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2015/04/15

ホテルオークラの解体を、なんと私まで惜しんでしまう

ホテルオークラが解体されてしまうというのを、今日まで知らなかった。今年 8月に本館の営業を終了し、1000億円を投じ、300日かけて建て替えるのだそうだ。建て替え後は近代的な高層ビルになるのだという (参照)。

アンチエスタブリッシュメントで、もったいぶった権威には反発してしまうばかりの私なので、オークラみたいな超高級ホテルは、日常的な感覚からすればどうでもいい問題である。自分の泊まるのは、高くても 1泊 1万円以下のビジネスホテルばかりで、ゴージャスなホテルに泊まることなんて、まずないし。

しかし実を言うと、ホテルオークラは私としても案外お馴染みなのだ。いや、何万円も払って泊まっていたというわけじゃない。新聞記者をしていた頃はいろいろなイベントや会議がオークラで開かれていて、その取材でしょっちゅう足を運んでいたのである。だから、あのホテルの良さは、まんざら知らないわけじゃない。

日本の高級ホテル御三家は、オークラと帝国ホテル、ニューオータニと言われているが、私の感覚では、ニューオータニはそんなに大したことがない。オークラと帝国ホテルは別格の感があるが、どっちが上かと言えば、私はオークラだと思う。そりゃ、フランク・ロイド・ライト設計の帝国ホテルもよかっただろうが、オークラには独特の 「和の味わい」 というものがある。

ただ、若い世代にはオークラの良さはあまり理解できないかもしれない。出張で来日してオークラに宿泊する米国人も、50歳過ぎでないと、「単なる古めかしくて薄ぼんやりとした建物」 だと思ってしまうらしい。私が 「このホテルは日本のトップだよ」 と説明しても、「どうしてこれが?」 と、意外に思ってしまうようなのだ。

フツーに考えると、バブル以後にどんどん進出してきた外資系の新しいホテルと比較して、「オークラは時代遅れ」 と思われても仕方がない。しかし、「わかる人にはわかる」ホテルなのだ。J-CAST ニュースにも "ホテルオークラ取り壊しに世界が動いた ポール・スミス氏ら有名デザイナーが続々「待った」" という記事が載っている。

このニュースによると、米ワシントンポスト電子版が 今年 2月 2日付記事で、「日本の『取り壊し』文化における最新の犠牲者」がオークラだとし、米 CNN 日本語電子版 2014年7月15日付記事は、「何でも取り壊して大きく作り直すのが主流のアジアにあって、ホテルオークラはかつて素晴らしかったものへの敬意を思い起こさせる存在だった」 としている。

うぅん、言わんとすること、よくわかるなあ。オークラまでぴっかぴかの高層ビルになってしまったら、おもしろくもなんともない。というわけで、オークラに泊まるなんてことはあり得ない私まで、尻馬に乗ってその解体を惜しんでしまうのである。

あの薄ぼんやりとしてるけど、よく見れば日本の伝統的意匠がびっしりと埋め込まれているのがわかるロビーのソファでちょっと一休みすると、「日本は捨てたもんじゃない」 と心から思える。その感覚が味わえなくなるとしたら、そりゃ悲しい。

それにしても、欧米から見るとアジアってのは、「古い建物をどんどん壊して、ピカピカの味気ないビルにしてしまう無粋な国々」 と思われているようなのだね。まあ、そう思われても仕方ないというのが、ちょっと悲しいところだけれど。

オークラがなくなったら、あの感覚は日本のホテルから消えてしまい、老舗の旅館にでも行かないと味わえなくなる。しかしあれはホテルだからユニークだということもあるのだよね。似たようなことを旅館でやっても、そりゃ 「フツー」 になってしまう。

オークラに馴染みのない人は、夏になって解体が始まる前に、一度あの雰囲気を味わっておくべきだと思う。残された時間は短いから、今のうちだ。ロビーのソファに座るだけなら、お金はいらないから。

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コメント

1945年3月の東京大空襲にたまたま焼け残った谷根千が今観光地化してることから考えると、日本の場合、伝統建築を重んじない伝統(?)が主流になったのは負け戦をぐずぐず続けて日本中を丸焼けにした先の大戦が切掛だったのかなとも思っております。良い物が失われてなんというか糸が切れたというか

投稿: Cru | 2015/04/16 06:32

ホテルオークラは一度だけ「入った」ことがあります(笑) やはり仕事で、インタビュー通訳の立ち会いでした(私自身が通訳をできるわけではない)。インタビュイーは、かのピーター・ドラッカー(笑)

そういえば、私の職場に近い赤坂プリンスも昨年だか解体されて、いま、新しいビルが建設されています。バブルの頃に利用したわけでもなく、何の思い入れもなかった……はずなのですが、毎日、退勤時に視野に入っていたので、今、赤坂プリンスの写真を見ると何だかとても懐かしい気がします。

「何でも取り壊して大きく作り直すのが主流のアジア」、ねぇ……。国立競技場といい……。

投稿: 山辺響 | 2015/04/16 15:48

Cru さん:

やっつけ仕事の「戦後復興」に、未来の希望を感じすぎたんでしょうね。その前が絶望的な戦況だっただけに。

投稿: tak | 2015/04/17 19:45

山辺響 さん:

ドラッカーと同席したなんて、すごいじゃないですか。
末代まで語り継げそう。

赤プリは、結局 30年ちょぼちょぼの命でしたね。
なんとなくバブルっぽさの象徴だったような気もします。
国立競技場に至っては、わけわかりません ^^;)

投稿: tak | 2015/04/17 20:01

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