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2015/06/30

ならば私は「¥記号をつけた数字で表示:¥1,200」 の店を選ぶ

脳科学マーケティング100の心理技術』 という本が話題になっている。脳科学的アプローチによって、売り上げを増大するマーケティングの紹介である。ネットの世界では、次のようなクイズが散見されて、この本を売るための巧妙な宣伝になっている。

レストランのメニューからクイズです! 次の3つの料金表示うち、一番多く注文が取れたのはどれでしょう?

① ¥記号をつけた数字で表示:¥1,200

② ¥記号をつけない数字表示:1200

③ 文字で説明:千二百円

このクイズの正解は ② なんだそうだ。他の 2つは 「お金を出す」 ことを強くイメージづけるため、脳に 「痛み」 を感じさせ、人を実際の購買行動から遠ざけてしまうというのである。

ちなみにこの本によれば、「回転寿しやタクシーの料金など、1回1回の消費で料金が上がっていくのをお客さんが目にする販売方法は最悪です!」 ということになるらしい。なるほど、寿司を一皿食うごとに、タクシーで約 300メートル行くごとに支払金額が上がっていくシステムは、脳にある種のストレスを与える。

しかし、この 「ある種のストレス」 のおかげで、客は別の安心感を得る。自分の支払う金額がきちんと把握されるので、「一体いくら取られるんだ?」 という不安感から逃れられる。つまり小さなストレスのおかげで、より大きな安心感を得られる。

この 「安心感」 というのは、要するに 「余計な金を支払わなくて済む」 ということだ。具体的には、消費者が設定した 「ここまで!」 というリミットに達する前に 「自らストップをかけることができる」 という意味である。

つまり裏側からみると、『脳科学マーケティング100の心理技術』 という本は、「消費者が自らストップをかけることができなくなる巧妙なマーケティング・メソッドを指南する本」 ということになる。つまり、客に余計な金まで使わせるための本だ。

ということは、これは品物やサービスを提供する側のために書かれた本で、消費者のために書かれた本ではないということに気付かなければならない。つまり、この本に書かれたメソッドを実行している店は、「賢い」 かもしれないが、それは甚だ 「中途半端な賢さ」 であり、決して 「顧客志向」 ではないということだ。

だから消費者の立場に立てば、メニューの価格表示に、「¥」 マークの付いている店の方がありがたい。そうした店を選べば、余計なものまで注文した挙げ句、レジで 「しまった、飲み食いしすぎた!」 と後悔しなくて済むかもしれないということだ。

逆に 「¥」 マークのないメニューを出す店は、手前の利益ばかり考えて、客に余計な金を出させようとするあこぎな店かもしれないから、警戒しなければならないというわけだね。

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コメント

こんばんは。

今回の記事はちょっと消費者目線に寄り過ぎではないでしょうか。

この本のコンセプトは、要らないものを売りつけようというのではなく、サービスを購入してくれるお客が買いづらくなってしまうハードルを取り除こうというものなのだと思います。

消費者目線で見ると、何であれお金を払わされるのは悪のようになってしまいますが、そういうことではないと思います。

買いやすい=あこぎな商売、買いづらい=良心的な商売 となってしまうなら、お店に入ってから10分も20分も注文を取りに来てくれない店が良い飲食店になってしまいます。

投稿: kazuhiro | 2015/07/01 03:00

kazuhiro さん:

確かに、ちょっと極端な目線ということは十分意識しています。

ただ、私の個人的スタンダードかもしれませんが、数字には単位を表示するのが常識というもので、値段を表示する場合には、それが 「金額」 であることをきちんと明示するのが当然と思うのです。

メニューに書いてあるのだから、金額であることは言うまでもないことかもしれませんが、私は明示するのが当然という立場です。

あえて 「¥」 や 「$」 を省くというのは、その時点で妙な意図を感じるわけです。

ハードルを取り除くというよりは、落とし穴を作っていると、私は感じます。少なくとも私は 「¥」 なし表示の店は、「常識のない店」 と感じて敬遠したくなります。

さらに、「回転寿しやタクシーの料金など、1回1回の消費で料金が上がっていくのをお客さんが目にする販売方法は最悪です!」 というこの本の立脚点には、少々危険なものを感じるのです。

そのため、敢えて極端とも思われる論の立て方をしました。ある種の 「カウンター・アタック」 です (^o^)

>買いやすい=あこぎな商売、買いづらい=良心的な商売 となってしまうなら、お店に入ってから10分も20分も注文を取りに来てくれない店が良い飲食店になってしまいます。

それはまた別の問題ですね。
(ここでは 「明朗会計」 について論じていて、サービスとして 「買いづらいのがいい」 とは、一言も言ってません)

ちなみに、店員が全然注文を取りに来てくれず (水もセルフサービス)、客の方から呼びかけて注文しないといつまでも待たされる店を数軒知っていますが、どれもとても繁盛しています。

これまた極端な例でしょうが、余計なサービスなしに 「放っといてもらえる」心地よさというのもあるのですね ^^;)

例えば、Amazon の 「この商品を買った人は他にこんなものも……」 みたいなのも、私は 「余計なお世話」 と思ってしまうクチですので。

投稿: tak | 2015/07/01 08:29

① ¥記号をつけた数字で表示:¥1,200
気持ちいいですね。キッパリ宣言している感じが良い。


② ¥記号をつけない数字表示:1200
気持ちわるいですね。もやもやする。
“,”がないのもさらに気持ちわるい。

③ 文字で説明:千二百円
蕎麦屋で ”天麩羅蕎麦1200" なんて書かれたら、不安に感じてしまう。“千二百円” だったら美味しいのが出てきそう。

正解が②だとはちょっと信じられない。
一消費者としては①か③ですね。

投稿: ハマッコー | 2015/07/02 00:34

ハマッコー さん:

>蕎麦屋で ”天麩羅蕎麦1200" なんて書かれたら、不安に感じてしまう。

まさにその通りですね。

そんな店は、センスが悪いか、頭が悪いか、その両方かと思ってしまいます。

投稿: tak | 2015/07/02 06:48

ハマッコーさんに禿同(死語?)!
「天麩羅蕎麦1200」は、爆盛ばやりの昨今、1200gあるのか? とか、サプリメント入りの天麩羅蕎麦のコードネームか、とか疑問が湧いてしまいますよネ!(不安神経症かな?)

投稿: のうさぎまりこ | 2015/07/02 13:16

のうさぎまりこ さん:

「禿同」、知らんかった ^^;)

最初、真正直に辞書引いても見当たらなかった時点で、「もしかして 『はげしく同意?」 と、ピンと来ました。
(まだ、アンテナは錆びてなかった ^o^)

カロリー数値を添えている店は結構ありますけど、それも "cal" と表示しますからね。

単なる数字は、不気味です。

投稿: tak | 2015/07/02 21:08

金額の頭に¥マークを付けるのは当たり前だと思っています。桁の勘違いや脱字などがない、との確認の意味もあって、銀行の入出金伝票を書くときも必ず頭に¥マークを入れるように指示されています。皆さん御指摘のように、数字だけ表示されても、金額以外の可能性もあるというもやもや感はぬぐえません。

投稿: KRT | 2015/07/03 10:20

KRT さん:

「そうですよね〜」 としか言いようがないですね ^^;)

投稿: tak | 2015/07/04 05:18

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