシシスト」と言う人も結構いたような気がします。「ナルシシズム」 は今でもまだ一般的ですよね。

外来語として入ってきた当初は、元の言葉をかなり意識していて、そのうちにどんどん 「日本語感」 が優先されちゃうということなのかもしれませんね。

ちなみに、「続々・気になる」の 「〜感」 は、まあ、一時的に使うには軽く便利な言い回しですが、あまりもっともらしく 「オーセンティックな言い回し」 みたいに使われると、やっぱりちょっと抵抗ありますね。

投稿: tak | 2014/09/09 10:14

おぉぉ、5年前のものを読んでいただいたとは。リンク貼るほどのものでもないと思って省いたのですが、かえってお手数をおかけしてしまったようですね。申し訳ないです。

きっちり線が引けなかったり、引けた頃には変化しちゃったり、誤用が一般的になって認められちゃったりするいいかげんなところも、言語のおもしろさなんでしょうね。

投稿: emi | 2014/09/09 17:55

emi さん:

>きっちり線が引けなかったり、引けた頃には変化しちゃったり、誤用が一般的になって認められちゃったりするいいかげんなところも、言語のおもしろさなんでしょうね。

まさにその通り。
言葉の揺れ幅は摩訶不思議のおもしろさです。

投稿: tak | 2014/09/09 23:11

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