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2014/09/05

従軍慰安婦問題で朝日が謝罪しないのは

朝日新聞が掲載を見送っていた、「池上彰の新聞ななめ読み 慰安婦報道検証」 というコラムを、改めて掲載したという。私は朝日は読んでいないので、HUFF POST でその全文を読んだ (参照)。

池上さん、ずっと前からのことだが、かなり客観的な解説の衣の下から自らの考えをやんわりと出すという匙加減が、本当に上手だ。これなら、「間違いを認めるけど謝罪はしない」 という朝日の態度が 「決して良心的じゃない」 とアピールするには十分だ。

思えば朝日は、「従軍慰安婦の強制連行に関して、日本は謝罪すべし」 という主張をずっと継続してきた。しかし、そんな事実があったというのは間違いだったと自ら認めた今、フツーに考えれば 「ありもしなかったことで謝罪する必要はない」 という理屈になる。

一方で、32年間ずっと報道してきたことが間違いだったと認めながら、それについて謝罪しないというのは、「ちょっと勝手すぎるよね」 と言われてもしかたのないところだろう。相応の誤報をしてしまったら 「お詫びして訂正いたします」 というのが、報道の常識だからだ。

ましてや、本当にあったのかどうか議論の分かれていた (そして、結局はなかったと自ら認めた) 「従軍慰安婦の強制連行」 という問題で、あれだけ 「謝罪すべし」 と主張してきた新聞社なのだから、なおさらである。

議論の分かれる曖昧なことで、国に対しては 「とにかく謝れ」 と主張しておきながら、自ら 「誤報」 と決着を付けたことで、自分はなお謝らないというのだから、批判されてもそれは仕方のないことだろう。

まあ、私としては、朝日に謝ってもらったところで別に得になんかならないから、個人的にはどうでもいい。しかし朝日の報道をすっかり信用して、これまでいろいろなところでいろいろなことを言い過ぎてきた人たちにとっては、いきなり降って湧いたような災難だろう、

「朝日の報道を鵜呑みにしちゃったからとはいえ、従軍慰安婦問題で私はこれまでいろいろ言ってきましたが、それらはほとんど見当外れですから、きれいさっぱり忘れちゃってください」 と言わなければならない進歩的文化人が、ゴマンといるではないか。まあ、彼らのほとんどは今、沈黙しているが。

そんな人たちにしてみれば、これはもう信用失墜につながる大損害であり、朝日には謝ってもらいたいどころか、「謝って済むなら、警察は要らないわい!」 と言いたくなるぐらいのことのはずだ。ところがどういうわけか、彼らはあんまりそんな風にも思っていないようなのが不思議である。

朝日としては、「強制連行はなかったと認めるが、従軍慰安婦そのものが人間の尊厳を踏みにじる大問題であり、謝罪は必要」 ということに論点を移行させたいというのが見て取られる。しかしそれだったら、当の韓国を含む世界中の多くの国々が、こぞって謝りまくらなければならない。

「一億総懺悔」 ならぬ 「世界総懺悔」 につながるのなら、確かに話は別だが、そうなる可能性は極めて低い。

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コメント

takさんの仰る様に、池上さんのやんわり加減は、
可及的客観報道を常に心掛けている様で、清々しさすら
覚えます。そして却って本人の個人的な政治信条や
価値観に対する興味を起こさせます。
ま、なかなか開陳なさらないでしょうけど。

彼の謝罪の要求は、朝日をマトモな言論機関に引導する
為のものであり、思いやりだったと思っておりましたが、takさんの貼られたリンクで初めて確認した双方の
遣り取りを見て、それは確信となりました。

何と言う心の広さ!(どこで手に入れたんだろう?)

投稿: 似非無頼 | 2014/09/05 21:30

似非無頼 さん:

>彼の謝罪の要求は、朝日をマトモな言論機関に引導する
>為のものであり、思いやりだったと思っておりましたが、takさんの貼られたリンクで初めて確認した双方の
>遣り取りを見て、それは確信となりました。

ええと、これはとても重要なことですが、池上氏は 「謝罪の要求」なんてしていません。「過ちを訂正するなら、謝罪もするべきではないか」と示唆しているだけです。

また、「引導する為」というより、ただ、当然のことを言っただけでしょう。

「要求」とか「引導」とかいうご大層なことのないように気をつけて書かれたのだと思いますよ。

投稿: tak | 2014/09/06 20:27

池上さんも聖人君子ではないので(近いとは思いますが)、あのニュートラルな物言いや表情にもいくらか韜晦があるのでは、などと勝手に下衆な想像をしていました。

一方で、当然のことを言うだけで朝日がマトモになるなら疾うになっているでしょう。やはりやんわりとお灸を据えたのだと思います。そしてこんな食い違いは、彼が連載を引き受けた時から既に想定していたのではないかとも、これまた勝手ですが、考えます。ただ、朝日に自浄できる人材はあると思います。これまでの言動はきっと古い人達の引くに引かれぬただの意固地なのでしょうから。

投稿: 似非無頼 | 2014/09/06 21:30

似非無頼 さん:

>一方で、当然のことを言うだけで朝日がマトモになるなら疾うになっているでしょう。やはりやんわりとお灸を据えたのだと思います。

「やはりやんわりとお灸を据えた」というのは微妙な言い方で、まあ、そう見ることもできるわけですが、それでも 「謝罪を要求」したというわけではありません。

池上さんは、そんな不遜なことはしない人だと、お見受けしています。

今後朝日がどうなるかなんてことは、朝日次第ですから、周りがとやかく言っても仕方ありません。

>これまでの言動はきっと古い人達の引くに引かれぬただの意固地なのでしょうから。

おっしゃる通り、朝日内部で新しい方向性が出つつあると見ることはできます。しかし逆に、朝日なんか潰れてしまえと思っている人も少なくないので、その視点からは「悪あがき」と見ることもできますね。

私としては 「朝日の今後なんて、個人的にはどうでもいいこと」 というスタンスです。朝日には何の義理も思い入れも期待もないので。

投稿: tak | 2014/09/07 21:21

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