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2015/03/26

日本語の上手な人は、絵の上手な人よりずっと少ない

一昨日の "「聞き流すだけ」 というおとぎ話" という記事で、日本人の英語力の傾向について 「読み書きはバッチリでも会話は苦手」 と思われているらしいが、それは大変な誤解であるという旨を書いた。日本語の読み書きですら問題のある人がものすごく多いのに、英語の読み書きはバッチリなんてことが、あるはずないじゃないか。

そう思っていたら。今朝の新聞の折り込みチラシに、こんなのがあった。

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一番上に 「このチラシは表面の広告売り出し店舗のみで実施しています」 とある。私は何しろ言葉を文字通り受け取りたがる 「アスペルガー症候群一歩手前」 と自認しているほどだから、初めはこのコピーを読んで頭の中が白くなってしまった。

まず 「表面の広告売り出し店舗」 というのがわからない。表面的な広告を売り出すのか? それって、一体どういうことなんだ? 「このチラシは……実施しています」 というのはさらにわからない。「チラシ」 が、「表面の広告売り出し店舗のみ」 で、何を 「実施して」 いるんだ?

ちょっと整理してみて、「表面の」 というのは 「ひょうめん」 ではなく 「おもて面」 なんだろうというのは、割にあっさりと理解できた。しかしこのチラシを見ても、どっちが表でどっちが裏なのだかさっぱりわからない。でもまあこの広告主は、この文言が書いてある反対側の面を 「表(おもて)面」 と規定しているのだろうと思うことにした。そうしないと一歩も先に進めない。

もう少し整理してみて、この文脈は 「広告売り出し店舗のみ」 で、「チラシを実施している」 ということなんだろうと想像できた。さらにもう一歩踏み込んで、初めて 「この広告チラシの内容である 『売り出し』 を実施する店舗のみ」 で 「チラシの内容の売り出しを実施する」 という、入れ子構造みたいなところに辿り着く。

つまり広告主は、「自社の展開する支店全部でこのチラシにある売り出しが実施されるわけじゃない」 ってことを言いたかったんだろう。「売り出しの実施されるのは、チラシに書いてある店舗のみですから、お間違いなく」 ということだ。多分、これで正解だと思う。

というわけで、元の文言を添削するとすれば、「このチラシの売り出しは、表の面に記載された店舗のみで実施されます」 ということになるだろう。さらにチラシ編集の基本的な問題を改善して、実施店舗をこのコピーのすぐ下に記載し、「このチラシの売り出しは、下記の店舗のみで実施されます」 とすべきだった。

ついでに写真の下の方にある 「参考税込価格」 という気持ち悪い言葉も、シンプルに 「税込価格」 とすべきだろう。これでようやく 「まともな日本語による、わかりやすいチラシ」 になる。

この田舎の中堅スーパー・チェーンのチラシを見るだけでも、日本語の読み書きがきちんとできる人は、かなり少ないんだとわかる。チラシの内容をチェックする際に、「ちょっと待てよ、この日本語ってメチャクチャだぜ!」 と気付く人が、このスーパーの広告部門には一人もいなかったわけなのだから。

日本語をまともに使える人が少ないということは、私の以下の過去記事からもわかる。(本当はもっといくらでもあるのだが、あえて 4本に絞り込んでおいた)

「見れることができます」 とか 「可能できます」 とか
「あの節はどうも…」 で気持ち悪くならないのは、ちょっと問題
「二人前」 の正しい読み方
「すべからく」 という単語のリスク

会社の玄関ロビーや応接室に、立派な額に入れて誇らしげに飾ってある 「社訓」 なんかでも、主語と述語が全然かみ合っていなかったりするのが、結構多い。下手すると、本来意図しているのであろうこととは反対の意味になっているのまである。こういうのを掲示するのが好きなのはワンマン社長に多いから、まともに日本語のできる人に相談したりすることはなかったんだろうね。

私は、まともな日本語を使える日本人は、まともな絵が描ける日本人よりもずっと少ないとみている。ただ、それは絵が下手っぴで日本語をまあまあ使える私からみた場合の感慨で、本当に絵の上手な人からみたら、また違うのかもしれないが。

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コメント

「参考税込価格」という言い回しについては、恐らくですが、実際の販売時はレジで税別価格の合計に対して消費税をかける計算上、商品単価に対する税込金額とは差異が出るので、そう言い回しているのかも知れませんね。

私はそのスーパーとの関係は一切ありませんが、何となくフォローしたくなりまして…(笑)

投稿: もりけん | 2015/03/27 00:03

もりけん さん:

へえ、そうなんですか。教えて戴き、ありがとうございます。

となると、消費税が 8% になる前に一般的だった税込み価格での表示は、どうなっていたのか、知りたくなります。

投稿: tak | 2015/03/27 00:10

消費税5%の時代のほうが端数のキリが良かった気がします。3%の時代に特定の本屋で本を買うと税込み1300円のはずの本が1299円だったりした記憶があったりなかったり? 記憶が曖昧だ(^_^;)

投稿: Cru | 2015/03/27 06:45

T.V.のアナウンサーも、変な言葉使いをするし、
新聞も、意味がつかめず何度も読み直すことが多々あり、
何だか校正しながら読んでいる気がします。

断じて、こっちが耄碌したせいじゃないですよね。

投稿: さくら | 2015/03/27 14:42

「ホテルの意味不明な張り紙」(でやんしたか)に続くスマッシュヒット!でげすな!
このリード文、日本語おかしいでげすよ! でも、「広告を打つ」とか言いやすから、「チラシを実施」も、業界内ではおかしくないのかもしれやせんね!
ま、一般コンシューマーはそんなこたぁ気にしないのかもしれやせんが、言葉に関わる商売に携わっているもんには、違和感バリバリでげすな。
あと、あっしが気になるのが大根の「本体価格」。
…てことは、葉っぱは切り落とした状態で売られるんでげすかね??
大根の「本体」って、どこを差すんでやんしょ??
あっし的には、葉っぱがついてねぇ大根なんて大根じゃねぇ!でげすな。
大根の葉っぱとあぶらげの煮浸しなんて、めちゃくちゃうめぇでげすからな!

投稿: 萩原下衆兵衛 | 2015/03/27 21:13

Cru さん:

確かに、本屋で買い物すると、「定価」 と表示された金額を出しているのに、1円お釣りがくるってことがありますね。

あれって、もらっても嬉しくもなんともないですな ^^;)

投稿: tak | 2015/03/27 21:52

さくら さん:

>断じて、こっちが耄碌したせいじゃないですよね。

モーロクしたら、変な日本語に気付かなくなって、楽になりますかね ^^;)

投稿: tak | 2015/03/27 21:54

萩原下衆兵衛 さん:

>ホテルの意味不明な張り紙」(でやんしたか)に続くスマッシュヒット!でげすな!

あれは、英語との合わせ技でおかしくなりまくってましたね (^o^)

http://tak-shonai.cocolog-nifty.com/crack/2014/04/post-b6fc.html

大根の葉っぱの件、私が大学に入って上京したての頃、大根を買ったら、八百屋の親父が葉っぱをバキッと折って捨てようとしたので、
「冗談じゃない、俺は葉っぱの分まで金を払うんだよ!」と言ったら、
「あれ、お兄さん、大根の葉っぱ食うの?」 と親父。
「食うでしょ。フツー!」と私。

東京は食生活がフツーじゃないと認識した瞬間でした。八百屋の親父が大根の葉っぱの美味しさを知らないなんて。

投稿: tak | 2015/03/27 22:08

>大根の葉っぱ

スーパーで買い物をする限りにおいては、葉っぱ付きの大根にはお目にかかったことがないです。短く切られた茎付きのものしか売られていません。

ごくたまに、青くふさふさの葉っぱ付きのものをよそから戴いた時には嬉しくなります。土を良く洗い落とすのがちょっと大変ですけれど。

投稿: KRT | 2015/04/01 13:31

KRT さん:

スーパーの大根に葉っぱがついていないのは、日持ちの関係なんでしょうね。ちょっと時間が経つと、葉っぱは黄色く変色したりしますから、商品価値が下がる。商品価値を下げる要因は、初めから除去する。そういう理屈なんだと思います。

葉っぱが付いた大根は新鮮なんですよ、つまり。

投稿: tak | 2015/04/02 22:49

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