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2015/07/11

着物とフェティシズム

Huffington Post の 「ボストン美術館の「キモノ試着イベント」が中止に 理由は人種差別、白人至上主義?」 という記事が、とても興味深い。ボストン美術館で開催されていた 「キモノ:ウェンズデイ」 というイベントが、人種差別的であるとの抗議を受け、中止に追い込まれたのだそうだ。

議論の種となったのは、クロード・モネがもろに日本趣味で描いた 「ラ・ジャポネーズ」 という作品 (左写真)。ジャポニズムの代表作として有名だから、一度は見たことがあるだろう。

ボストン美術館は水曜日のイベントとして、この作品の前で着物に触れてみたり、試着して作品の前で絵のモデルと同じポーズで記念撮影をしたりできるという企画を実施していたのだが、ソーシャル・メディア上の 「文化的に無神経で人種差別」 という批判に晒されて中止となった。

批判の中には 「用意された衣装は正確に言うと着物 (kimono) ではなく打掛 (uchikake) だ」という抗議まで起きているというのだが、これなんかは批判する側もかなり混乱しているとしか言いようがない。打ち掛けだって着物には変わりないのだからね。

批判の急先鋒である "Stand Against Yellow Face" というページによると、この企画が問題とされたのは、上記のリンク先では触れられていないが、水曜日のもう一つの特別イベントとして実施されていた "Flirting with the Exotic" というトークショーとの合わせ技のようなのだ。「文化に対する配慮がない」 というのである。

"Flirting with the Exotic" というタイトルは、直訳すれば 「異国趣味とじゃれつく」 というような意味で、確かにちょっとちゃらんぽらんな印象を受ける。さらにそもそものことを言えば、このクロード・モネの作品が時として「ジャポニスムをバカバカしい、フェティズム的な流行として風刺したもの」解釈されていることもある。

そうした事情からボストン美術館の企画は、どうやらジャポニズムから逸れて、「フェティシズム」 についての議論に向かってしまったようなのである。それで 「白人至上主義で軽薄なイベント」 と受け取られてしまったらしい。要するに純粋に芸術的見地からの論議を離れて、とても通俗的なイベントにされてしまったというわけだ。

それで、日本語の記事の方には、日本人らしい男女が絵の前で抗議のサインを持っている写真がある。手に持った紙には 「着物を着てキュートでエキゾチックに見えたとしても、人種差別主義者というわけではない。MFA がこれをサポートする以外は」 「MFA では全ての文化的体験ができる。今日、着物を着て人種座別主義者、帝国主義者になるとはどういうことか、学んでください」 というような文句が書かれている。("MFA" は "Museum of Fine Arts, Boston" = ボストン美術館の略称)

しかしこれ、かなりセンシティブ過ぎる批判のような気もしないではない。フツーの日本人だったら、「ちょっと考えすぎじゃね?」 と言うだろう。「人種差別的なフェティシズム」 というが、これ、同じ企画を日本の美術館が実施したら、絵のモデルとされるクロード・モネの妻、カミーユ・モネが日本の着物を着ているのを真似たがる日本人の女の子たちで、大入り満員になりそうな気がするのだよね。

ただそれをちょっと深読みすると、日本の女の子が、日本の着物を着てポーズを取る西洋人を真似る 「なりきりイベント」 ということになり、それはそれで 「かなり入り組んだ白人至上主義」 を日本側から発信しているということにもなりかねない。いやはや、かなり複雑な事情がある。

いずれにしても着物というのは、既に日本人にとってもエキゾティックなフェティシズムの対象になってしまっていると思う。これは 「人種差別的」 というよりも、「文化的ギャップ」 ということのお話なのではないかと思われなくもない。

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コメント

このハフィントンポストの記事なんかすごい分かりにくいです。原文も読みましたが、なんで日本語にするとここまで分かりにくくなるんでしょうか?Imprerialismという言葉を抗議者の一人が使っているせいか、コメント欄で「これは実は日本たたきだ」という意見まで出てしまってます。

コメントはと言えば、ほとんどの日本人の意見はtakさんのと似てますね。私としてはまあ抗議者の言い分も分かるけど、そこまで目くじらたてるよりもっと他にアジア人として人権問題でもっとエネルギーを注いだ方がいい事があるんじゃないか、といったところです。

投稿: めぐみ | 2015/07/15 04:05

失礼しました。Imperialismです。スペルチェックがない~というのはもちろん言い訳です。

投稿: めぐみ | 2015/07/15 04:07

めぐみ さん:

ええと、実はここのところいろいろな仕事に追われて時間がなくて、元記事を検索するのを怠っていました。

で、昨日辺りで一段落付いて、今朝改めて元記事を探して読んでみたら、確かに日本語より読みやすい、というか、わかりやすい (^o^)

ついでに、 "Stand Against Yellow Face" の方もざっとした斜め読みと白状しときます ^^;)

記事に対するコメントは、かなり増えてますね。私が読んだ時はこれほどじゃありませんでした。

中には、写真の東洋人は韓国、中国人にしか見えず、これは形を変えた日本叩きだというコメントもありますが、それもまたちょっと、「考えすぎじゃね?」 という気がします ^^;)

投稿: tak | 2015/07/15 08:20

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