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2015/04/11

他の地域は、選挙カーの連呼がさぞうるさいだろうなあ

よその県は統一地方選挙の選挙カーでやたらうるさくなっているだろうが、私の居住する茨城県は静かである。茨城県会議員選挙は、統一地方選挙のスケジュールとずれていて、昨年暮れに済んでいるのだ。おりしも衆議院がわけのわからない解散をしてしまっていたので、県議会選挙と総選挙が同日ということになってしまい、そりゃあうるさい年末だった。

茨城県ではほぼ半世紀前の 1966年に県議会議長選挙をめぐる収賄事件 (「茨城県議会黒い霧事件」) が発覚し、年も押し詰まった 12月 21日に自主解散した。この年は国政レベルでも一連の 「黒い霧事件」 と呼ばれる汚職事件が発生していた。

この時の出直し選挙は年明け早々に行われ、以来、茨城の県議会選挙は統一地方選とタイミングがずれることになった。そしてその任期満了に伴う 4年後の選挙は、ちょっと前倒しで年末に行われることになった。議員たちも選挙運動をしながら宙ぶらりんのままで正月を迎えるのは、さすがに嫌だったんだろう。その気持ち、わからないでもない。

いずれにしても日本国民の多くは今、選挙カーの連呼の只中にあるのだろう。気の毒な限りである。おりしもあの乙武洋匡さんが Twitter で選挙の連呼について tweet して、一部で話題になっているらしい。

彼は、候補者が選挙カーで連呼を繰り返すのは、「有権者は政策などろくにチェックせず投票するため、名前を連呼したほうが有効だと感じているから」で、「つまり、私たち有権者が馬鹿にされているのです」 と断じている (参照)。

ところがそれに対して、「選挙カーでは連呼しかしちゃいけないことになってるんだから仕方ない」 という反応が多く寄せられたらしい。しかし、ここで自慢たらしく言っちゃうけど、ネットの世界で最初に 「連呼しかしちゃいけない選挙運動の馬鹿馬鹿しさ」 を論じたのは、ほかでもない、この私である。

私は 8年近く前に "選挙カーの 「連呼」 は 「迷信」 から生じているらしい − 馬鹿馬鹿しさの根源は、変ちくりんな公職選挙法" という記事で、公職選挙法には動いている選挙カーでは連呼しかしちゃいけないという、まったくもって馬鹿馬鹿しい決まりがあるってことを書いているのだ。

その頃は、政治家の多くもそんなことを知らなかったらしい。現世田谷区長の保坂展人氏は 2009年 5月 27日付のブログで、「私たち政治家は、先輩から『選挙カーの走行中に連呼をしてはいけないことになっているから、(中略) 政策やキャッチフレーズの合間に名前を差し挟むように』 と聞いてきた」と書いている。

実はこれはまったく逆 (つまり、厳密に言えば選挙違反) で、動いている選挙カーでは連呼以外しちゃいけないってことになっているのだ。公職選挙法 第141条の3は、「車上の選挙運動の禁止」 として、次のように定めている。

何人も、第141条 (自動車、船舶及び拡声機の使用) の規定により選挙運動のために使用される自動車の上においては、選挙運動をすることができない。ただし、停止した自動車の上において選挙運動のための演説をすること及び第140条の2第1項 (連呼行為の禁止) ただし書の規定により自動車の上において選挙運動のための連呼行為をすることは、この限りでない。

念のためかみ砕いて説明すると、選挙カーでは原則として選挙運動をしちゃいけない (すごいね!) のだが、動いている間の連呼と、停車中の演説は例外的にやってもいいよと決められているのである。そういう馬鹿馬鹿しいしろものなのだ。我が国の公職選挙法というのは。

保坂氏は私のサイトの記事で初めてその事実を知って愕然とし、自身のブログ記事からリンクをはってくれている (参照)。そしてこの時、彼が出演した日テレの 『太田総理』 という番組で同席した政治家全員が 「『ホントなのそれ?』 と首を傾げた」 とある。いくら本職の政治家が首を傾げようと、ホントなんだから仕方がない。

何度も書いていることだが、「選挙運動のために使用される自動車の上においては、選挙運動をすることができない」 というのは、日本一シュールな法律条文である。この条文を作成した役人と、採決に立ち会った議員は全員、一昨日の私の記事で触れた 「妙な日本語を使っちゃっても、自分で気持ち悪くならない人」 そのものである。

ちなみに、この法律の 141条では、自動車と船舶 (!) 以外は選挙運動に使っちゃいけないことになっている。保坂氏も書いているが、自転車を使うのも本来は選挙違反である。彼が総務省に問い合わせたら、そういう返事だったそうだ。船は OK でも、自転車はダメなのである。我が国の選挙ってのは、そうしたくだらないことで無駄にがんじがらめになっているのだ。

というわけで、選挙期間中に多くの人が強烈に感じるストレスは、このがんじがらめの公職選挙法の賜物である。そしてこんな馬鹿馬鹿しい法律が戦後ずっと続いているのは、煎じ詰めればやっぱり乙武さんの言うように、有権者は馬鹿にされているってことなんだろうし、もっといえば、政治家が自分で自分をおとしめているということでもあるんだろうよ。

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コメント

夕方っていうか夜8時までうるさいです…
(p_q*)

投稿: ひろゆき王子 | 2015/04/12 00:46

ひろゆき王子 さん:

国政の選挙より、地方選挙の方が確実にうるさいですよね ^^;)

投稿: tak | 2015/04/12 02:45

改めて条文を復習(takさんはたびたび書いていらっしゃるでしょうが)。

そもそも「連呼行為はしちゃいけない」んですね(第一四〇条二)。だけど、選挙運動のために使用される自動車の上ならよいと(第一四〇条二の2)。で、選挙運動のために使用される自動車の上で選挙運動をしちゃいけない。でも、連呼行為だけはいいと(第一四一条三)。二つの方向から、「禁止の例外」になっているのか……。

投稿: 山辺響 | 2015/04/13 10:34

そういえば、地元の区議選の立候補予定者が(私の自治体では26日投票です)、最寄り駅の駅頭で「朝立ち」をしているのですが、「○○でございます、行ってらっしゃいませ」を繰り返すだけで政策は何も言わない。

こいつは何党のバカだ、と検索してプロフィールを見たら、)「劇作家・演出家・俳優として活動。劇団主宰者として××(注:選挙区)を中心に、能・狂言を踏まえた作品作りを行い、日本語や日本文化を受け継ぐことの大切さを実感」……。

え~?(笑) そして芝居をやっていたにしては、早々に声が嗄れている……。

投稿: 山辺響 | 2015/04/13 10:37

山辺響 さん:

そもそも公職選挙法というのは、原則的に選挙運動はしちゃいけないというスタンスで成立していて、その基本線の上で、「○○はしてもいい」 「○○以内ならしてもいい」 「○○枚以内なら作ってもいい」 というコンセプトのようなんです。

「基本的に自由は保証されてるんだけど、○○はすべからずで、しちゃったら罰則規定があるよ」 というのが、近代以降のフツーの法律のコンセプトだと思うのですが、公職選挙法だけは、「基本的に何もしちゃいけないんだけど、それじゃあまりにも不自由だろうから、お目こぼし事項を細々と定めてやるよ」 ということになっています。

だから、条文で「お目こぼし」 してもらっていること以外は、「ごくフツー」 のことでも 「しちゃいけない」 ってことになります。自転車での選挙運動はダメとか。

インターネットは、ごく最近「お目こぼし」になって、使っていいことになりましたが、まだまだ不自由な規定に縛られています。

投稿: tak | 2015/04/13 11:38

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