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2015/09/30

「出身地鑑定 方言チャート 100」 で、新潟県下越出身と判定されてしまった

出身地鑑定 方言チャート 100」 というサイトがおもしろい。東京女子大現代教養学部で方言学を専門とする篠崎晃一教授と、篠崎ゼミに所属する学生たちが開発し、今年 7月に公開した途端に 約 2か月で 300万人がアクセスしたという。

このシステムは日本を 100のエリアに分類しており、数問の設問に 「はい/いいえ」 の二択で答えると、出身地を推定してくれる。2年前に開発した旧バージョンは 47都道府県別の分類だったので、必ずしも正確な推定はできなかった。確かに私の生まれた山形県を例にとっても、私のペンネームの元になった庄内と内陸では、かなり違ってしまう。やはり少なくとも 100ぐらいにわける必要があるだろう。

で、さっそく試しにやってみたところ、「新潟県下越」 (新潟県北部) と判定されてしまった。山形県庄内からみればほんの南隣だが、正解というわけにはいかない。こんなこともあるのだろう。

いったいどこで間違えたのかと辿り直してみたら、以下のような筋道で 「新潟県下越」 ということにされたようだ。

  1. 翌日、家に不在の時、「明日、家におらん」と言うことがありますか?
    → いいえ
  2. 授業で先生にあてられるとき、「先生にかけられる」と言うことがありますか?
    → はい
  3. 「宿題を終わらせる」ことを「宿題をおわす」と言うことがありますか?
    → いいえ
    (ここで、「新潟県出身者」 と明確にカテゴライズされてしまったようで、次の設問 4 からは 「新潟県突入!」 と表示される。つまり、これが決定的な分岐点だった)
  4. ぶつけたとき、内出血で肌が青黒くなった部分を「ぶすいろ」と言うことがありますか?
    → いいえ
  5. 「あなた」ということを「おまん」と言うことがありますか?または、地元の人が言っているのを聞いたことがありますか?
    → いいえ
  6. 「おやまあ」ということを「おっこっこ」もしくは「おっこー」または「おここ」と言うことがありますか?または、地元の人が言っているのを聞いたことがありますか?
    → はい

以上の 6問に回答したところで、「あなたの出身は新潟県の下越エリアですね !?」 という表示が出た。最後の 3問で、新潟県の中でも 「下越エリア」 と特定されたのだろう。しかし最も重要な分岐点は、3番目の 「宿題を終わらせる」 ことを 「おわす」 というかどうかだったようで、「おわすなんて言わない」 と答えた時点で、即座に山形県出身ではないと判断されたようだ。

試しに、ここで 「はい」 と回答してみたところ、案の定 「山形県突入!」 と表示された。以下、別ルートの再現である。

  1. (同上)
  2. (同上)
  3. 「宿題を終わらせる」ことを「宿題をおわす」と言うことがありますか?
    → (心ならずも 「はい」 と答えて、山形県に突入する)
  4. 「~(名詞)ですか?」のことを「~(名詞)なな?」と言うことがありますか?または、地元の人が言っているのを聞いたことがありますか?
    → いいえ
  5. 「かわいそう」のことを「めじょけね」と言うことがありますか?または、地元の人が言っているのを聞いたことがありますか?
    → はい

ここで「あなたの出身は山形県の庄内エリアですね !?」 と表示された。ピンポン! 終わらせてみれば (私は 「おわしてみれば」 なんて言わないよ) なぜか新潟県下越と判定されるよりも 1問節約された。

3番目の 「宿題をおわす」 に関して、山形県の内陸出身者は確かに 「おわす」 という言い方をするような印象があるが、しつこいようだが、少なくとも北庄内 (酒田エリア) 出身の私はそんな言い方は気持ち悪くてできないし、周囲の人たちも言わなかった。あるいは南庄内 (鶴岡エリア) では 「おわす」 と言うのかもしれないが、定かではない。

このあたりを曖昧に処理したことが、このシステムのバグと思われる。多分庄内出身者は調査サンプルがとても少なかったのだろうと同情してしまうが、とにかくフィックスしていただければ幸いだ。

ちなみに 「宿題を終わらせる」 は、私は 「しゅぐで、してしまう」 と言う。「終わらせる」 に相当する語彙は、ネイティブにはない。そして 「めじょけね」 (かわいそう) は、庄内ではとても一般的な表現で、極めると 「めじょーけねごど!」 (かわいそうだこと!) という強調表現になる。

【お願い】

南庄内 (鶴岡エリア) 出身の方がいらしたら、「宿題を終わらせる」 を 「宿題をおわす」 と言うかどうか、ご教示いただければ幸いです。コメント欄にお願いします。

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言葉」カテゴリの記事

コメント

(お願いに応えられずすみません。)

言語形成期と現在住は岐阜県の東濃地方ですが、愛知県三河地方との結果が出ました。

括りが美濃飛騨の境界しかなく、中濃西濃から隔離されている東濃地方は言葉が違います。
京都の古い言葉がかすかに残る中濃西濃地方と、尾張三河と親しい東濃地方ですから、上記の結果に到達したものと思われます。
(尾張のある戦国大名が岐阜に居を構えたあたりから、言葉のクロスナンチャラが始まったんでしょうか…。)

投稿: 乙痴庵 | 2015/09/30 14:10

鶴岡からこんにちは。いつも楽しく拝読しています。

鶴岡では「終わす」と言います。当方40代半ばですが、「しゅぐではやぐおわしてままけ~」とか言われていました。
もちろん、「方言チャート」でも「庄内エリア」でピンポンでした。

いまどきはどうなんでしょう…
鶴岡も大人も子供も共通語に呑みこまれつつあって、お寂しいかぎりです。

投稿: yukiho | 2015/09/30 14:50

47都道府県版では正解の京都府だったのに、チャート100では奈良県吉野地域になりました。

後醍醐天皇になった気分で複雑であります。

投稿: ちくりん | 2015/09/30 15:34

乙痴庵 さん:

尾張、三河、美濃の言葉は、よそ者にはとっては 「少し違いがあるな」 とは感じられても、明確に区別することは難しいです。

ましてや、美濃がさらに 「東濃/中濃/西濃」 に分かれるというのでは、さらにわかりません。

ところが、地元にしてみれば 「小さな違いが大きな違い」なのですよね。

>尾張のある戦国大名が岐阜に居を構えたあたりから、言葉のクロスナンチャラが始まったんでしょうか…。

それがあるからでしょうかね。私なんかはとくに、岐阜と名古屋がごっちゃになってしまうんですよ。(信長のせいだったのか)

投稿: tak | 2015/09/30 16:32

yukiho さん:

おお、やっぱり鶴岡では 「終わす」 というんですね。
さっそくの反応、本当にありがとうとざいます。

同じ庄内でも、最上川を境に 「羽前/羽後」 に分かれるぐらいですから、結構な違いがあるという気はしていました。

代表的なのは 「やばち」 ですね。
酒田では単に濡れて冷たければ 「やばち」ですが、鶴岡では汚れた感じがないと「やばち」とは言わないみたいですね。
「庄内力チェック」の 6番を作成していてそれを知り、驚いた覚えがあります。

http://homepage3.nifty.com/tak-shonai/shonairyogu/check.htm

>「しゅぐではやぐおわしてままけ~」

庄内弁に馴染みのない方のために、翻訳しておきます。

「宿題早く終わらせて、ご飯食え」

投稿: tak | 2015/09/30 16:41

ちくりん さん:

答えていく過程で、「早合点」 が生じるケースがままあるみたいですね。
(私の場合の「おわす」 がそれです)

47都道府県から 100のエリアに細分化した時点で、「分類の魔物」 が姿を現したのでしょうね。

投稿: tak | 2015/09/30 17:00

庄内弁の翻訳、ありがとうございます。^^

私は岐阜生まれ、その後幼少期に東京を経て八歳の時広島に移りました。広島が長かったとは自覚していましたが、現在群馬在住の熊本出身の両親(もうしっちゃかめっしゃかですね)と話す時はもっぱら標準語だと思っていたので、「広島、安芸」とピンポイントされてかなり驚きました。

過去、三十年ほとんど英語しかしゃべってないのに言語形成期恐るべし。

因みに、英語版の同じものをやってみたことがありますが、やっぱりばっちりでした。こんなにメディアの普及で「標準語」が蔓延していても、地域特有の言い回しは根強く残っているのでしょう。

投稿: めぐみ | 2015/10/04 07:25

すみません、「しっちゃかめっちゃか」と書くつもりでした。

で、後で思ったんですが、大人になってから(20歳以降)ほとんど英語しかしゃべっていないということは、子供の時に形成された日本語のパターンがかえって純粋に保存されてたのかも知れませんね。

投稿: めぐみ | 2015/10/04 07:37

めぐみ さん:

すごい複雑さ (^o^) 整理しますと、

1.自分は岐阜で生まれ、幼少期に東京を経て、8歳で広島に移り、以後は長く広島で育つ。
2.両親は熊本出身で、現在は群馬在住 (岐阜にも東京にも広島にもカブらないのが、すごい! ^^;)
3.その両親とは、もっぱら標準語で話す。

なのに、「広島県安芸エリア出身」と判定される。言語形成期の影響力はすごい!

めぐみさんは、結構外向的で、家に引きこもらずに生活をされていたのだと想像しました。それで広島弁が身についたのかと。

>大人になってから(20歳以降)ほとんど英語しかしゃべっていないということは、子供の時に形成された日本語のパターンがかえって純粋に保存されてたのかも知れませんね。

それは言えます。

私は半世紀以上前の庄内弁をしっかりと保存していて、帰郷してネイティブ庄内弁スピーカーに戻ると、近所の人たちに「今どき、そんな古い言葉は誰も使わない」なんて言われます。

「炉辺の語り部」ができそうです (^o^)

投稿: tak | 2015/10/04 17:20

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