« ようやく梅雨が明けたのだが | トップページ | 「生前退位、憲法に抵触」 とは、「お前が言うな!」 と政府に言いたい »

2016/07/29

子どもに物事を説明するのは、実は難しい

NHK ラジオ第一放送で 「子ども科学電話相談」 というのをやっている。夏休み特別企画として、毎年やっているようだ。

子どもの電話相談といえば、TBS の 「全国こども電話相談室」 というのが元祖的存在で、独特の語り口の無着成恭先生や永六輔さんらが、素晴らしい名解答を連発してくれていた。ところが今はリニューアルして、「全国こども電話相談室・リアル」 という番組になり、悩める子どもの人生相談番組となっている。

考えてみればそれも当然で、今どきはちょっと気の利いた子どもだったら、単純な疑問ならインターネットで調べる方がずっと手っ取り早いと知っている。TBS が 「元祖・こども電話」 をインターネットでは解決の難しい悩みごとの相談に特化させたのは当たりだったと思う。

とはいえ、今となっては伝統的スタイルともいえそうな、「ちょっとした疑問」 の答えを、電話でその道の専門家に聞いてみるというのも、悪いものじゃない。大人が聞いていても、とても素朴な疑問の解答が思っていたよりずっと深いものだったりして、「へえ、そうだったのか!」 と驚くことがある。なかなか馬鹿にできない。

今日の朝に聞いていたところ、「どうして宇宙船の中では人間が浮くんですか?」 という質問があった。もろ文系の私なんか、「無重力状態だからね」 と軽く済ませてしまうところだが、実はそんな単純なものではなかったのである。

番組回答者、国司眞先生の模範解答によると、宇宙空間では地球の引力がとても小さくなるが、ゼロになったわけじゃなく、まだ少しだけ地球に引っ張られている。しかしそれに対して地球を廻る宇宙船には遠心力という地球と逆方向に引っ張る力も働いていて、この地球の引力と遠心力が釣り合っているので、宇宙船の中では人間が浮いていられるというのだった。なるほど、そうだったのか。

ところが残念なことに、国士先生のこの説明は相談した子ども (5歳ぐらいだったかなあ) にはちょっと難しかったらしく、進行係のおねえさんが 「わかった?」 と聞くと、悲しげに 「わかんない」 と言うのである。で、国士先生は縁日のヨーヨー釣りの例まで持ち出して、なんとかわかったような、わからないようなという線までもっていって、けりをつけていた。

そこへ行くと、昆虫関係の回答者、丸山宗利先生の、「昆虫はどうして足が 6本なんですか?」 という質問への解答は見事だった。この質問に対しては、素人の私でも 「それは論理が逆で、昆虫はなぜ足が 6本か? なのではなく、足が 6本の虫を昆虫と分類してるんだよ」 という答えを用意できる。

丸山先生はさすが昆虫学者で、解答がそれより行き届いていて、「体が 3つに分かれていて、足が 6本の動物を昆虫って言ってるんだよ」 と答えられた。模範解答である。しかしそれだけでは済まない。さらに 「もうちょっと深く言っていい?」 と聞くのである。その 「もうちょっと深い話」 というのは、こういうことだった。

昆虫の体は、頭、胸、お腹の 3つの部分に分かれていて、頭は司令塔、胸は運動の役目、お腹は消化、卵を産むなどの役目をもつ。そして胸部分は、「前胸、中胸、後ろ胸」 の 3つのパーツでできていて、それぞれから左右に 2本ずつ足が生えているんだそうだ。これは私も知らなかった。そして、足が 6本というのは、運動するのにとても安定して都合がいいので、この方向で進化したというのである。

この解答には質問した子もとても納得していた。

「頭の良さ」 ということのかなりの部分は、「自分で理解していることを、いかにわかりやすく説明できるか」 ということだと思っている。つまり 「言語能力」 が重要なのだ。「わかったつもり」 になっていることでも、 「平易な言葉での言い換え」 ができなかったら、それは本当に理解しているとは言いにくい。

物事を堅苦しい術語でしか語ることができないとしたら、それは実は理解しているのではなく、「そのプロセスに慣れてしまっているだけ」 なのだ。小さな子どもに物事を説明する羽目に陥ってしまった時こそ、本当に深く理解しているかどうかが試されてしまう。

そしてやさしい言葉で言い換えるという困難な技を駆使しつつ、何とか順序立てて説明することで、自分自身の理解も深まったりする。本当に役立つ知見とは、そういうものだ。

|

« ようやく梅雨が明けたのだが | トップページ | 「生前退位、憲法に抵触」 とは、「お前が言うな!」 と政府に言いたい »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

>宇宙空間では地球の引力がとても小さくなるが、ゼロになったわけじゃなく、まだ少しだけ地球に引っ張られている

国司眞先生と言う方の説明の方向は間違ってませんが、理解が足りない部分があるようです。
少なくとも400km上空を周回するISSに働く地球からの引力は、地表面に比して10%程度減少するだけです。とても小さくなるわけではありません。

尤も、こんなこと言う私でも5歳の子供には説明できません。精々金魚鉢の中の金魚で説明するだけです。多分理解してもらえないでしょうが。

子供に答えるには難しすぎる疑問でした。


投稿: ハマッコー | 2016/07/31 22:32

ハマッコー さん:

へえ、そういうことなんですか。

そう言われてみれば、地球を周回する宇宙ステーションの遠心力ってすごいはずですものね。それと釣り合うってことはそんなに小さくなってるわけじゃないのか。

投稿: tak | 2016/08/01 21:26

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/42004/63983907

この記事へのトラックバック一覧です: 子どもに物事を説明するのは、実は難しい:

« ようやく梅雨が明けたのだが | トップページ | 「生前退位、憲法に抵触」 とは、「お前が言うな!」 と政府に言いたい »