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2014/12/17

もし今度の選挙が全国 1区完全比例代表制だったとしても

共産党議員の宮本徹さんという人が次のような tweet をして、ネット界隈で話題になっている (参照)。

【もし今度の選挙が全国1区完全比例代表制だったら】自民158、民主87、維新75、公明65、共産54、社民12、次世代12、生活9、幸福2、なし1。自民党の290議席は小選挙区制によるマジック。民意を大きくゆがめる小選挙区制廃止を求めるたたかいをあらためて決意しています

これだと自民と公明を足しても、過半数にも届かないことになり、今回の選挙結果は民意からかけ離れていることになる。ただ、一見するともっともらしい指摘だが、これはこれで数字のマジック以外の何物でもない。

それは、もし選挙制度が全国1区完全比例代表制だったりしたら、有権者の投票行動は現状とはかなり異なったものになるはずだからだ。

すべての有権者が、単純に心から共感して、支持する候補者や政党に投票するわけではない。そんな人はむしろ少数だろう。かなり多くの有権者は、候補者や政党を消去法で消していき、妥協の産物として投票先を決める。

「妥協の産物」 というのは、例えば現状の制度では消去法で最後に残った候補者に投票しても、自分の票が 「死に票」 になることが確実な場合、当落線上にいて、自分の票が影響力を行使できそうな候補に投票するという選択をすることがあるからだ。これを一般には 「戦略的投票」という。

選挙制度が変わったら、投票の戦略も当然の如く変化する。だから今回の選挙結果を、異なる仮想的制度にそのまま当てはめて議論するのはナンセンスである。それは数字のマジックにさらなるマジックを重ねて対抗しているに過ぎない。

ありえないことだが、もし選挙制度が全国 1区完全比例代表制だったら、私なら、政治が不安定にならないように、迷わず与党か、野党第一党に投票する。今回、批判票として共産党に投票した人の中にも、「あんまり増えたらヤバイ」と考えて、他の党に入れる人が出るかもしれない。

あるいは、投票の多様化が進みすぎて、反動としてかえって政党再編成が促進され、「右からちょっと右」 と、「左からちょっと左」 に別れて、連立狙いの連携がさかんになり、逆に政党の独自性が薄れるかもしれない。

さらにあるいは、キャスティング・ボート狙いの中道政党ばかりが漁夫の利を得るかもしれない。

さらにさらにあるいは、政党がばらけすぎて収拾がつかなくなることを防ぐため、政党としての成立要件がめちゃくちゃ厳しくなって、かえって非民主的になる事態につながるかもしれない。それは誰にもわからない。

いずれにしても今回の結果が、そのまま宮本氏の言うような結果にならないことは確実である。選挙に限らず、人間の行動って、そんなに単純なものじゃない。たとえ非理性的であったとしても、決して単純には済まない。

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経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

>ただ、一見するともっともらしい指摘だが、これはこれで数字のマジック以外の何物でもない。
「数字のマジックのないモデル」を考えずに「数字のマジック」を論じるのは、無意味です。

>選挙制度が変わったら、投票の戦略も当然の如く変化する。だから今回の選挙結果を、異なる仮想的制度にそのまま当てはめて議論するのはナンセンスである。それは数字のマジックにさらなるマジックを重ねて対抗しているに過ぎない。
は、現行の選挙制度と異なる選挙制度全てについて成り立ちます。
つまり、「数字のマジックがない選挙制度」が存在するとするならば、それは現行制度以外にあり得なくなります。

例えば、スイスのライツゲマインデは「有権者全員が議員に当選する」選挙制度です。
当然、日本の現行制度とは全く異なるので、有権者の投票戦略も大きく変わるでしょう。
従って、ライツゲマインデには「数字のマジックの重ねがけ」が存在する筈です。
しかし、実際には全く選挙をしないライツゲマインデのどこに、「数字のマジック」を掛ける余地があるでしょう?

国民投票などの直接民主制にも同じ事が言えます。
これらは現行の議会と異なる結果を下す事がしばしばあるのだから、「数字のマジック」がかかっている筈です。
しかし、国民が直接民意を示している以上、「数字のマジック」を挟み込む余地はどこにもありません。

勿論、これらはどれも「選挙制度」ではありません。
しかし比例代表制は紛う事なき選挙制度であり、スイスの様な「有権者全員当選モデル」を模倣することを目標に設計されています。
議員定数が有権者数の半分の比例代表制を想像すれば明らかです。
意見の似た者同士でペアを組んで一票を投票しても、ペアを組まずに二票投票するライツゲマインデとの違いは生じません。

ライツゲマインデには「数字のマジック」を挟み込む余地がないにも拘らず、ほぼ同じ議決を模倣する比例代表制には「数字のマジック」が、しかも二重にかかっている。
この様な錯誤をする原因は明らかです。
マジックが一重しかかかっていない、現行の選挙制度しか基準にないからです。

投稿: A-11 | 2014/12/25 16:17

A-11 さん:

>「数字のマジックのないモデル」を考えずに「数字のマジック」を論じるのは、無意味です。

共産党の宮本徹さんの計算した「仮装結果」こそが民意を直接的に反映しているのだという仮説を、私は選挙においては「数字のマジックのないモデル」なんてあり得ないという考えの元に、「そうじゃないだろう」と言っているわけです。

というわけで、私は、あなたのおっしゃるところによれば 「無意味」なことをしているわけですが、何か?

>国民投票などの直接民主制にも同じ事が言えます。
>これらは現行の議会と異なる結果を下す事がしばしばあるのだから、「数字のマジック」がかかっている筈です。
>しかし、国民が直接民意を示している以上、「数字のマジック」を挟み込む余地はどこにもありません。

この矛盾の解決が、あなたのコメントの中に見当たりません。まあ、どこがどう矛盾なのかも明確にし難いのですが。

>マジックが一重しかかかっていない、現行の選挙制度しか基準にないからです。

何を称して 「一重」とおっしゃっているのか、理解できません。

というわけで、要するに、何をおっしゃりたいのか、よくわかりませんのです。

投稿: tak | 2014/12/25 16:48

> というわけで、要するに、何をおっしゃりたいのか、よくわかりませんのです。
簡単に言えば、あなたの考えでは、選挙制度の改悪に対して何も出来ないと言うことです。
全ての選挙制度は数字のマジックに過ぎない以上、改善も改悪も現状維持もないのだから。

相次ぐ違憲状態判決を契機に
衆議院・参議院の選挙制度改革案一覧 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A1%86%E8%AD%B0%E9%99%A2%E3%83%BB%E5%8F%82%E8%AD%B0%E9%99%A2%E3%81%AE%E9%81%B8%E6%8C%99%E5%88%B6%E5%BA%A6%E6%94%B9%E9%9D%A9%E6%A1%88%E4%B8%80%E8%A6%A7
が各党から出されていますが、与党の改革案は三つも制度をマゼコゼにしています。
公明党を抱えているため、単純に比例区を削るわけにはいかないのでしょう。
主要野党である民主党・維新は、自分たちが小選挙区制では有利であることを知ってか、小選挙区より比例区の定数を大きく削減しようとしています。
他の弱小政党の無視される改革案については、ご自由に。

これらの改革案を「やっぱり数字のマジックに過ぎない」とあなたは一笑に付すでしょう。
しかし、あなたが一笑に付したこれらとか別の改革案が実現したとき、「前の(つまり、現在での現行の)制度に戻そう!」という意見もまた、あなたは一笑に付さざるを得ません。
現行の選挙制度もまた、これらの改革案から見れば数字のマジックに過ぎないのだから。

まあ、あなた一人がこれらの選挙制度改革の謀略に対して何も出来ないなら、問題はないのです。
しかし、「私と同じように、選挙制度改革の企みに対して無為を決め込め」とのあなたの主張を、多くの他の有権者が真に受けたら、日本は
ゲリマンダー - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B2%E3%83%AA%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC
の餌食になります。

投稿: A-11 | 2014/12/26 13:53

A-11 さん:

あなたはご自身が見当外れのコメントをされていることに気付いておらず、それをやんわりと指摘しても意に介さないようなので、あえてはっきり指摘します。

この記事の論点は、ある選挙制度による結果を、そのまま別の制度のメソッドで計算しなおすことはナンセンスで、その理由は、有権者が選挙制度によって異なった戦略的投票をするからだということです。

それに対してあなたは、どの選挙制度がいいのかというトーンのコメントをなさっているように見受けられますが、それについては、私はここでは付き合う気はありません。

>しかし、「私と同じように、選挙制度改革の企みに対して無為を決め込め」とのあなたの主張を、多くの他の有権者が真に受けたら、日本はゲリマンダー - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B2%E3%83%AA%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC
の餌食になります。

ただ、付き合う気はありませんが、私は「私と同じように、選挙制度改革の企みに対して無為を決め込め」と主張したことはただの一度もありません。

馬鹿も休み休み言いなさい。

つまりあなたは、当該記事の趣旨からして見当外れのコメントで、私に無礼な言いがかりを付けているに過ぎません。

これ以上あなたの言いがかりに付き合うつもりはありませんので、この記事へのコメントは、これで打ち切りということにさせていただきます。

あなたがご自分の望む議論を展開されたいのであれば、他人のブログにアサッテの方角から上がり込むのでなく、どうぞ自前のサイトでおやりください。

投稿: tak | 2014/12/26 17:39

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