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2015/02/19

崎陽軒のシューマイは、なぜ 「シウマイ」 と表記される?

Li_shinku_02崎陽軒といえばシューマイだが、そのパッケージに表記されているのは 「シューマイ」 でも 「シュウマイ」 でもなく 「シウマイ」 というカタカナである (左の画像は崎陽軒のサイト直リンク)。「何故に 『シウマイ』 なのか?」 ということについての 「回答」 (?) を近頃初めて知ったが、それがちょっとアヤしいので、書かずにはいられなくなってしまった。

その 「回答」 (?) は、「気になるアレを大調査ニュース しらべえ」 というサイトに載っている 「崎陽軒のびっくりネタ 6選!なぜ 「シウマイ」 と表記? シウマイ結婚式って?」 という記事の中で紹介されている。引用してみよう。

巷では諸説ウワサされているようですが、本当の理由は初代社長の「訛り」が中国語の発音に似ていたから。シウマイを横浜名物にした社長は栃木県出身で、「シュウマイ」と言おうとすると「シーマイ」になってしまったそうです。それを聞いた中国人に「とても発音がいいですね。中国のシュウマイの発音にすごく似ている」と褒められて、中国語に似せて商品名を「シウマイ」としました。

まず本当は余計なことなのだが、中国語の発音が本当に 「シーマイ」 に似ているのかということから検証してみよう。フツーは、中国語では 「シャオマイ」 に近い発音だと認識されているので、「本当かなあ?」 と思いつつ、とりあえず Wikipedia に当たってみると、次のようにある。(参照

中華人民共和国の広州や香港では広東語で「シウマーイ」と発音されている。日本語は広東語の発音を外来語として取り入れている。北京語では「シャオマイ」と発音し、同音の「燒麥」の字を当てる場合がある。

なるほど、「しらべえ」 の説に沿うならば、栃木県出身の社長の発音を褒めたのは、広州か広東出身の人ということになる。もしかしたら、香港の人だったかもしれない。

しかし、初代社長の栃木訛り発音とされる (これもかなりアヤシいといえばアヤシいのだが) 「シーマイ」 と、フツーの日本語 「シューマイ」 の 2つの発音を冷静に比較したら、どちらかといえば、「シューマイ」 の方が 「シウマーイ」 に近いと感じるのは、私だけではないだろう。とにかくいずれにしても 「シーマイ説」 はアヤシ過ぎるのである。

うじゃうじゃ言うのも面倒だから、あっさりと結論を書いてしまおう。崎陽軒が 「シウマイ」 の取り扱いを開始したのは戦前の話 (上述の 『しらべえ』 のページによると、1928年とされている) だから、当時の日本語では 「シューマイ」 と発音される単語でも 「シウマイ」 と表記するのが一般的だった。それだけの話である。

例えば 「州」 という漢字に 「しゅう」 というルビを当てはめるようになったのは、戦後の話で、旧仮名では 「しう」 と書いていた。「秀」 「周」 「週」 「醜」 「囚」 も 「しう」 である。「執」 は 「しふ」 だが、それは中国から漢字が渡来した頃の本来の読みが、「しふ」 に近かったためだろう。

「衆」 は珍しく 「しゆう」 (「しゅう」 ではない)  だが、これは漢音より先に渡来した呉音による 「衆生」 という熟語が 「しゅうじょう」 ではなく 「しゅじょう」 と発音される (旧仮名では 「しゆじやう」) ように、「しゅう」 と発音されることが少なかったので、「しう」 という仮名を当てはめるわけにいかなかったのだろう。ただ 「しゅう」 という発音の旧仮名表記で、圧倒的マジョリティは 「しう」 だ。

とまあ、このように、戦前の日本語表記の慣習では、「シュウマイ」 と発音されるものでも、仮名で書くときには 「シウマイ」 と表記するのがごく自然というか、当然のことだったのだ。敢えて奇をてらって 「シウマイ」 と表記したというわけではないのである。

敢えて言えば、「シューマイ」 の漢字表記とされる 「焼売」 の 「焼」 という字の旧仮名表記は 「せう」 だから、機械的に読みを当てれば 「セウマイ」 が正しい。しかしさすがにその表記だと、当時はまだシューマイがそれほど普及していなかっただけに、文字通り 「せうまい」 あるいは 「しょうまい」 と発音されて、「ギョエテとは、わしがことかとゲーテ云い」 みたいなことになってしまうところだった。

さらに当時は文献の文字情報としてよりも、「シウマーイ」 だろうが 「シャオマイ」 だろうが、口語としての 「音」 優先で入って来て広まりつつあったのだろうから、表記として馴染みやすい 「シウマイ」 に落ち着いたのだろうと思われる。

で、崎陽軒は戦後になっても社の伝統に沿い 「シウマイ」 のロゴを変えずに採用しているのある。「どうして 『シューマイ/シュウマイ』 じゃなくて 『シウマイ』 なの?」 という疑問は、初めてこのように表記された戦前には生じる余地がなく、戦後になって初めて出てきたのだと言うほかない。

余談だが、どじょう鍋で有名な 「駒形どぜう」 という江戸時代から続く店があるが、「泥鰌 (ドジョウ)」 の本来の旧仮名表記は 「どぢやう」 である。それを 「どぜう」 としたのは、文化 3年の大火で類焼した後、縁起のいい三文字 (奇数文字) に変えたということらしい。

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コメント

表記は大事ですね。私ごとですが、表記間違いばかりしてしまいます。
私の性格上、崎陽幹のシュウマイにピンとこなかった。あたたかくなかったから、シウマイという表記に気づかなかった。

商売の儲けは、字数とか、いろいろ起因してるんでしょうね。s


投稿: bekao | 2015/02/19 23:42

tak-shonaiさんごきげんよう~
こんにちは!
私などは、「シウマイ」の表記はあったりまえだのクラッカーですね。(古すぎ~)
これが疑問になるっていうのが不思議なくらいですものね。
もちろん私の小学校は戦後ですから今の時代の表記なんですが、
母などがそういう時代の人でしたから、強く影響を受けています。「困っちゃうわ」を、「困っちょうわ」なんてね。

でも、「ドジョウ」は、「どぢやう」ですか~~それはびっくりです~
もう、すっかり、「どぜう」かと思ってしまっていました~~はははははは・・

投稿: 朱鷺子 | 2015/02/20 17:22

bekao さん:

>表記は大事ですね。私ごとですが、表記間違いばかりしてしまいます。
>私の性格上、崎陽幹のシュウマイにピンとこなかった。

なるほど。確かにそうですね。

投稿: tak | 2015/02/20 19:46

tokiko さん:

>母などがそういう時代の人でしたから、強く影響を受けています。「困っちゃうわ」を、「困っちょうわ」なんてね。

なるほど (^o^)

Audrey を 「オードリー」 と読むのは、まさに納得ですね。

投稿: tak | 2015/02/20 19:49

確か富士フイルムもフィルムじゃなく、フイルムでイが大きいです。
長音、促音?どっちでしたけ。いや違いますね。なんでも無いですか?
その辺は勉強不足ですが、お仕事の手伝いで富士フイルムに郵便物を送る時に、よく夫に注意されました。

投稿: keicoco | 2015/02/21 17:03

keicoco さん:

確かに富士フイルムは、CM でも 「ふいるむ」 と発音されますね。

でも、キヤノンは 「きゃのん」 で、さすがに 「きやのん」 とは言わないようです。

投稿: tak | 2015/02/21 20:18

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