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2015/09/12

今回の大水害の教訓

鬼怒川の堤防決壊を伝えるニュース画面で、家や土手に取り残されたまま救助を呼ぶ人たちの姿を見て、正直なところ初めは 「自治体の避難指示に従って素直に逃げていれば、こんなことにならなかったのに」 と思っていた。この人たちが逃げ遅れたために、自衛隊や関係者が大変な苦労をしているのだと。

しかしすぐに 「おかしい」 と気付いた。いくらなんでも、逃げ遅れている人の数が多すぎる。隣町である我が自治体の鬼怒川に近い地区では、早くから避難勧告や指示が出て、住民の多くがそれに従っていたのに、当の決壊現場にあれだけの人が残っていたのは、どう考えてもおかしすぎる。

その疑問は、昨日夜に報じられた NHK ニュースで解けた。決壊現場の三坂町地区に避難指示が出たのは、決壊のわずか 2時間半前の午前 10時半だったというのである。

着の身着のまま逃げ出すのには 2時間半あれば十分と言う人もいるだろう。しかし現場は混乱している。逃げるといっても急には動けない人もいるし、常日頃から避難用の荷物をまとめている人も案外少ない。急に老人や子どもの必需品を取りそろえるのも、案外時間がかかるものである。

さらに、何とか家にとどまりたいと考えて最後まで腰を上げない人もいる。この期に及んで隣近所の様子をうかがいながら、「お宅はどうする?」 なんて呑気なことを言っているうちに、時間はあっという間に経ってしまう。

というわけで、決壊現場から離れた我が自治体では前夜のうちから警戒態勢に入っていたのに、堤防のすぐ近くで、翌朝になっても避難指示が出ていなかったというのは、信じられない不手際である。しかも初めのうちは、鬼怒川の橋を渡って、対岸の西側の避難所に行けという指示だったらしい。

これもまた呑気すぎる。鬼怒川の東岸はほとんど浸水することが予想されていたとはいえ、そんなことを言ったら橋が渋滞して、逃げるに逃げられなくなるのはわかりきっているではないか。橋を渡っている間に崩落事故でも生じたら、どうしてくれるというのだ。さらに言えば、そもそも東岸がほとんど浸水することがわかっていたというなら、どうしてもっと早く避難指示を出さなかったのだ。

この措置がどうしようもないことがわかって初めて、さらに東側の小貝川を渡ったつくば市に避難できるように、受け入れを要請したというのである。どうみても後手後手すぎる。

昨日の記事でも書いたように、早朝の時点で既に上流の若宮戸地区で川の水があふれ出していた。そしてその下流の決壊現場では堤防に亀裂が入り、「いつ決壊してもおかしくない」 と思われる状態になっていたのである。これはもう、常総市の災害対策やいざという時の避難計画が不備で、まともに機能しなかったというしかない。

少なくとも、早いうちから 「避難勧告」 を出しておくべきだった。そして結果論と言われるかもしれないが、早朝の時点でかなり危険が迫っていることがわかっていたのだから、この時点で 「避難指示」 を出すのは決して困難なことではなかったはずだ。リスク・マネジメントのしっかりした自治体なら当然しているはずのことを、常総市はできなかった。

早いうちに 「避難勧告」 を出すことについて、効果を疑う人もいる。もちろん、「避難指示」 でも従わない人がいるぐらいだから、「避難勧告」 程度では多くの住民は従わない。それは 30年前の私自身の経験からわかっている。

しかし、老人や小さな子どものいる家族は、避難勧告の時点で大事をとって避難を開始する傾向がある。そしてそれだけでも効果はあるのだ。よくよく危険の迫った 「避難指示」 の段階で老人や子どもは既に逃げているということは、より多くの人の避難が効率的に進む。

本当に、老人や子どもや妊婦は、「避難勧告」 の時点でちゃんと逃げておくことをオススメする。

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コメント

私は長年借家のマンション住まいですが、
昨年の広島といい、今回の豪雨からの堤防決壊を
見ていて、本当、水害(もちろん地震も)の多いこの国で、
地べたに一軒家を持つことのリスクというものを
考えてしまいます。持つ夢がないわけではないですが、
鉄筋コンクリートのマンションの7、8階が安心かな、
という気がします。

ところで、昨日のソーラーパネルの件ですが、
御存知かもしれませんが、日刊スポーツで報じられました。
http://www.nikkansports.com/general/news/1536943.html
なにが正しいのか判断する材料は全くないですが、
ああいう酷い災害の裏にこういう話があるのって
なんといいますか、胸の奥がもやもやしてしまいます。

投稿: hokkaidense | 2015/09/12 14:50

hokkaidense さん:

私なんかは、まさに 「洪水地域」の地べた、しかも洪水の原因となる川の間際に、一軒家をもってしまったので、そのリスクは十分に身に染みてます。

最近になって治水が進んで、本当にほっとしている身です。

ご紹介の日刊スポーツの記事は、初めて知りました。メガソーラーは無理矢理に作ってしまったもののようで、業者が自治体とつるんでいたと疑うに十分ですね。ひどいものです。

魚拓をとって、昨日の記事からみられるようにします。

投稿: tak | 2015/09/12 15:13

hokkaidense さんコメントのリンク先を拝読した感想。
「とんでもない。」
山や森林を削ってまでのソーラー建設は、自然破壊そのものです。

近所の核融合研究施設が来るとき、大人たちがなんだかギクシャクしてしまっている雰囲気が、なんとなく子どもにも伝わってきました。

背景はこんなんだったのかしら?

投稿: 乙痴庵 | 2015/09/13 17:22

乙痴庵 さん:

>山や森林を削ってまでのソーラー建設は、自然破壊そのものです。

まさにその通り。本末転倒ですね。

>近所の核融合研究施設が来るとき、大人たちがなんだかギクシャクしてしまっている雰囲気が、なんとなく子どもにも伝わってきました。

>背景はこんなんだったのかしら?

裏で行政とか土地の実力者とかとつるんでしまうと、やっかいですね。

投稿: tak | 2015/09/14 01:47

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