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2015/04/08

イラッとくる感覚の翻訳

私の文体はやや英文翻訳調に近いところがあると、自分でも意識している。英語関係の仕事をする時期が長かったため、そんな体になってしまったのかもしれない。

20代から某繊維専門誌を発行する会社に 10年ほど在籍して、そのほぼ半分の期間は海外向けの情報を英語で書いていた。その後の 4年近くは外資系団体の広報部に在籍し、来る日も来る日も英語のプレスリリースを日本語に翻訳するという仕事を続けていた。タテのものをヨコにしたり、ヨコのものをタテにしたりするのが仕事だったのである。

だから私の頭の中では、英文と和文の境界線というのがあまり明確ではなく、その感覚が今に続いている。強いて言えば両者の間には 「境界線」 ではなく 「非武装緩衝地帯」 みたいなエリアがあって、私は意識的、無意識的にそのエリアの中にはまってテキストを書いているような気がする。

というような私だが、(あるいは 「私なので」 という方がいいかもしれないが)、読んでイラッとくる文体というのがある。どんなのかというと、このほど Wired に載った 「レヴュー:これは運転したくない、メルセデス・ベンツの未来のクルマ」 みたいなテキスト (オリジナルの英文を和訳した記事) だ。

なんでイラッとするのかは、実際にリンク先に飛んで読んでいただければ、わかってもらえると思う。もしわからなかったとしたら、まあ、それはそれでいい。結局は趣味の問題だからね。

なんというか、スタイリッシュな英語のテキストを過剰なお洒落感覚で訳すと、こんなような日本語になってしまうのかもしれない。たとえて言えば、典型的なアメリカの青春ドラマを、なかばパロディじゃないかと思えるほどのステロタイプな吹き替えにした感覚に通じると言ったら、わかる人にはわかってもらえるかな。

この翻訳記事の最初の部分は、こんなような 「お洒落な」 文章である。

ある晴れた日。わたしはサンフランシスコのオフィスからクルマを走らせていた。ベイブリッジを渡り州間高速道路880号線を走って、閉鎖されたアラメダ海軍航空基地の駐車場に入る。

わたしの運転は、慎重さとは程遠いものだった。制限速度を越えるスピードで他のクルマの間を縫うようにして進み、車間距離など空けずに追い越しを繰り返した。

参考までにこの部分の原文を示そう。こんなテキストである。ちなみに訳文は 2パラグラフにわたっているが、原文は改行なんてされていない。(参照

ONE SUNNY DAY last week, I drove from my office in San Francisco over the Bay Bridge, down Interstate 880 and into a parking lot at the defunct Alameda Naval Air Station. I was late, so I wasn't exactly driving cautiously.  I weaved through traffic going 15 mph over the speed limit, alternating between tailgating and passing cars on the right.

単純比較でもおわかりのように、ちょっと 「超訳」 気味なところがあり、センテンスもパラグラフもブツ切りにして、過度にハードボイルド調に仕立ててある。原文もかなり 「クサい」 ところがあるが、訳文ではそのクサみが増幅されてしまっている。

そうえいえば私は、8年前に 「翻訳の難しいアメリカ小説」 とう記事で、サリンジャーの 『ライ麦畑』 はどう日本語に訳しても、原文の雰囲気を裏切ってしまうというようなことを書いている。この小説、私は清水訳も村上訳も、読み始めて 3ページも進まないうちにイラッときて、放り出してしまった。しかしペーパーバックの原文は、おもしろくてあっという間に詠み終えたのである。

もしかしたら、こんなようなタイプの英文というのは、日本語にしづらいというか、どう訳してもイラっとくる日本文になってしまうってことがあるのかもしれない。というわけで、いくら自分の文体が英文翻訳調に近いところがあるといっても、妙な落とし穴には落っこちないよう、気をつけなければと思った次第なのだ。

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コメント

ああ…
このベンツの文章は僕もダメっす…( ̄Д ̄;;

投稿: ひろゆき王子 | 2015/04/09 21:35

ひろゆき王子 さん:

やっぱり、イラっときちゃいますか (^o^)

投稿: tak | 2015/04/10 00:54

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